

JASTI運用開始 環境対応、人権を重視【ファッションとサステイナビリティー】

日本の繊維・ファッション産業を魅力あるものにするためには、働く環境の整備や安定的な人材確保が重要な課題となっている。経済産業省は繊維産業の監査要求事項・評価基準「JASTI」を策定し、今年4月から運用を開始した。昨年4月に外国人技能実習制度の「特定技能1号」に繊維業が追加されたことを踏まえた施策であり、繊維業が特定技能実習生を受け入れるための四つの追加要件の中の「国際的な人権基準への適合」の「基準」の一つとなる。
JASTIの現状と今後の制度の進展について、経済産業省製造産業局生活製品課課長の髙木重孝氏と、日本繊維産業連盟副会長兼事務総長の富吉賢一氏に聞いた。
経済産業省 生活製品課課長・髙木重孝氏 監査体制拡充し業界挙げて
日本発で先進的にグローバルなビジネス展開を考えると、人権を含むサステイナビリティーへの対応は非常に重要です。世界的なビジネスにおける状況変化のなかで、特に繊維産業における先進的な取り組みが求められています。
経産省が策定した繊維産業の監査要求事項・評価基準「JASTI」が、特定技能の受け入れに係る追加要件の制度のなかで今年4月にスタートしました。
そもそも、JASTI策定の根源には、23年に設置した「繊維産業における責任ある企業行動ルール形成戦略研究会」(ルール形成戦略研究会)の主目的である、「日本発の国際認証制度を目指す」があります。ルール形成戦略研究会では、国際的なビジネス慣行のなかで、人権基準や環境配慮のサステイナビリティーを網羅した国際認証を日本として確立することを最終的な政策目的として掲げているのです。
環境関連も加えて現状のJASTIは人権項目の84項目を設定して監査していますが、将来的にはこれに環境配慮関連を加えて項目を広げ、他の国際認証とも接続可能なものにしていきたいと考えています。日本発の認証制度を通じて海外ビジネスも比較的容易に出来るようになることを念頭において進めていきます。EU(欧州連合)をはじめとする国際状況の変化や、ルール形成戦略研究会の有識者の方々などからのご意見を頂き、更には業界の現場の実態を踏まえながら検討していきます。
現在のJASTIの監査は、カケンテストセンター、日本繊維製品品質技術センター、ケケン試験認証センター、ボーケン品質評価機構の4社で構成する「人権デュー・ディリジェンス推進コンソーシアム」を主力に推進しています。7月からは全国社会保険労務士会連合会に所属する約50人の社労士が監査員として加わることで、監査受け付けのキャパシティーが着実に広がってきます。

また同連合会には〝人権とビジネス〟領域において専門性を持つBHR(ビジネスと人権)推進社労士が、全国で約600人配置されています。今後は彼らをJASTIの監査対応の社労士として研修・養成する計画です。JASTIは、監査前の事前コンサルティングや、監査後のフォローアップ・コンサルも必要です。〝監査慣れ〟していない事業者に対してもスムーズな対応が可能な体制を整える為に、BHR推進社労士のような専門性の高い方々の支援も必要です。
繊維産業において全国で監査を必要としている事業所は1000程度あるとみています。今後更に体制を拡充しながら、経産省としても運用面でのフォローアップを随時行っていきたいと考えています。
世界で例を見ないこの様な業界を挙げての人権に関する取り組みは欧州を含め世界でも例がありません。欧州では一部のラグジュアリーブランドに関わる物作りを担う工場や企業が、そのブランドの要求に従って人権や環境対応を行うことがあります。しかし、フランスやイタリアにおいても国を挙げての繊維産業の全体の取り組みには成り得ていません。JASTIを通じて「日本の製品は、第三者による人権対応の監査を受けている」との評価を世界から受けることで、日本の繊維産業に対する相対的な信頼性を高めることができます。中国やASEAN(東南アジア諸国連合)と差別化できる優位性が生まれてきます。
日本の品質に対する評価は高いものがありますが、これに加えて人権対応が制度的に担保され、1年もしくは2年ごとに業界全体で更新され続けることが、ビジネス面においても大きなメリットを生み出すと確信しています。
日本繊維産業連盟 副会長兼事務総長・富吉賢一氏 国際基準へ発展、活動をより幅広く
広がる可能性も現在の「JASTI」の監査基準は、日本の国内法令にプラスアルファで国際基準を加える内容になっています。JASTIの内容の7、8割が日本の労働基準法(労基法)と労働安全衛生法(労安法)に沿ったものです。完全には国際基準準拠の内容ではありません。ですので、JASTIの審査の初回と2回目ではその基準を変えて、2回目以降の監査ではより改善を求める仕組みとなっています。そうしながら段階的に国際基準に近づけていくようにします。これによって、日本の繊維産業の労働環境が改善されれば、ビジネスと人権において〝使える〟ことが実証される。しかも中小企業を対象に実証できることが大きいのです。
今年と来年が正念場になりますが、監査が一巡することで、道が開けてくると考えています。さらには、外国人を雇用する企業にとって、JASTIの監査要求項目が良いチェックポイントになるので、他産業にも広がる可能性があるとみています。実際に繊維業以外からの問い合わせがすでにきています。
繊維ビジョン具体化JASTIの根本には、永澤剛製造産業局生活製品課長(当時)が、22年に策定した「2030年に向けた繊維産業の展望」(繊維ビジョン)にあります。その繊維ビジョンのなかでサステイナビリティーが大きく位置付けられ、特に繊維産業における人権が重要な課題であるとの認識の下、日本の状況に合った認証制度を作り、〝襟を正して〟運用する必要性が出てきた。それを引き継いだ田上博道生活製品課長(当時)が具体的な施策としてJASTIの枠組みを作り、そして現髙木重孝生活製品課長が具体化したのです。繊維ビジョンの具体化は他にも、繊維産地のサプライチェーン強靭(きょうじん)化や情報開示ガイドライン、環境配慮設計ガイドラインなどに表れています。
中小企業こそ有効JASTIを認証制度にまで引き上げて、多くの企業に使ってもらうためには、環境分野を網羅する必要があります。そして実は、中小企業にとって環境分野への対応はそれほど難しくないのです。

環境項目は、排水・水の使用、大気汚染物質の排出、廃棄物処理、化学物質の管理、エネルギー使用などの項目が挙げられます。しかし、ほとんどの繊維関連企業はこのうちの三つしか関係しない。それは廃棄物処理とエネルギー使用、化学物質管理です。特に最後の化学物質管理については「労働者が扱う化学物質は適正に管理しなければならない」と定める労安法に基づいており、「ビジネスと人権」領域の項目でチェックできます。だから新たに環境配慮対応として加えるのは、実質的には廃棄物処理とエネルギー使用の2点になる。中小企業の脱炭素施策は、電力使用を効率化して、エネルギー消費量を抑えるとか、再生可能エネルギーに切り替えることで十分です。海外のラグジュアリーブランドが、脱炭素に関して工場をチェックするのは再エネ使用の有無であることが多い。一方、廃棄物処理に関しては、縫製業の廃棄物の主なものは裁断くずだが、これを減らすためにはパターン(型紙)を効率的に取ることであり、これは生産性の向上にも直結します。これらの事例のように、環境配慮の領域はほとんどの繊維工場にとって難しくないのです。
JASTIの究極目標を達成するには環境分野をやる必要がある。どこかでキックオフする必要があると考えています。当面の課題である育成就労制度が本格的に立ち上がったら、そこが検討開始のタイミングだと考えています。
ファッションとサステイナビリティートップへ
(繊研新聞本紙25年6月13日付)
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