

わざとではなく「やりたくてもやれない」!? 関係者への取材で見えてきた令和の「名古屋飛ばし」事情
コンサートなどのイベントが名古屋を素通りしてしまう「名古屋飛ばし」。その風評は本当なのか? だとしたら理由は何なのか? 関係者の証言を元に、その実態を検証。そして、新会場のオープンラッシュで変わる名古屋のエンタメシーンの展望を探る。※画像:PIXTA
「名古屋飛ばし」。これは主にエンターテインメントのイベントが名古屋を素通りしてしまう現象を指して使われる言葉。1980年代にマドンナやマイケル・ジャクソンなどのコンサートが名古屋で開催されなかったことから、洋楽ファンの間で広まりました。
1990年代には東海道新幹線のぞみの一部ダイヤが名古屋駅を通過したことで、地元では「名古屋飛ばし」が社会問題にまで発展しました。
令和の「名古屋飛ばし」はハコ不足が原因
最近になってまたぞろこの「名古屋飛ばし」が取り沙汰されるようになっています。メディアの報道で「名古屋飛ばし」の根拠としてしばしば引き合いにされるのが一般社団法人コンサートプロモーターズ協会による下記のデータです。
【2024年の都道府県別 音楽公演の開催回数】
全国:3万4251
東京:1万1277
大阪:5903
愛知:2350
このデータから見ると、愛知県での音楽公演件数は国内全体の7%足らず。東京の1/5、人口で1割ほどしか差がない大阪と比べても公演は4割程度しかありません。
これがそのまま東京→大阪と名古屋をスルーしてしまう「名古屋飛ばし」を表すわけではありませんが、少ないとされる公演件数が「名古屋はコンサートが少ない」=「名古屋飛ばし」のイメージにつながっていることは否めません。
その要因の1つが会場不足です。名古屋では音楽公演に適した1万人規模の会場はバンテリンドーム ナゴヤ(名古屋市東区)を除くと日本ガイシホール(名古屋市南区)とポートメッセなごや第1展示場(同港区)の2カ所のみ。
しかも、日本ガイシホールは2024年4月~2026年1月まで改装工事で使用不可。さらに約3000人収容の名古屋国際会議場 センチュリーホール(同市熱田区)も2025年2月~2027年3月の間休館中。
ビッグネームの公演の受け皿となるハコがないことも、今また名古屋飛ばしが取り沙汰される原因となったといえるでしょう。
「名古屋飛ばし」なんて100%ありません!?
この「名古屋飛ばし」という言葉には、あたかも主催者やアーティストが意図的に名古屋を開催地から外しているかのようなニュアンスが含まれます。はたしてそんなことがあるのでしょうか?
「『名古屋飛ばし』なんて100%ありません!」
こう言い切るのは、名古屋のコンサートプロモーター、サンデーフォークプロモーション代表取締役社長の伊神悟さん。同社は年間約1700本の公演を取り扱い、この数字は国内3位に当たります。
「私は長くコンサートの誘致や運営に携わっていますが、アーティスト側が名古屋を敬遠して飛ばした、ということは一度もないんです」と伊神さん。「熱心で温かいファンが多く、食べ物もおいしいと、むしろ名古屋を気に入ってくれるアーティストは非常に多い」といいます。
それにもかかわらず名古屋での音楽公演が少ないとされるのは、こんな事情があるそう。
「名古屋の主要な会場は、予約が1年または13カ月前からで、しかも抽選制。人気アーティストのコンサートもアマチュアの催しも同じ条件なんです。名古屋と比較されやすい大阪では、主要会場は2年半前に予約でき、しかも全国規模の音楽公演優先。
コンサートツアーは1年以上前にスケジュールが組まれることが多いので、名古屋では制度上の問題で会場を押さえられず、やりたくてもやれない、というケースが生じてしまうのです」
また先のコンサートプロモーターズ協会の公演件数のデータについてはこんなからくりもあるとか。
「大阪の約6000という件数の中には演劇・ミュージカル、さらには大阪のプロモーターが主催する他都市の公演も含まれ、それらを除くと実は大阪と愛知の音楽公演の件数に大きな差はありません。
愛知、名古屋は会場を押さえにくいというハンディもあり、実現しない人気公演が目立ってしまいますが、むしろたくさんのコンサートが開催されているともいえるのです」
新施設のオープンでハコ不足解消
会場不足という問題については、今年大きく改善される見込みです。3月に「COMTEC PORTBASE」(名古屋市港区/収容人数最大約2200人)、7月に「IGアリーナ」(名古屋市北区/同最大約1万7000人)が相次いでオープン。
加えて、2019年にオープンした「Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)」(愛知県常滑市/同最大7500人+6000人5ホール)もコロナ禍を経て昨年以降稼働率が右肩上がりで、スキマスイッチのスキマフェスはじめ、DREAMS COME TRUE、米津玄師など大物アーティストの公演を開催。
名古屋飛ばしを吹き飛ばす環境は整いつつあります。

IGアリーナ、Aichi Sky Expoは音楽に限らず多彩なエンターテインメントに対応できるのも大きな魅力です。
「最大1万7000人収容可能で、スポーツ観戦に適したオーバル(楕円)型とコンサート向きの馬蹄型、2つの形状を組み合わせたハイブリッド式の施設です。約30mの天井高、8面体のセンタービジョン、全長220mのリボンビジョンと、多彩な演出も可能。
スポーツ、音楽以外にもファッションショーなど多様な企画、公演に活用してもらいたいと考えています」とIGアリーナ担当者。

こけら落としとなった7月の大相撲名古屋場所はチケットが完売。
8月には八村塁選手によるバスケットボールクリニック「BLACK SAMURAI 2025」、9月にSTING(スティング)のコンサートやボクシング井上尚弥選手の世界タイトルマッチ、10月にバスケットボールのBリーグ開幕、12月にISUグランプリファイナル 国際フィギュアスケート競技大会などと多彩な公演がラインアップされています。

Aichi Sky Expoは愛知県常滑市の中部国際空港島内にある展示場として2019年8月にオープン。1万平方メートルのホール6つを擁します。

「2024年はコンサート需要が急増し、工事休業中の日本ガイシホールを補完した格好です。6つのホールのうち複数をつなげたり、会場外のスペースも使用できるので会場利用の自由度が高い。昨年夏のスキマスイッチによる『スキマフェス』では屋内外を活用し、2日間で約4万5000人を動員しました」とAichi Sky Expo担当者。

Aichi Sky Expoはコンサート以外のイベントでも強みを発揮
Aichi Sky Expoは、コンサート以外の「名古屋飛ばし」を解消する役割も担います。
「産業振興を一番の目的とする施設なので、BtoB(企業対企業)、BtoC(企業対消費者)を問わず大小さまざまな展示会を愛知で開催してもらうことが大きな役割です。
産業展示会はこれまで東京一極集中だったのですが、中部地方初開催や全国初の展示会もここで開催されるようになっています」と担当者。
音楽以外の催しでも、Aichi Sky Expoの会場の広さ、自由度という強みは存分に発揮されています。
自動車版ロボコンともいうべき「学生フォーミュラ日本大会」は昨年の第22回から会場をAichi Sky Expoに移し、同会場で今年4回目を迎えた「名古屋モーターサイクルショー」は東京、大阪会場にはない新型車の試乗ができるといった特色が。
既存の催しが運営のしやすさを理由に会場をここに変更したり、ここだからこそできるプログラムを盛り込むなどして、愛知にこれまでなかったイベントの誘致、開催を実現させているのです。
このほかに、一般の人も参加し楽しめるものでは、旅・観光イベント「ツーリズムEXPOジャパン 2025 愛知・中部北陸」(一般日9月27~28日)、アウトドアや遊びをテーマにした「FIELDSTYLE EXPO 2025」(11月15~16日)などが予定されています。

このようにコンサートに限らず、多様なイベントを開催できる環境が整ってきている名古屋、愛知。「名古屋飛ばし」なんてワードに惑わされず、魅力的な催しを目的に県外の人にも足を運んでもらいたいものです。
愛知県常滑市出身。大学卒業後、名古屋の出版社に勤務し、その後フリーライターとして独立。雑誌や新聞、Webメディアなどに名古屋の情報を発信する。著書は『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)『名古屋の喫茶店 完全版』(リベラル社)など多数。
執筆者:大竹 敏之(名古屋ガイド)
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