「時短勤務は周りに迷惑」と陰口を聞いた私→その先輩が時短になった日、かけた一言に自分でも驚いた
聞こえてしまった一言
16時に「お先に失礼します」と席を立つのが、私の毎日の終業でした。子どもの保育園のお迎えがあるため、時短勤務を取って復帰したのです。周囲の同僚たちのデスクには、まだ書類が積まれていました。申し訳なさを抱えながらオフィスを後にする、そんな日々が続いていました。
ある日の昼下がり、コピー機の前で順番待ちをしていたとき、休憩スペースから声が漏れ聞こえてきました。「時短勤務は周りに迷惑」。チームで一番仕事ができると評判の先輩の声でした。反論する言葉は浮かびません。私の分の業務を誰かが担っているのは、紛れもない事実だったからです。
息を詰めた3ヶ月
それからの毎日は、前よりも気を張るものになりました。誰よりも早く出社し、昼食も短く切り上げ、16時までに一日分の業務を終えられるよう机に向かいました。それでも「早く帰る人」というレッテルは、どうしても剥がせない気がしていたのです。
3ヶ月ほど経ったある朝、チームミーティングで先輩が切り出しました。「来月から私、時短にさせてもらうことになりました」。通院と治療が必要な病気が見つかったとのことでした。会議室の空気が一瞬、止まったように感じました。先輩の横顔には、あの休憩スペースで聞いたときの強さはありませんでした。
引き継ぎのデスクで
ミーティングのあと、先輩のデスクに向かいました。引き継ぎ資料を広げながら「無理しないでくださいね」と声をかけたのです。先輩は少し目を伏せ、「ごめんね、本当に」と返しました。
優しさから出た言葉だと、自分では思いたかった。でも正直に言えば、それだけではなかったのです。あのとき、先輩の目を見た瞬間、ほんの一瞬だけ「わかってくれた?」という気持ちが胸をよぎりました。すぐに打ち消したけれど、確かにあったその小さな感情に、自分で自分が少し嫌になりました。
そして...
「お互いさま」という言葉が、本当の意味で使えるようになるには、もう少し時間がかかるのかもしれません。許したわけでもなく、責めたいわけでもない。ただ、同じ立場になって初めて見える景色があるのだと、今は思っています。
明日もまた、16時に「お先に失礼します」と言って帰ります。罪悪感ではなく、できるだけまっすぐ前を向いて。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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