《プラグマガジン編集長のLOCAL TRIBE》岡山の「眼帯ヒョウ柄ネコちゃん」 地域や集団になじむデザイン
世界的にも有名な〝I Love New York〟のロゴが配されたTシャツは、今もニューヨークを訪れた人にとって定番の土産品となっており、他の観光地でもこれを模したものをよく目にします。
また、ロック写真家ボブ・グルーエンがジョン・レノンを撮影するときに着用させたことで有名になった〝New York City〟のTシャツデザインも、様々な地名などに置き換えられたパロディが散見されます。同様にネタ元とされることの多いカレッジ表現も古着ブームによって人気が再燃中。これらはブランドロゴとは違った「属性」を表し、単なるスーベニアやグッズだったものが、身に着ける個人を表現する記号となりました。
それは時にシビックプライドを高めたり、アイデンティティーを示すシンボルとしても機能しています。今回は、岡山のセレクトショップ「FVK」でオープン時から愛され続ける意匠、オリジナルアイテムに配される「ネコちゃん」を紹介します。
20年近く愛される
FVKの店主である山田哲郎氏は、岡山の伝説的なセレクトショップ「バランス」に96年のオープン時から携わり、長年にわたって店長を務めていた人物です。DJとしても精力的に活動を続け、現在も毎週のように地元のクラブやミュージックバーに出演。岡山のファッションや音楽シーンを語るうえで欠かせない人だといえます。
バランスが当初あった跡地に、FVKが開業したのは07年。店名は「FAST VERY KEF」の略ですが、これはアメリカのバンド「バッド・ブレインズ」の曲『Fearless Vampire Killers』に掛けた造語とのこと。今回フォーカスするネコちゃんは、開店当初に制作され、Tシャツやバンダナなどのオリジナル商品にプリント、刺繍されています。
往年の顧客から10代のヒップな若者まで、特に岡山のカルチャーシーンに属する人たちになじみ深いこのネコちゃんは、いかに生まれたのか。やぼだとは思いつつ、この機会に初めて成り立ちを尋ねました。
「『不思議の国のアリス』をモチーフにした50年代のファブリックに描かれていた猫を参考に、眼帯とヒョウ柄でアレンジしています。自分の好きなロカビリーではバンド名にキャッツが入っていることが多く、野良というニュアンスもあることからアイコンを猫にしました。エドワードジャケットを着せたデザインもありますが、これはテディ・ボーイズ(イギリスのサブカルチャー)から引用しています」(山田氏)。
岡山のオリジナル
地元ショップのオリジナルものとしては、恐らく岡山で最も長く、世代を超えて売れ続けているFVKのネコちゃん。それは単純な見た目のカッコいい、可愛いだけでなく、デザインにも投影された山田氏のパーソナルがあればこそ。私自身もネコちゃんのTシャツを愛用していますが、実は暗にFVKを知っている人間だと見せたいのかも知れません。
他にもクラブやライブハウス、飲食店など、同じように「着たい」と思えるオリジナルアイテムを作っているお店が岡山にはたくさんあります。岡山にお越しの際は、ぜひ地元のオリジナルをお求めください。
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