「ロッキー」より

底辺から這い上がったロッキーはスタローンの生き様そのもの…「ロッキー」を大ヒットに導いた“友情・努力・勝利”の方程式

2024.11.08 18:00
「ロッキー」より

シルベスター・スタローンが演じ、ロッキー・バルボアというボクサーの半生を描いた映画「ロッキー」シリーズが、BS12 トゥエルビ(BS222ch)の「土曜洋画劇場」にて一挙放送中。主人公ロッキーの半生は、無名の俳優として長い下積み時代を経たのちに、ハリウッドスターの座へと駆け上がったスタローンの人生と重なる。「ロッキー」(1976年)の大成功から本格的に始まった彼の俳優人生は、「ランボー」や「エクスペンダブルズ」シリーズの世界的大ヒットにより見事に開花。誰もが知るトップスターとなったスタローンは、78歳となった今も現役アクションスターとして活躍している。そんなスタローンの軌跡を振り返りながら、世界を熱狂させた「ロッキー」シリーズの魅力を紐解いてみる。

うだつの上がらない30歳のボクサーが、再起を懸けたスタローンの姿に重なる

借金の取り立て屋を兼業するうだつの上がらない30歳の三流ボクサー。それが「ロッキー」シリーズの主人公ロッキー・バルボアだ。第1作では、世界ヘビー級チャンピオンのアポロとエキシビジョンマッチで対戦することになったロッキーが、過酷なトレーニングを経て試合に臨むまでが描かれる。走り込みや精肉工場でのパンチ打ち、肉体改造のために生卵を一気飲み…。人が変わったようにボクシングと本気で向き合うロッキーを、親友のポーリー、彼の妹でロッキーが片想いするエイドリアン、所属ジムのトレーナーのミッキーも応援する。ボクシングへの情熱とロッキーの成長を描いた本作は、シンプルがゆえに観る者の心をつかみ、主題歌「ロッキーのテーマ」と共に映画史に刻まれた。

このとき、ロッキーを演じたスタローンも役と同じく30歳。20代の頃はオーディションで落とされ続け、エキストラやポルノ出演といった仕事で糊口をしのぐ日々を送っていた。家賃を払えずホームレス生活も経験したスタローンにとって、「ロッキー」はまさに人生の分岐点だったのだ。自ら脚本を執筆し、主演を務めた本作は全米で興業収入1億ドルを叩き出すヒットとなり、スタローンをスターダムへとのし上げる大きな第一歩となる。同時に、ひたむきで寡黙なロッキーのキャラクターは、そのままスタローンの俳優像に投影されたのだった。

昭和世代の胸に突き刺さる“友情・努力・勝利”の方程式

1977年に「ロッキー」が日本で劇場公開されると、男性を中心に一大ブームを巻き起こした。日本でも大ヒットとなった要因の1つは、少年漫画を思わせる設定とストーリーにあるだろう。ロッキーには親友や、のちに恋人となるエイドリアン、トレーナーのミッキーといった仲間がおり、彼の大きな支えとなっている。そして、最大のライバルであるアポロも、拳を交えたのちにかけがえのない親友となる。彼らとの友情もエネルギーとなり、ロッキーは年齢を重ねても激しいトレーニングを続け、決して勝利への渇望を捨てることはない。

こうした「ロッキー」シリーズのプロットは、まさしく少年漫画誌を地で行くものであり、男子が夢中で読んでいた「週刊少年ジャンプ」の“友情・努力・勝利”の方程式とがっちりハマっていた。くわえて、ボクシング漫画の金字塔「あしたのジョー」の存在も「ロッキー」を大ヒットに導く足掛かりとなったのかもしれない。海の向こうからこうも少年漫画王道作品の実写映画が輸入されたというのは面白いもので、昭和世代の少年から大人まで、「ロッキー」を観た者は「エイドリアーン!」の名ゼリフを口にしたものだ。

ヒーローロードに欠かせない好敵手の存在がロッキーを輝かせる

もう1つ、「ロッキー」シリーズを語るうえで欠かせないのが、ロッキーの前に立ちはだかるライバルたちだ。立ちはだかる好敵手(ライバル)を倒して成長し、ライバルは友になる。それこそジャンプ漫画の方程式と重なるもので、最大のライバルであるアポロはロッキーのトレーナーだったミッキーの死後、その役割を引き受け、心強いパートナーとなる。アポロを演じたカール・ウェザースはスタローンにとって戦友ともいうべき存在だったようで、ウェザースが2024年2月に逝去すると、スタローンはSNSに「僕の成功において、絶対不可欠な存在だった」と追悼動画をアップして戦友の死を悼んだ。

また、「ロッキー3」(1982年)に登場する、ミスター・Tが演じるクラバー・ラングもビジュアルインパクトは絶大だった。モヒカン頭に筋肉隆々の肉体と上から目線の物言いは、まさに王道のヒール。「ロッキー4/炎の友情」(1985年)では、ドルフ・ラングレンが演じるソ連の冷酷なボクシングマシーン、イワン・ドラゴが登場する。その後アクションスターとなったラングレンは、「エクスペンダブルズ」(2010年)でスタローンと25年ぶりの共演を果たし、「ロッキー」ファンの心を熱くさせた。

ロッキーの生き様が明日を生きる活力をくれる

少年漫画のヒーローが挫折や葛藤を味わうように、ロッキーもまた酸いも甘いも経験しながら年齢を重ねていく。「ロッキー2」(1979年)では世界チャンピオンへと駆け上がる姿、「ロッキー3」ではどん底の中で新たな出会いを果たし、「ロッキー4/炎の友情」では新たな命と向き合う姿が描かれる。やがてロートルと呼ばれる年齢になると、「ロッキー5/最後のドラマ」(1990年)では老いる哀しさ、「ロッキー・ザ・ファイナル」(2006年)では老いてなお諦めない勇気を教えてくれるのだ。「ロッキー・ザ・ファイナル」当時のスタローンは60歳だが、還暦を迎えてもなおリングに立つ姿は輝きに満ちている。

BS12 トゥエルビ(BS222ch)の「土曜洋画劇場」(毎週木曜夜7:00~、全国無料放送)では、ボクシング映画の金字塔「ロッキー」シリーズを連続放送中。昭和世代の方もそうでない方も、ロッキーの生き様と熱い戦いを振り返ってみてはどうだろう。必ずや心を揺さぶられ、明日を生きる活力が湧いてくるはずだ。

◆文=豆山しば

関連リンク

関連記事

  1. 新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    WEBザテレビジョン
  2. 東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    WEBザテレビジョン
  3. <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    WEBザテレビジョン
  4. 松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    WEBザテレビジョン
  5. ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    WEBザテレビジョン
  6. 瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    WEBザテレビジョン

「映画」カテゴリーの最新記事

  1. 渡邉美穂、齊藤なぎさに感じた運命を語る「出会えてよかったなって本当に思っています」
    渡邉美穂、齊藤なぎさに感じた運命を語る「出会えてよかったなって本当に思っています」
    WEBザテレビジョン
  2. 渡邉美穂、齊藤なぎさへの思い溢れ涙寸前「正直内心元アイドル同士っていうのもあって…」本音吐露【あたしの!】
    渡邉美穂、齊藤なぎさへの思い溢れ涙寸前「正直内心元アイドル同士っていうのもあって…」本音吐露【あたしの!】
    モデルプレス
  3. INI木村柾哉&M!LK山中柔太朗でボクシング作品?監督が期待「2人運動神経いいから」【あたしの!】
    INI木村柾哉&M!LK山中柔太朗でボクシング作品?監督が期待「2人運動神経いいから」【あたしの!】
    モデルプレス
  4. INI木村柾哉は「人間では少ないタイプ」M!LK山中柔太朗と熱いハグ【あたしの!】
    INI木村柾哉は「人間では少ないタイプ」M!LK山中柔太朗と熱いハグ【あたしの!】
    モデルプレス
  5. 薬師丸ひろ子出演作「セーラー服と機関銃」「里見八犬伝」など7作品を一挙放送 薬師丸の大ファン・柄本佑からコメントも到着
    薬師丸ひろ子出演作「セーラー服と機関銃」「里見八犬伝」など7作品を一挙放送 薬師丸の大ファン・柄本佑からコメントも到着
    WEBザテレビジョン
  6. BTS・JUNG KOOK「ARMYのおかげで自信が持てる」 努力と挑戦を映すドキュメンタリー映画が配信決定
    BTS・JUNG KOOK「ARMYのおかげで自信が持てる」 努力と挑戦を映すドキュメンタリー映画が配信決定
    WEBザテレビジョン
  7. 畑芽育主演「うちの弟どもがすみません」姉弟5人の個性溢れるキャラクタービジュアル解禁
    畑芽育主演「うちの弟どもがすみません」姉弟5人の個性溢れるキャラクタービジュアル解禁
    モデルプレス
  8. 畑芽育、作間龍斗、那須雄登、織山尚大、内田煌音の個性あふれるキャラクタービジュアル解禁<うちの弟どもがすみません>
    畑芽育、作間龍斗、那須雄登、織山尚大、内田煌音の個性あふれるキャラクタービジュアル解禁<うちの弟どもがすみません>
    WEBザテレビジョン
  9. 映画「はたらく細胞」、細菌役を務める片岡愛之助、小沢真珠、新納慎也、Fukaseの新場面写真がキャスティング秘話と共に公開
    映画「はたらく細胞」、細菌役を務める片岡愛之助、小沢真珠、新納慎也、Fukaseの新場面写真がキャスティング秘話と共に公開
    WEBザテレビジョン

あなたにおすすめの記事