「嫁に出た妹に遺産は不要だ」と宣言した兄、専門家が読み上げた父の遺言書に私は泣いた
「来なくていい」という空気
父が亡くなって数日後、私は夫に断りを入れて実家に戻りました。葬儀はすでに済まされており、私が着いたときにはもう終わっていました。「連絡が遅かった」と言われましたが、兄が知らせてくれたのは、父が亡くなった翌日の夕方のことです。
久しぶりに会った兄は、玄関先で私を見るなり「遺産の話があるなら早めに言っておくが」と切り出しました。
「嫁に出た妹に遺産は不要だ。お前はもう別の家の人間だろう」
穏やかに私を育ててくれた父の家で、こんな言葉を聞くとは思ってもいませんでした。喉の奥が詰まるような感覚がして、私は何も言い返せず、ただうなずくしかありませんでした。
専門家の事務所で
一週間後、父の遺言書があることを知らされ、私と兄は専門家を訪ねました。兄は「どうせ形式的なものだろう」と言いながら、背もたれに体を預けて座っていました。まるでこの場をさっさと終わらせたいという気持ちが、その姿勢にそのまま出ているようでした。
専門家の方が「お父様の遺言書を読み上げます」と告げ、そっと書面を開きました。最初に読まれたのは財産の分配でした。父が長年住んでいた家と預金の大部分が、私の名前で記されていたのです。兄がぐっと姿勢を正す気配がしました。室内に重い沈黙が落ち、時計の音だけが耳に届きました。
父が残した言葉
続いて読まれたのは、父が自筆で書き残した手紙でした。
「長男には十分に甘えさせてもらった。だが娘のことは、ずっと心配してきた。嫁に出た女には何もいらないと、息子が何度もわたしに言い聞かせようとした。それを聞くたびに、娘への申し訳なさが増した」
朗読が終わっても、兄は何も言いませんでした。目を伏せたまま、指先でテーブルをゆっくりと叩き続けていました。私はそのとき初めて、父がこの手紙を書くまでにどれほど時間をかけたかを思いました。父がいつからそんな話を兄から聞かされていたのか。目頭が熱くなり、こらえきれず涙がこぼれました
そして...
その後、兄から一度もメッセージは来ませんでした。父が私のために遺言書を用意してくれていたこと。それが嬉しいというより、父がそうしなければならなかった理由を思うと、胸が痛かった。
遺産のことは、まだ何も決めていません。でも父が最後に残してくれたのは、財産よりずっと重いものだと感じています。あの手紙の一行が、ずっと心の中に残っています。
(40代女性・販売職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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