神戸・六甲山で開催中「現代アート」の芸術祭、奈良美智作品や絶景スポットも【2025年版】

2025.09.13 12:30
提供:All About

神戸・六甲山で毎年開催される現代アートの芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート」は、2010年開始以来、人気を集めています。2025年で16回目を迎え、のべ580組以上のアーティストが参加。遠方からの来場者やリピーターも多いイベントです。

六甲山の自然豊かな山中に、さまざまなアート作品が展示されており、その多くは作品のそばで写真を撮ることもできます。神戸旅行がさらに楽しくなる、新しい六甲山の魅力を紹介します。

奈良美智さんの「Peace Head」も! 展示作品60点超

神戸市の北に位置する六甲山は、標高931メートル。六甲ケーブルで登ることができ、登山やピクニックなどのアウトドアが楽しめるほか、「1000万ドルの夜景」と評される山上からの市街地や港の夜景も有名です。市街地より5度ほど涼しく、夏は避暑地としても知られます。

「神戸六甲ミーツ・アート 2025 beyond」は、六甲山の自然とアートが楽しめる芸術祭。夏は緑があふれる空間で、10月半ばから約1カ月は紅葉も見ごろを迎えます。

2025年は63作品が、山内の「風の教会エリア」「ミュージアムエリア(ROKKO森の音ミュージアム・新池・六甲高山植物園)」「みよし観音エリア」など9エリアにそれぞれ展示され、徒歩やバス、車などで巡ることができます。

今回、日本を代表する芸術家として知られる奈良美智さんの作品が、ミュージアムエリア(ROKKO森の音ミュージアム)に新たに登場。世界に5体しかない作品「Peace Head」は、日本では埼玉県の角川武蔵野ミュージアムに収蔵されていますが、自然の中で展示されているのは六甲山だけです。

作品名の由来は、うしろに点で刻まれた「PEACE」の文字とピースマーク。奈良さんが造形した手跡の残る粘土を拡大した作品には、平和や平穏、安らかな心などの願いが込められています。

神戸市が大きな被害を受けた阪神淡路大震災から30年、また、世界で絶え間なく起こる対立や災害にどう向き合うべきかを考えさせられる作品です。

絶景のロケーションで「写真映え」する作品をピックアップ

神戸六甲ミーツ・アートは、自然豊かな山中に作品が展示されています。そんなロケーションの中には、写真映えする「絶景スポット」も点在しています。

「六甲の浮き橋とテラス Extend 沈下橋2025」は、フランス・パリを拠点に活動するアーティスト・川俣正さんの作品。ミュージアムエリア(新池)に、2023年から設置されています。

当初はテラスと浮き橋のみでしたが、昨年(2024年)には水中に沈んだ橋が加わり、今年は沈下橋がさらに延長されてテラスを取り囲むような形になりました。誰でも渡ることができる橋は、イベントの中でも特に映えるスポットの1つです。

六甲高山植物園の池に浮かぶ、白い球体。建築家・遠山之寛さんが手掛けた「(semi)sphere」は、石灰石由来の紙「HAQUA」を折り紙のようにして作られた作品で、角度や時間帯によって見え方が変わるのが特徴です。

特に晴れた日中は、空、森、池、そして球体それぞれの色が美しさを際立たせます。球体がこの空間に溶け込み、人と自然が調和する様子が垣間見えます。

六甲山から神戸や大阪を一望できるパノラマビューが魅力の六甲ガーデンテラス。ここには3体の木彫作品が設置されています。

「山の精霊たち」は、愛知県のアトリエを拠点とする彫刻家・白水ロコさんが手掛けた作品。ペガサス、青い鹿、白い鹿の3体がそれぞれ展示され、目の前に広がる絶景と共に多様な生き物と人間が混じり合った造形美は必見です。

森の中にじいちゃんの頭!? 非日常空間のアート鑑賞

また、「作品との距離の近さ」も、神戸六甲ミーツ・アートの魅力のひとつです。作品との間に柵や仕切りがなく、間近でアートをじっくり鑑賞できます。

みよし観音エリアにあるのは、森の中にポツンと置かれた巨大な頭。これはアーティスト・佐藤圭一さんによる「じいちゃんの鼻の穴に宇宙があった。」という作品で、2023年の神戸六甲ミーツ・アートを機に、六甲山での展示が始まりました。

毎年展示場所が変わるうえ、今年は森の中で横たわっているのも特徴です。鼻の穴の中をのぞくと「何か」が見えるとのこと。一緒に写真を撮れば、インパクト抜群です。

森の中に展示されている「シラス、山に昇る」。ミュージアムエリア(六甲高山植物園)にあるこの作品は、円筒状の空間でしらすの群れを体感できる展示。六甲山に設置されたセンターの気象データをもとに、人工光と風でしらすのオブジェが輝いたり揺らめいたりします。

作品を手掛けたのは、漁業、林業、建築など芸術家の枠を越えた「風の環」というアートプロジェクトです。

森の中に展示されている大きな写真の数々は、水中写真家・鍵井靖章さんによる「懐と海」。俳優・木村文乃さんをモデルとした作品をはじめ、いくつかの水中写真が飾られています。

六甲山という「山」と「海」の情景、そして「人」がシームレスに重なり合い、共生の難しさやはかなさ、永遠と刹那(せつな)の間で揺らめく美しさなどが表現された作品。森の中を散策しつつ、静かな空間でじっくり鑑賞するのがおすすめです。

天気が悪い日も楽しめる! 屋内展示もレベル高い

展示作品は野外に加え、屋内もあります。天気があまりよくない日でも、屋内展示を楽しむことができます。

2022年に営業終了した「旧六甲スカイヴィラ」と、その離れにある建物は、現在「六甲山芸術センター」として生まれ変わり、フロアや部屋ごとにアーティストの展示作品を観賞できます。

日本における前衛芸術の黎明期から活動する美術家・イケミチコさんによる「未来人間ホワイトマンー靴をはいて街に出よう-」は、3つの部屋で展開。「未来」「過去」「現在」という異なるテーマでインスタレーションが展示されています。

どの部屋も、イケミチコさんによる「生きること」への強いメッセージとエネルギーが感じられる空間です。

特に、21世紀初めに作者自身が生み出した「未来人間ホワイトマン」には、人種、性別、貧富の差、宗教の違い、戦争など、あらゆる格差や悲劇からの解放を願う人々のピュアな姿が表現されており、独特の世界観が体感できます。

六甲ケーブルの山上駅にある天覧台では、「神戸ワーラー」という作品が観賞できます。タイ・チェンマイと福岡に住む、インドにルーツを持つナウィン・ラワンチャイクンさんが、神戸・北野エリアに住む多様な民族や信仰を持つ人々にインタビューし、過去と現代の神戸で生きる人々を描いた作品です。

ワーラーとは、ヒンディー語で「~する人」という意味。インド人、ネパール人、ベトナム人、そして日本人など多くの人々が作品に登場し、六甲山のある神戸が昔から国際都市であり、今もの伝統が続いていることが、鮮やかな色彩のアートで表現されています。

お笑いコンビ「天竺鼠」でボケを担当する川原克己さんは、芸人として活動する傍ら、お笑いの要素を取り入れた油絵を描き、絵画の個展も非常に人気があります。また、絵本も出版しています。

今回は、六甲ガーデンテラスエリアで、「展」という作品を通じて絵画やグッズなどを展示しています。活動ジャンルの幅広さが伝わるこれらの作品は、どれも見ごたえ十分です。

アート鑑賞後は限定コラボグルメ!「六甲山」の名物も

六甲山は、実は「グルメ」の宝庫でもあります。山内のレストランやカフェをはじめ、山上からの絶景とともに味わうジンギスカンなどが名物です。

六甲ミーツ・アートの開催中、期間限定メニューが味わえます。例えば、「山小屋カフェ エーデルワイス」では、「百日鶏のてりやきのっけごはん」(1800円、スープ付)を提供しています。

100日間肥育された兵庫県産の「播州百日鶏」を使った照り焼きチキンはごはんとの相性も抜群で、生卵やシーザーサラダとともに味わえます。森の中にある心地よいテラス席もおすすめです。

山上からの絶景が楽しめる「六甲ビューパレス」では、「厚切りさんだポークかつ重」(2500円、みそ汁・漬物付)を味わうことができます。

兵庫県産三田ポークを厚切りにカットし、淡路島産タマネギも使った贅沢でボリューム満点のメニューです。みそ汁には六甲味噌を使うなど、地元食材がふんだんに使われているのも魅力です。

そのほか、神戸牛のボロネーゼパスタや、神戸のご当地グルメ「ぼっかけ」「そばめし」をサンドしたパン、標高760メートルの養蜂場で採取された生はちみつ使用したレモネードなども楽しめます。アート鑑賞とあわせて、限定グルメやスイーツも味わってみてはいかがでしょうか。

■神戸六甲ミーツ・アート 2025 beyond
開催期間:2025年8月23日(土)~11月30日(日) ※六甲サイレンスリゾートは8~10月の毎週月曜(月曜祝日の場合は翌火曜)および11月4日(火)は休業
開場時間:10時~17時 ※会場により一部異なる
料金:【WEB割】大人(中学生以上):昼夜パス3900円、昼パス 2900円、夜パス1850円 【山上窓口】大人/小人(4歳~小学生):昼夜パス4000円/1700円、昼パス3000円/1200円、夜パス1900円/950円


執筆者:シカマ アキ(飛行機の旅ガイド)

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