産後ケア事業×ベビーブランドの取り組み拡大 妊産婦との接点を創出、ニーズ反映
産後ケア事業が広がるなか、ベビーブランドの商品を採用したり、協業したりする施設が増えている。高価格の都市部の産後ケアホテルの取り組みが多く、サービスの差別化やブランド力向上に一役買っている。ベビーブランドにとっても妊産婦とのタッチポイントを創出でき、商品を実際に使ってもらえるPRの場としてのメリットがある。
「出産前からブランドを知ってもらう機会になっている」。オーガニックコットンブランド「プリスティン」を運営するアバンティ(東京)の内田智子取締役が話す。べビー商品の売り上げは全体の1割にも満たないが、助産師の口コミなどで導入する施設が増えている。
魅力知る体験
川崎市の「ヴィタリテハウス」や24年7~11月に都内ホテル客室で試験運用していた産後ケアサービス「ユアリト」などが単肌着やコンビ肌着などを採用。ユアリトでは月齢の進んだ赤ちゃんも受け入れるため、新たに60~70センチのコンビ肌着を企画した。
肌や環境に優しい無染色の物作りへのこだわりは、施設の価値も向上させる。内田取締役は「ベビー肌着から始まり母親のパジャマなどへと採用商品が広がりつつある。疲れた時こそ着たくなるブランド商品の魅力をもっと知ってもらいたい」と話した。
三起商行(大阪府八尾市)の「ミキハウス」は、法人ビジネスとして施設への商品導入や協業に取り組んでいる。高頻度のタンブラー乾燥に耐えられる業務用ベビー肌着などを企画し、施設の要求に合わせて刺繍入れや着丈などデザインを変えている。
23年1月に産後ケアホテル「マームガーデン葉山」(神奈川県横須賀市)で短肌着と長肌着を一体化したベビーウェアを共同開発したのが始まりだ。同施設ではベビー服に関するセミナーも行い、「モノ」だけでなく「コト」の需要も取り込んでいる。
京都、大阪、横浜で施設を運営する「ぶどうの木」の一部では、ウェア以外に絵本や海島綿のタオルなどを置いたコラボルームを企画した。法人営業第2部の山門達矢部長は「施設によってサービスの重点が異なるので柔軟な対応が必要だ。需要は大きく、ビジネスの可能性もかなり広がっている」と手応えを話した。
育児グッズも
ぶどうの木では、ベビー用品の輸入卸・小売りのダッドウェイ(横浜市)も一部でコラボルームを企画した。施設を出て帰宅した後の生活を想像でき、赤ちゃんが少し成長した時にも使えるようなアイテムを揃えた。扱いのある50ブランドの各担当者から選りすぐった育児グッズが並ぶ。
23年春、横浜市内で行われた同じ妊産婦向けイベントに出店していたのがきっかけだ。ぶどうの木横浜ではコラボルームに「エルゴベビー」の抱っこひも2種類のほか絵本、乳幼児用コップなど26商品を置き、貸し出し用のベビーカーなど6商品を提供した。
PRと社会貢献の場としており商品提供は無償で行っている。利用者にはクーポンを配り、約2割が利用している。広報担当の青野真依さんは「育児が楽に、楽しくなる商品を知ってもらいたい。協業の機会が増えたらうれしい」と話した。
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