カスタムオーダーで作る「インフィニティトリップ」 調整を重ねて完成させるランジェリー
3カ月から半年をかけて1枚のブラジャーをカスタムオーダーで作る。日本では珍しいビジネスをスタートしたのが、「インフィニティトリップ」を立ち上げた五十嵐飛鳥さんだ。
(山田太志)
ぴったりの1枚を
ランジェリーショップで働くなかで、サイズが違う下着や安価な商品を売ってきたことに疑問を覚えた。「大切なお金を払ってもらう以上は、きちんとしたものを売りたい」との思いから一念発起。宝塚ランジェリーデザインスクールで物作りの技術を学んだ後、22年秋にインフィニティトリップをデビュー、今年6月には工房とフィッティングサロンを兼ねたアトリエも福岡に開いた。
物作りは飛鳥さん、EC販売など様々な業務は姉の瑞穂さんが主に担当しながら、姉妹二人三脚でビジネスをスタート。愛知県の出身であり、会社の登録地も名古屋にあるが、活動の舞台はアトリエのある福岡が中心になっている。ブランドと社名を兼ねたインフィニティトリップ(無限の旅の意味)のコンセプトは、姉妹の物語から考えたもの。物作りが好きな妹と旅や出会いの好きな姉がおり、姉は窮屈な下着が嫌い。妹は姉のために、世界でたった一つのぴったりとした下着を作るというストーリーだ。
カスタムオーダーのブラジャー・ショーツは、ウェブやサロンで、デザイン・パターンやカラー・素材、資材・下着に求める要素・カラーなどを一から聞くことからスタート。イメージが固まれば試作、微調整を何度も重ね、最終的には福岡のサロンで調整、渡すというのが大きな流れ。顧客によるが、数多くのミーティングとなり、長ければ完成まで半年を要する。アトリエで飛鳥さんが縫うため、もちろん量産はできない。価格はブラジャー1枚約7万円から。
セミオーダーも
「実際にビジネスを始めてみて下着業界の厳しさも痛感している」と飛鳥さん。価格を見て、最初は手を出しにくい顧客もいる。このため、カスタムオーダーだけでなく、セミオーダーの仕組みを整え、悩みや骨格、体形に合わせて選べる既製品の「エクサ」シリーズも揃えている。こうした商品を含めて、来年は期間限定販売も実施する予定だ。
アトリエにあるミシンはまだ2台。縫製技術のレベルをさらに上げていくことも今後の宿題だ。小ロットゆえの資材の手配、既製品の外注工場の確保は今も苦労が伴う。将来の夢を問うと「まだまだ遠い道」と控えめながら、「海外の人にも知ってもらえるようになれば」と話す。
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