動画への写り込みが嫌! トイレが大変なことに……日常生活で実感するオーバーツーリズムの影響

2025.04.06 20:35
提供:All About

【外国人旅行者エピソード #8】さまざまなシーンで遭遇する、外国人旅行者による驚きの行動。そこで、All About編集部ではインバウンドに関する500人アンケートを実施。そのなかから、今回は「オーバーツーリズムの影響」【後編】をお届けします。

All About編集部が実施した「インバウンド常識&非常識」アンケートに寄せられた回答のなかから、今回は日常生活の中で外国人旅行者と共存する不安と、迷惑事例をご紹介。観光庁「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」講師などの実績がある中原健一郎氏が解説します。

外国人旅行者と共存する不安

言葉の壁、ごみ問題、交通ルールなど、日常生活での不安を感じる人が増えています。

「自身の経営する飲食店に多くの外国人が訪れます。やはり、言葉の壁が多いです。現在はQRコードでのオーダー注文なのでお客様も大変そうで、結局直接伺うのですが日本語も英語も通じない時は時間がかかります(40代男性/栃木県)」

「英語はそれなりに話せるものの、東京駅構内で『京葉線のホームはどこか』と聞かれた時はどうしたものかと困り果てた(20代女性/東京都)」

「町中にポイ捨てされたごみが多くなった(30代その他/千葉県)」

「ショッピングモールに行くと必ずトイレでいやなシーンを目にする。トイレットペーパーが流されていなかったり、トイレの床が水浸しだったり(30代女性/沖縄県)」

「日本の交通安全ルールを知らない観光客が多く、レンタカーを運転している外国人にぶつけられそうになった(50代女性/静岡県)」

中原:本当にそうですよね、非常によく分かります。なぜ我々がそう感じてしまうかというと、やはり日本よりゴミが落ちていない国はまずないですし(シンガポールくらい?)、日本ほど交通ルールを丁寧に守って運転している国もほぼないからです。

ちなみに、公共施設に「多機能トイレ」ってありますよね。あのようなものは諸外国にはまずなくて、ほとんどの外国人は「何コレ?」と思って洗浄機能のボタンを押してしまい、トイレの中が噴水になってしまうというわけです。

(観光客に限らず)外国人と「共存する不安」があるのは当然ですので、それを無理にしまい込む必要はないのですが、一朝一夕に我々のやり方を学んでもらうのもまた無理です。

互いが粘り強くすり寄っていくしかないのですが、これは程度問題という側面もあり、今後どのくらい外国人を受け入れて行くのかということを国の将来として真剣に検討する必要もあります。

悩ましい迷惑行為の数々

外国人旅行者に接する機会が増えたことで、迷惑行為に悩まされることも。

「ラーメン屋さんで行列に並んでいる時に、割り込んでくる外国人観光客の方が多くて、順番をきちんと守らないことに困っています(30代女性/茨城県)」

「駅の改札前で立ち止まって地図を確認していたりすることが多く、通行の妨げになることがあります(40代男性/愛知県)」

「夜中の騒音が気になる(40代男性/東京都)」

「観光地以外でも動画を撮っているので自分が写っているんじゃないかと不安になる(30代女性/大阪府)」

「マンションの隣の部屋が民泊になってしまって大声で騒ぐことが増えてきた(30代男性/大阪府)」

「近くにある小さな神社がインスタ映えがするとかで急に外国人に占領されるようになりました。初詣はもちろん、散歩コースにうってつけの場所だったので、ゆっくり周れなくなったのが少し残念でした(60代女性/北海道)」

中原:これも同感です。まず、順番抜かしや通行の妨げのようにその場で解消できる程度のものであれば、その場で改めてもらいましょう。相手には悪気がないことも多いものです。

問題なのは撮影と騒音で、撮影についてはSNSの隆盛で社会が何となく許容してしまっている感覚があり、どれだけ注意を促しても「歩きスマホ」を止めない社会に構図が似ていると思います。

しかしながら飲酒運転や歩きたばこと同様に、どこかのタイミングで世論がひっくり返り、法令等によって“撮影されない権利”の方が大切にされる時が来るような気がしています。その前に、世の中の過剰なインスタ映え的趣向にブレーキがかかる可能性も少なくないと思います。今の状況は異常で、皆むしろ無理をしているように見えますから。

騒音については、民泊というシステムが日本でなじみが薄かったこともあり、これから様々な面での整備が待たれるところです。

現在は世界で日本旅行が言わばブームに近い状態で、心ない観光客も一定数来日します。しかしこの時期はいずれ落ち着く時が来るはずで、その時こそ日本に対して真に好意と敬意を合わせ持つ観光客によって持続的な観光振興がもたらされるようになれば、騒音をはじめとする様々な問題も下火に向かう期待は持てると思います。

もちろん、インバウンドに対して各種マナーや住民環境への配慮を根気よく地道に求めていくことも大切であることは言うまでもありません。

いかがでしたか。外国人旅行者とそこで暮らす人々が互いに気持ちよく共存するために、私たちに何ができるのか考えていきたいですね。

中原健一郎 プロフィール
神奈川県生まれ、早稲田大学政治経済学部卒。次世代の国際派観光人材の育成やサービス産業の業務改善に取組むほか、約120カ国の渡航経験に基づく海外旅行の危機管理やお得情報を発信。中小企業診断士、観光学講師、全国通訳案内士。All About 海外旅行ガイド。

<調査概要>
インバウンド常識&非常識に関するアンケート
調査方法:インターネットアンケート
調査期間:2025年02月21日~03月07日
調査対象:全国10~70代の500人(男性147人、女性344人、回答しない7人、その他2人)
※回答者のコメントは原文ママ


執筆者:中原 健一郎

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