映画「六人の噓つきな大学生」より

<六人の噓つきな大学生>稲垣Pが作品の注目ポイントを語る「お客さん自身に委ねる終わり方になっている」 浜辺美波ら6人起用理由も明らかに

2024.11.22 12:00
映画「六人の噓つきな大学生」より

就職活動を舞台に6人の登場人物の裏の顔が巧に暴かれていく、“密室サスペンス”と“青春ミステリー”がかけ合わさった映画『六人の嘘つきな大学生』が11月22日(金)に公開。新卒採用をかけて最終面接に挑む6人が繰り広げる予測不能な会話劇となっている本作で、6人の大学生を演じたのは、浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠。この度、本作でプロデューサーを務めた稲垣優にインタビューを実施。6人のキャスティング秘話や、6人の現場での雰囲気、注目ポイントなどについてたっぷりと語ってもらった。

6人のキャスティング秘話を明かす

――「六人の噓つきな大学生」を映像化しようと思ったきっかけや、原作の魅力を教えてください。

自分がプロデューサーになった時に、就職活動をというものをいつか映像化してみたいなということを前から思っていて、そこにタイミングよくこの作品が来たんです。

ただ、過去に就職活動を題材とした映画では2016年に公開された映画「何者」があり、同じようなことをやっても、二番煎じになってしまうという中で、この作品は一言でいうと「就活をきっかけに事件が起こり、ついには人が死ぬ」という…。「就活」と「死」という日常ではありえない掛け合わせがすごく新しいなと。映像で表現した時に、どんな面白いエンターテインメントが作れるのかなと、率直にワクワクして、やりたいなと思いました。

これは就活に関わらずですが、やっぱり人はいい面、悪い面が両方あって、原作は人間ドラマとしてその部分がしっかり描かれています。いい面があると思ったら実はこんなにクズでしたっていう話なのかと思ったら、その先に、この6人ってこんな意外な一面もあったんだよっていうのも描かれていて、ただ単に密室で起こる若者たちの騙し合いだけではなく、ヒューマンドラマとしての完成度も高い。思わず心を打たれる要素もある、すてきな原作なんです。

――六人の大学生を演じる6名のキャスティング理由をおしえてください。

まずは、全員小説読んだ時に一番イメージ合いそうだなと思ってオファーさせてもらいました。 浜辺さんに関しては 「ゴジラ-1.0」(2023年)だったり、朝ドラ「らんまん」(2023年、NHK)だったり、この年代ではトップの女優さんだと思っているのですが、意外と同年代のキャストさんとお芝居をしてる作品を見たことがないイメージで。同世代の中で演技をする浜辺さんを見てみたいなという思いでオファーをしました。

赤楚さんは、すごくまっすぐなイメージなので、波多野のキャラクターにピッタリ合うなと思ったんです。あんまり詳しくは言えないですが後半に波多野の見せ場があって、それを演じられる力がないと、お客さんに共感してもらうのって難しいなと。そこの説得力を持てる俳優さんは誰なんだろうと考えたら、赤楚さんしかいないよなと思いました。

佐野さんは、イメージでいうと「トリリオンゲーム」(2023年、TBS系)のガクのような印象があるのですが、「ドラゴン桜」(2021年、TBS系)で演じていた役のような、影のある役もお上手だと思っていたんです。今回演じる九賀はある意味キーマンになります。クールな部分も持っていて、そういう部分の上手な使い分けを期待してキャスティングしました。

山下さんは、本を読んだ瞬間から、矢代は山下さん以外いないだろうなって思ったんです。告発文で裏の顔が明かされたときの、矢代のみんなに対する開き直り具合などが絶対ハマるだろうな、矢代が「裏の顔」に変わった瞬間を見たいなっていう思いでオファーしました。期待通り、完成した映像を見たら、僕が想像していたよりももっとすごい演技が見れました。

倉さんは令和のカメレオン俳優だと思っています。10年ぐらい前に染谷将太さんのお芝居を現場で初めて見たときと同じ衝撃を覚えました。僕が最初に倉さんを認識したのが「KAPPEI」(2022年)で、伊藤英明さんにすごいチャラい絡み方をする若者の役で、そこでまず度胸がすごいなと(笑)。その後も作品ごとに全く違う役柄を演じられていたので、その振り幅の大きさから、今回は森久保を演じてくれたら面白いんじゃないかなと思ってオファーしました。実際にとてもハマっていましたし、むしろ倉さんの素は森久保に近いのかなと感じるくらいでした。

西垣さんとは「わたしの幸せな結婚」(2022年)でお仕事をご一緒して、その時は主演の目黒蓮さんが率いる部隊の隊員という役だったのですが、オーラじゃないですけど、既にそういうものを感じる役者さんだなと思っていました。この6人の中に西垣さんが入ることで、化学反応が起きて他の作品にはないオリジナリティーを出せる気がしたんです。スポーツや就職活動も実際にしていたと仰っていたので、ご自身の経験を袴田という役に乗せてきてくれるのではないかと、期待を込めてオファーしました。

お互いを気遣えるすてきな6人は「みるみるうちに仲良くなっていました」

――現場での6人の雰囲気はいかがでしたか?

気づいたらすごい仲良くなっていて。 撮影自体は1カ月ぐらいだったんですけど、ほとんどが6人でいるシーンだったので、話す機会も多くてみるみるうちに仲良くなっていました。確か撮影が半分過ぎたあたりで、6人で1回ご飯に行ったという話も聞きました。

でも皆さん、切り替えがすごく上手なので、セットではバチバチのお芝居をやるんです。会議室のシーンはほぼ順撮りで撮影していて、 自分の見せ場があるシーンの朝は緊張してるんですよ。なので、その見せ場のシーンがある人にはみんなが気を遣っていて、チームワークの良いすてきな6人だなって思いました。

――本作は会議室でのシーンがかなり長いですが、その会議室のシーンがあっという間に感じられるくらい圧巻でした。

監督やスタッフの技術はもちろんなんですけど、ある意味演劇に近かったなと思いました。監督だけでなく役者さんも自分で考えて、自分のアイデアでお芝居をして、それが活かされていくような感覚。他の作品でなかなか経験できない、いい現場だったなと思いました。

――稲垣さんのお気に入りのシーンはどの部分でしょうか。

グループディスカッションのシーンで、最初に袴田の告発文が明らかになって、「誰がこんなもん用意したんだよ!」って言ったあと矢代と掛け合うシーンがあるのですが、この作品の中で1番最初に怒鳴り合うシーンでもあって、西垣さんもかなりプレッシャーだったと思うんです。

見てる側も同じくらい緊張していて、あそこの熱量がどれぐらいになるかで、 このグループディスカッションのシーンを最後まで飽きずに見られるかどうかが決まると思っていたので、あのシーンを完璧に演じていただいて、すばらしいなと思いましたし、お気に入りのシーンです。

他にも、中盤で山下さんが馬鹿にしたように鼻で笑うシーンがあるのですが、あそこはもう矢代という人物の裏の顔を物語っているなと。すごい悪い顔をされていて(笑)。「絶対にいる!こういう人!」と思わせてくれるシーンです。

――見るたびに見え方が変わる映画だと感じました。1回目見る際に注目してほしいポイント、2回目やそれ以降に注目してほしいポイントをおしえてください。

1回目見る際は、6人の人間関係の移り変わりですかね。前半の「採用方法を変更します」というメールが来るまでの、若者たちのワイワイした青春ドラマ感がすごくすてきで、「ずっとこういう関係でいればいいのにな」って思わず願ってしまうのですが、メールが届いたあといきなりトーンが変わっていって、一気にジェットコースターみたいに 6人の人間関係も変わっていくという…。

2回目、3回目見る時は、誰が誰に投票していたのか、また、その時に登場人物の誰がどういう顔してたのか、という部分ですかね。ぜひ注目していただきたいです。

エンドロール後に出てくるラストカットに注目「お客さん自身に委ねる終わり方」

――表の顔と裏の顔というのが、今回映画のキーワードにもなってくると思うのですが、稲垣さんがお会いしてギャップがあったと感じるのはどなたですか?

佐野さんです。こんなにいじられるのかと(笑)。僕の中での佐野さんのイメージはクールだったので、誰よりもいじられていて本当に意外でした。

あとは浜辺さんが同世代の俳優さんたちと大勢で和気あいあいと仲良くしている姿を見るのも新鮮でした。先ほども言ったのですが、年上の方との共演が多いイメージなので。宣伝期間中も、浜辺さんを中心に6人がわちゃわちゃして盛り上がっている光景を度々目にしていて、新しい一面が見られました。

でも、これはギャップとはまた別になるのですが、6人がこんなにも仲良くなったのが一番びっくりしました。キャスティングをする側からしたら、こんなにうれしいことってないんです。今でも6人で時間が空いたらご飯に行こうと話しているみたいで。やはり、撮影中はコミュニケーションが多くても、撮影が終わると減ってしまうじゃないですか。でも、6人は毎日のように連絡取り合っているみたいなのですごくうれしいです。

――最後に映画の見どころをお願いいたします。

ハラハラするサスペンス要素もあるんですけど、最初はストーリーをやはりちゃんと追ってほしいなって思います。どんでん返しに続くどんでん返しで、「就活で嘘に殺される」ってどういうことなのか、という真相を、ぜひ劇場で確かめていただきたいです。

また、グループディスカッションのお芝居も今回大変だと感じたことの一つで、例えば剣や刀で戦ったり、ピストルで撃ち合ったりするわけではないなかで、それと同じような緊迫感を生み出さなきゃいけない。そんな中で6人がそれぞれ考えて、知恵を出し合って見事なお芝居を繰り広げているところも、言うなれば「会話の殺陣」のような形でとても見応えがあるかと思います。

あとはプロデューサーだから言えるというところでもあるのですが、 緑黄色社会さんに原作と映画を観て書き下ろしていただいた主題歌の「馬鹿の一つ覚え」という曲も、楽曲はもちろんですが、歌詞も映画に深く寄り添っていて、とても素晴らしかったです。この歌詞を注意して聞いてもらうと、エンドロール後に出てくるあるラストカットが「これってどう見ればいいんだろう」と、観る人によって意見が分かれる作りになっており、ある意味お客さん自身に委ねる終わり方になっているので、本編と主題歌の最高のコラボレーションになったと思います。ぜひ最後までワクワクしていただきたいです。

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