「ジョン・ウィリアムズ/伝説の映画音楽」は、ディズニープラスで独占配信中

えっ全部同じ作曲家なの?「SW」「インディ・ジョーンズ」「ハリポタ」…驚愕の“生きる伝説”ジョン・ウィリアムズとは<伝説の映画音楽>

2024.11.04 12:45
「ジョン・ウィリアムズ/伝説の映画音楽」は、ディズニープラスで独占配信中

「スター・ウォーズ」をはじめ、「ジュラシック・パーク」「インディ・ジョーンズ」「ハリー・ポッター」シリーズなど、多くの名作映画の音楽を手掛けてきた作曲家ジョン・ウィリアムズ。まさしく“生きる伝説”とも言うべき映画音楽界の巨匠の足跡をたどるオリジナルドキュメンタリー映画「ジョン・ウィリアムズ/伝説の映画音楽」が11月1日に配信された。そこで、あらためてジョン・ウィリアムズがどのような人物なのかを掘り下げる。

“生きる伝説”ジョン・ウィリアムズの軌跡

1932年2月8日、アメリカ・ニューヨーク州フローラル・パークで生まれたウィリアムズは現在92歳。1948年にロサンゼルスに引っ越し、ノース・ハリウッド高校を卒業後、カリフォルニア大学に進学。ここで作曲などを学び、兵役を経て、1955年にはジュリアード音楽院で学ぶために生まれた街ニューヨークに戻った。専攻はクラシック・ピアノと作曲だったが、在学中からジャズピアニストとして活動も始めていた。

後に「刑事コロンボ」や「ピンク・パンサー」のテーマ曲を生み出す作曲家ヘンリー・マンシーニと交流があり、1958年に始まったテレビシリーズ「ピーター・ガン」のサウンドトラックをマンシーニが作曲を担当しているが、ウィリアムズはピアニストとして参加。あの有名なテーマ曲のピアノもウィリアムズの演奏によるものだった。

クラシックの素養があり、ジャズも専門内、そしてマンシーニとの交流によってドラマや映画のサウンドトラックにも参加するなど、ジャンルの枠など関係ないのがウィリアムズの作る音楽の大きな特徴であり、魅力となっている。1960年代にはドラマ「宇宙家族ロビンソン」、オードリー・ヘプバーン主演の映画「おしゃれ泥棒」、マーク・ロブソン監督の映画「哀愁の花びら」、スティーブ・マックイーン主演の「華麗なる週末」などの音楽を手掛けた。

名コンビ・スピルバーグ監督との出会い

大きなきっかけの一つとなったのが、1974年公開の映画「続・激突!/カージャック」。これは劇場映画としてのスティーヴン・スピルバーグ監督の初作品で、その後、多くのヒット作を生んでいくコンビの記念すべき初コラボだった。すぐ後、1975年に公開された映画「ジョーズ」でスピルバーグ、そしてウィリアムズのコラボが一気に開花。巨大なサメに襲われるパニック映画として今なお人気の高い作品だが、テーマ曲のインパクトの強さもそれに一役買っている。静寂の中から聴こえてくるあの“2つの音”。それがテンポアップされるにつれて、恐怖も増大していく。シンプルだが映像とリンクする音楽は、観るものに強烈な印象を与えた。この作品でウィリアムズはアカデミー賞(作曲賞)、ゴールデングローブ賞(作曲賞)、グラミー賞(映画・テレビサウンドトラック部門)を受賞した。

1977年にはジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」とスピルバーグ監督の「未知との遭遇」の音楽を担当。スクリーンに映し出される“遠い昔、はるか彼方の銀河系で…”という言葉の後に始まる「スター・ウォーズ」のテーマ曲は、誰もが口ずさみたくなるような高揚感に満ちあふれ、オーケストラならではの音の厚みが“スペースオペラ”とマッチしている。この作品でもアカデミー賞(作曲賞)を受賞した。

「未知との遭遇」ではまたしてもスピルバーグとタッグを組み、「ジョーズ」では“2つの音”がインパクトを与えたが、「未知との遭遇」では“5つの音”で世界観が創り上げた。未知の生命体とまさしく遭遇するときに流れる“5音”は映画本編にとっても重要なもので、この5音にたどり着くまでの過程が、今回のドキュメンタリー映画の中でも語られている。

膨大な仕事をハイクオリティーでこなす“超人”

1978年公開(日本公開は1979年)の「スーパーマン」も映画音楽におけるウィリアムズのすごさを知らしめるものとなった。「スター・ウォーズ」同様、高揚感のあるテーマ曲が見る者の心を引きつけ、クリストファー・リーヴ演じるスーパーマンが飛んでいる姿が音からでも想像できるほど。

「スター・ウォーズ」第1作あたりからのウィリアムズの仕事量は“超人的”と言っていいくらいのものがある。しかも、どの作品も革新的でクオリティーが高いものばかり。1979年の「1941」、1980年の「スター・ウォーズ/帝国の逆襲(エピソード5)」、そして1981年には「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」というふうに続いていく。「レイダース」は総指揮ジョージ・ルーカス、監督はスピルバーグ、主演は「スター・ウォーズ」のハン・ソロ役のハリソン・フォードという組み合わせで、そこにウィリアムズの音楽が彩られた。「インディ・ジョーンズ」シリーズの第1作となる作品だが、テーマ曲はもちろん、各シーンで聴こえてくる音楽も場面の雰囲気に合っていて、音楽が役者の演技をしっかりと“演出”しているのが感じられる。

1982年には「E.T.」も公開された。スピルバーグ監督による、地球に取り残された地球外生命体(Extra-Terrestrial)と少年エリオット(ヘンリー・トーマス)の交流を描いた物語で、自転車で飛ぶシーンの神秘性とワクワク感もウィリアムズの音楽がより増幅させてくれている。

1990年代も「ホーム・アローン」に始まり、1993年の「ジュラシック・パーク」「シンドラーのリスト」、1998年の「プライベート・ライアン」など、映画史に残る名作の音楽を手掛けた。「シンドラーのリスト」ではクラシックの要素を強めに押し出し、シリアスな作品に重みと深さを与えており、この作品でもアカデミー賞(作曲賞)を受賞した。

1999年に「スター・ウォーズ」シリーズの新たな三部作の始まりとなった「スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)」が公開され、テーマ曲はもちろん、劇中の音楽でウィリアムズらしさをしっかりと感じさせてくれた。

指揮者としても偉大なキャリア

そして2000年代。ここでまた新たな傑作を生み出している。2001年に「ハリー・ポッターと賢者の石」が公開され、その音楽をウィリアムズが担当。映画は大ヒットを記録し、メインテーマの一つとなった「ヘドウィグのテーマ」も多くの人に届いた。ウィリアムズはシリーズ3作目まで音楽を担当したが、4作目以降の音楽担当者も「ヘドウィグのテーマ」を受け継ぎ、作品内に用いている。あの不可思議なメロディーは「ハリー・ポッター」シリーズを象徴したものだと言える。

以降も「スター・ウォーズ」シリーズ、「インディ・ジョーンズ」シリーズをはじめ、多くの作品の音楽を作り続けているウィリアムズ。だが、彼の功績は、映画音楽の作曲だけではない。1984年のロサンゼルスオリンピック、1996年のアトランタオリンピック、2002年のソルトレイクシティオリンピックに楽曲を提供し、ロス五輪の「オリンピックファンファーレとテーマ」はグラミー賞を受賞している。

それと指揮者としても偉大な経歴の持ち主で、1980年から1993年までボストン・ポップス・オーケストラの首席指揮者を務め、ボストン・ポップスの名誉指揮者でもある。かつて、クラシック演奏者から“映画音楽”は軽んじられていたことがあったが、映画音楽の素晴らしさをそういった界隈に知らしめたのもウィリアムズの大きな功績と言えるだろう。小澤征爾氏がボストン交響楽団の第13代音楽監督を務めていた頃から親交があり、2023年9月に約30年ぶりに来日し、長野で開催された「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」に出演して指揮者としてサイトウ・キネン・オーケストラと初共演を果たした。

映画史に残る名曲を生み出してきたジョン・ウィリアムズだが、彼が与えた影響はジャンルの枠を超えている。そういったウィリアムズの魅力を感じられるドキュメンタリー映画「ジョン・ウィリアムズ/伝説の映画音楽」はディズニープラスで日米独占配信中。

◆文=田中隆信

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