“教育虐待”が奪う子どもの夢。有島のカンニングが問いかけたもの【僕達はまだその星の校則を知らない#6】

“教育虐待”が奪う子どもの夢。有島のカンニングが問いかけたもの【僕達はまだその星の校則を知らない#6】

2025.08.25 11:10

※本コラムは『僕達はまだその星の校則を知らない』第6話までのネタバレを含みます。

■カンニングの影に潜む“教育虐待” 夢は誰のもの?

『僕達はまだその星の校則を知らない』(以下『ぼくほし』)第6話は、有島(栄莉弥)のカンニングを目撃してしまった北原(中野有紗)が、「カンニングを見つけて言えなかったわたしも共犯になるんじゃないか」「でも、わたしが言いつけて有島くんが捕まったりしたらどうしようと思って言えなかった」とスクールロイヤー室に相談に来たところからスタートしました。

そもそも、カンニングはその場で証拠をおさえないかぎり、実証することは極めて困難。しかし、大学入試などで行われた場合は、“大学の入試業務”という重要な業務を妨害する恐れがあったということで、「偽計業務妨害罪」が成立する可能性がある――つまり、れっきとした犯罪行為に発展しかねない重大な問題。たった数点のために、一生を棒に振るリスクを背負うことになるのです。

もちろん、カンニングは絶対にいけないこと。しかし、“たった数点”と思えないほどに追い詰められていたとしたら……。健治は、有島がカンニングしたという事実だけを見るのではなく、その影にある彼の葛藤に目を向けることにしました。すると、浮き出てきたのは有島の父親による“教育虐待”。教育虐待とは、成績が悪いことを怒鳴ったり、心や体が耐えられる限度を超えて勉強を強制したりすることです。

教育虐待を行う親のタチが悪いところは、自分のやっていることは全て愛情であり、虐待だなんてこれっぽっちも思っていないこと。身体的な暴力がある場合は別ですが、ただ口で罵倒されるだけなら、子どもも「親は自分の将来のために言ってくれているんだ」と思い込んでしまう。その結果、「期待に応えられない自分が悪い」と自己肯定感を削られ続け、次第に「自分は生きている価値がない」とすら考えるようになるのです。

有島も、まさにその典型でした。医師である父から医学部進学という“レール”を押し付けられ、そこからはみ出そうものなら「出来損ない」と罵られてしまう。おそらく、有島父は自分が医師として働いていることに、日々“幸い”を感じているのでしょう。そして、その“幸い”が、息子にも当てはまるはずだと信じてやまない。個人的には、有島は勉強よりもバスケの才能の方があるのでは? と思ってしまいます。

“好きこそ物の上手なれ”ということわざがあるように、“好き”という気持ちは学びや上達を自然に加速される力を持っています。星が大好きで、将来はプラネタリアンになりたいと言っている高瀬(のせりん)は、「プラネタリアンは狭き門だけど、好きなことじゃないと勉強する気にならないから」と言っていました。でも、誰かの“好き”を叶えるために自分を犠牲にする努力は、そうはいきません。

有島は、「医学部に進学することが僕の夢なんだよ!」と言っていましたが、彼の夢は医学部に進学することではなく、親の夢を叶えることなんじゃないかと思います。決めつけがいけないというのは、これまでの『ぼくほし』で学んだこと。もちろん、本気でそう思っている可能性もあります。

でも、もしそうなら、夢を語る天文部の仲間たちに対して、「のんきでいいね」「ばっかじゃないの。何だプラネタリアンって。そんなの生きてても何の役にも立たねえじゃん」なんて暴言を吐けないと思うんです。夢を見ることの素晴らしさを知っている人間は、夢を見ている人をバカにすることなんてできないはずだから。

■健治と珠々の恋のはじまり〜?

これまでの回とは違い、有島の教育虐待問題は完全に解決できたわけではありません。でも、ここが『ぼくほし』の誠実な点だなと思いました。健治の上司のかおる(市川美和子)が言うように、学校はあくまでも教育機関であって、福祉機関じゃないからどうしたって深く関わることはできない。健治も、「今夜だけでも幸いがあるように」と祈ることしかできませんでした。

それでも、健治が教壇に立ち、「(テストは)ただ優劣を測るためだけの鋭敏な物差しです。人間をあえて点数で比較し、一等星をありがたがったり、六等星を無視したりする。六等星のなかには、ただ地球から遠いだけで、どんなに輝いているか分からない星もあるのに」と言ってくれた時、有島は少しの間でも分かってくれる人がいるという“幸い”を感じたのではないでしょうか。

さらに、議長団のメンバーとバスケをしている時も、有島は心からの笑顔を見せていたような気がします。この笑顔は、教師もスクールロイヤーも、もちろん親も生み出せなかったもの。「仲間っていいな」と改めて感じた瞬間でした。

「カンニングをしたくなるほど追い詰められる若者が生まれるのも仕方がない」と有島の立場になって寄り添う健治と、「それでも、日本の大多数の若者はカンニングをしません」とバッサリ斬る山田(平岩紙)。この2人のバランスも、『ぼくほし』らしいなと思います。

そして、健治と珠々(堀田真由)の関係性にも変化が! 健治は、珠々に対して恋愛感情はない(もしくは、あっても気づいていない)と思っていましたが、藤村(日向亘)に「珠々ちゃんのこと好きなんでしょ?」と言われた時に否定をしていなかった。さらに、「学校は、しゃくし定規でゾッとするところだと思っていた。

でも、今こうやって何か違うんじゃないかと思えるのは、あなたのおかげかもしれない」と珠々に伝えたということは……? これは、もう恋か! 恋のはじまり〜なのか!

大人たちの恋愛模様も気になるところですが、次回のテーマは“教師と生徒の恋愛”。星空の下で揺れる心模様から、目が離せません!

(菜本かな)

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