「あの子にだけは負けたくない」嫁に期限切れの肉を出し続けた私→息子に言われた最後の一言
息子を取られた日
息子が結婚すると聞いたとき、嬉しいという気持ちの裏に、はっきりとした焦りがありました。あの子が作ったお弁当を「うまい」と言う息子を見たとき、胃の奥がじわりと熱くなりました。私が何十年もかけて覚えさせた味が、あっという間に上書きされていく。そんな気がしたのです。
息子は昔から私の生姜焼きが一番だと言ってくれていました。あの子と暮らし始めてからも、義実家で食べるたびに「やっぱり母さんの味だな」と言う。その言葉だけが、私をつなぎ止めていました。
最初は偶然だった
冷凍していた肉の期限が切れていることに気づいたのは、ある訪問日の朝でした。買い直す時間はなく、「火を通せば大丈夫」と自分に言い聞かせて出しました。「今日もたくさん作ったから、遠慮しないでね」。いつもどおりに振る舞いました。
あの子が食後に少し顔色を悪くしているのに気づいたとき、胸がざわつきました。でも同時に、ほんの小さな満足感がありました。あの子にできないことが、私にはある。あの子が気づかないうちに、私のほうが息子のそばに残れる。そう思ってしまったのです。それが始まりでした。
冷蔵庫を開けられた日
2回目からは、意図的でした。期限の切れた肉を別のジップ袋に移し替え、日付を書いて冷凍室の奥に入れる。あの子に出す分だけ、そこから使う。味の濃いたれで食感を隠せば、気づかれないことはわかっていました。息子の分には新しい肉を使います。あの子だけに、古い肉を。
あの子が「お義母さん、このお肉いつ買ったものですか?」と聞いてきたとき、動揺しなかったと言えば嘘になります。でも「昨日よ」と答える自分の声は、驚くほど自然でした。冷蔵庫を開けられたとき、「うちはずっとこのやり方でやってきたの」と言いました。あの子の目が怯えた色に変わるのが見えて、口元が緩みそうになった、その瞬間でした。
そして...
「母さん、俺の嫁に何してるかわかってるのか」。息子の声が、今まで聞いたことのない低さで響きました。振り向いた息子の目には、かばう色ではなく、まっすぐな怒りがありました。知っていたのです。いつから気づいていたのかはわかりません。でもあの目は、もう迷っていませんでした。
「俺たちはしばらくここには来ない」。その一言で、足元から崩れていくのがわかりました。あの子ではなく、息子に突き放されている。2人の車が角を曲がって見えなくなったあと、冷凍室を開けました。ジップ袋の中の変色した肉が、私のしてきたことをそのまま映しているようでした。息子を繋ぎ止めたくてやったことが、息子を遠ざけた。その当たり前の結末を、私はようやく思い知らされたのです。
(60代女性・専業主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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