底辺から這い上がったロッキーはスタローンの生き様そのもの…「ロッキー」を大ヒットに導いた“友情・努力・勝利”の方程式
シルベスター・スタローンが演じ、ロッキー・バルボアというボクサーの半生を描いた映画「ロッキー」シリーズが、BS12 トゥエルビ(BS222ch)の「土曜洋画劇場」にて一挙放送中。主人公ロッキーの半生は、無名の俳優として長い下積み時代を経たのちに、ハリウッドスターの座へと駆け上がったスタローンの人生と重なる。「ロッキー」(1976年)の大成功から本格的に始まった彼の俳優人生は、「ランボー」や「エクスペンダブルズ」シリーズの世界的大ヒットにより見事に開花。誰もが知るトップスターとなったスタローンは、78歳となった今も現役アクションスターとして活躍している。そんなスタローンの軌跡を振り返りながら、世界を熱狂させた「ロッキー」シリーズの魅力を紐解いてみる。
うだつの上がらない30歳のボクサーが、再起を懸けたスタローンの姿に重なる
借金の取り立て屋を兼業するうだつの上がらない30歳の三流ボクサー。それが「ロッキー」シリーズの主人公ロッキー・バルボアだ。第1作では、世界ヘビー級チャンピオンのアポロとエキシビジョンマッチで対戦することになったロッキーが、過酷なトレーニングを経て試合に臨むまでが描かれる。走り込みや精肉工場でのパンチ打ち、肉体改造のために生卵を一気飲み…。人が変わったようにボクシングと本気で向き合うロッキーを、親友のポーリー、彼の妹でロッキーが片想いするエイドリアン、所属ジムのトレーナーのミッキーも応援する。ボクシングへの情熱とロッキーの成長を描いた本作は、シンプルがゆえに観る者の心をつかみ、主題歌「ロッキーのテーマ」と共に映画史に刻まれた。
このとき、ロッキーを演じたスタローンも役と同じく30歳。20代の頃はオーディションで落とされ続け、エキストラやポルノ出演といった仕事で糊口をしのぐ日々を送っていた。家賃を払えずホームレス生活も経験したスタローンにとって、「ロッキー」はまさに人生の分岐点だったのだ。自ら脚本を執筆し、主演を務めた本作は全米で興業収入1億ドルを叩き出すヒットとなり、スタローンをスターダムへとのし上げる大きな第一歩となる。同時に、ひたむきで寡黙なロッキーのキャラクターは、そのままスタローンの俳優像に投影されたのだった。
昭和世代の胸に突き刺さる“友情・努力・勝利”の方程式
1977年に「ロッキー」が日本で劇場公開されると、男性を中心に一大ブームを巻き起こした。日本でも大ヒットとなった要因の1つは、少年漫画を思わせる設定とストーリーにあるだろう。ロッキーには親友や、のちに恋人となるエイドリアン、トレーナーのミッキーといった仲間がおり、彼の大きな支えとなっている。そして、最大のライバルであるアポロも、拳を交えたのちにかけがえのない親友となる。彼らとの友情もエネルギーとなり、ロッキーは年齢を重ねても激しいトレーニングを続け、決して勝利への渇望を捨てることはない。
こうした「ロッキー」シリーズのプロットは、まさしく少年漫画誌を地で行くものであり、男子が夢中で読んでいた「週刊少年ジャンプ」の“友情・努力・勝利”の方程式とがっちりハマっていた。くわえて、ボクシング漫画の金字塔「あしたのジョー」の存在も「ロッキー」を大ヒットに導く足掛かりとなったのかもしれない。海の向こうからこうも少年漫画王道作品の実写映画が輸入されたというのは面白いもので、昭和世代の少年から大人まで、「ロッキー」を観た者は「エイドリアーン!」の名ゼリフを口にしたものだ。
ヒーローロードに欠かせない好敵手の存在がロッキーを輝かせる
もう1つ、「ロッキー」シリーズを語るうえで欠かせないのが、ロッキーの前に立ちはだかるライバルたちだ。立ちはだかる好敵手(ライバル)を倒して成長し、ライバルは友になる。それこそジャンプ漫画の方程式と重なるもので、最大のライバルであるアポロはロッキーのトレーナーだったミッキーの死後、その役割を引き受け、心強いパートナーとなる。アポロを演じたカール・ウェザースはスタローンにとって戦友ともいうべき存在だったようで、ウェザースが2024年2月に逝去すると、スタローンはSNSに「僕の成功において、絶対不可欠な存在だった」と追悼動画をアップして戦友の死を悼んだ。
また、「ロッキー3」(1982年)に登場する、ミスター・Tが演じるクラバー・ラングもビジュアルインパクトは絶大だった。モヒカン頭に筋肉隆々の肉体と上から目線の物言いは、まさに王道のヒール。「ロッキー4/炎の友情」(1985年)では、ドルフ・ラングレンが演じるソ連の冷酷なボクシングマシーン、イワン・ドラゴが登場する。その後アクションスターとなったラングレンは、「エクスペンダブルズ」(2010年)でスタローンと25年ぶりの共演を果たし、「ロッキー」ファンの心を熱くさせた。
ロッキーの生き様が明日を生きる活力をくれる
少年漫画のヒーローが挫折や葛藤を味わうように、ロッキーもまた酸いも甘いも経験しながら年齢を重ねていく。「ロッキー2」(1979年)では世界チャンピオンへと駆け上がる姿、「ロッキー3」ではどん底の中で新たな出会いを果たし、「ロッキー4/炎の友情」では新たな命と向き合う姿が描かれる。やがてロートルと呼ばれる年齢になると、「ロッキー5/最後のドラマ」(1990年)では老いる哀しさ、「ロッキー・ザ・ファイナル」(2006年)では老いてなお諦めない勇気を教えてくれるのだ。「ロッキー・ザ・ファイナル」当時のスタローンは60歳だが、還暦を迎えてもなおリングに立つ姿は輝きに満ちている。
BS12 トゥエルビ(BS222ch)の「土曜洋画劇場」(毎週木曜夜7:00~、全国無料放送)では、ボクシング映画の金字塔「ロッキー」シリーズを連続放送中。昭和世代の方もそうでない方も、ロッキーの生き様と熱い戦いを振り返ってみてはどうだろう。必ずや心を揺さぶられ、明日を生きる活力が湧いてくるはずだ。
◆文=豆山しば
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