母に絶対見られたくなかった段ボール。一人暮らしの新居で、俺はその箱を開けられずにいる
素直になれなかった2年間
中学までは、母とそれなりに話せていた気がします。高2のある日を境に、急に母の近さが耐えられなくなりました。「おかえり」に「ただいま」と返すのが、どういうわけか恥ずかしい。夕食の席で母の顔を見ながらご飯を食べるのが気まずい。
自分でもよくわかりません。ただ、素っ気なくすることでしか距離の取り方が見つからなかった。朝のお弁当を残して出ていく自分を、情けないと思った日もあります。でもその頃にはもう、素直な声の出し方を忘れていました。
捨てられなかった缶
引っ越し準備でクローゼットの奥から、小学生の頃のお菓子の缶が出てきました。ふたを開けると、母からの誕生日カードが10枚ほど、運動会のお弁当に入っていた応援メモ、幼稚園の連絡帳まで収まっていたのです。
いつから貯めていたのか、自分でも思い出せません。ただ、どれも捨てられず、中学の頃に缶にまとめて隠したのは覚えています。新居に持っていこうと決めました。段ボールの一番下に入れて、他の物で上から隠す。誰にも見せない箱として。こんなものを大事にしている自分が、とにかく恥ずかしかったのです。
叫ぶように出た声
当日、母が手伝いたそうにしていました。朝、「お母さんの手伝いなんていらない」と強く言ってしまったのは、あの箱のことが頭にあったからです。
結局、母は新居の鍵の受け渡しで同行することになりました。作業が終わる頃、母があの段ボールに手を伸ばしたのです。「それは開けないで」。自分でも驚くような声が出ました。拍子にふたがずれ、上にしまった古い連絡帳が少しだけ顔を出しました。耳が焼けるように熱くなるのがわかりました。
母は何も言いませんでした。少しだけ微笑んで、見ないふりをしてくれたのだと思います。
そして...
「じゃあ帰るね」と、母は玄関を出ていきました。ドアが閉まったあと、しばらく動けませんでした。
見られた恥ずかしさと、見られたかもしれない安心感が、胸の中で混ざり合っていました。ありがとうの一言が、どうしても言えない。この距離のまま、俺は大人になるのかもしれません。
ただ、あの段ボールだけは捨てません。10年経っても20年経っても、たぶん俺の部屋のどこかにあると思います。中身を誰かに見せる日は来ないかもしれない。それでも、俺にとってあの箱は、母の手の温度そのものだから。
(10代男性・学生)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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