アニメ「チ。-地球の運動について―」第3話が放送された

<チ。>衝撃すぎた“知”の継承、感動さえ呼んだ少年の静ひつな死「とても静かだか美しい」

2024.10.13 15:42
アニメ「チ。-地球の運動について―」第3話が放送された

アニメ「チ。-地球の運動について―」(毎週土曜深夜11:45-0:10、NHK総合/Netflix・ABEMAで配信)の第3話「僕は、地動説を信じてます」が10月12日に放送された。本作は魚豊による同名漫画を原作としたアニメ作品。地動説の可能性を信じ、証明することに自らの信念と命を懸けた者たちの物語が描かれていく。第3話ではフベルトの研究を継いだラファウ(CV.坂本真綾)が取った選択に、「まさか…主人公だと思ってたのに」と衝撃が走った。(以降、ネタバレが含まれます)

心臓をバクバクさせる津田健次郎の怪演

前話でフベルトが「燃やしてほしい」と後進の探求者に託した地動説の研究資料。それをラファウは燃やさずに、密かに受け継いでいた。フベルトは不確定要素が多すぎるとして、「おそらく地動説は証明できない」と研究を断つことを決めたが、ラファウが地動説に受けた感動、知への探求はそれをよしとしなかったからだ。

教会が教える天動説に反する異端学説となる地動説。異端審問官の目をかいくぐり、フベルトが「証明するのは神の領域」と諦めた地動説を、ラファウはどうやって証明していくのか。第3話は彼が取る未来への行動に注目していただけに、ことごとく予想を裏切られた結末は衝撃的だった。

自室で悟られないように研究を進めていたラファウだったが、異端審問官ノヴァク(CV.津田健次郎)は彼の改心を疑い、監視を続けていたのだ。ノヴァクはラファウの義父ポトツキ(CV.巻島康一)にも接触し、ラファウが背信の地動説を研究しているという密告を行わせる。このときのノヴァクの語りは心をじわじわ侵食する呪文のようで、「ノヴァクのツダケン(津田健次郎)の声が怖すぎてヒェェ」「威圧されるより怖えー」「これ、心臓がバクバクするやつ」といったコメントが視聴者から漏れる。

捕らえたラファウにノヴァクは恐怖で教会への服従を迫るが、ラファウの心はフベルトが教えてくれた感動、知への探求心、本当の美しい宇宙(そら)に偽りを作ることはできず、行われた裁判で地動説を信じていると宣言する。その末に牢獄で自害するのだった。

主人公の自害、予期せぬまさかの衝撃

都合、わずか3話。放送で言えばたった2回での主人公の退場劇は衝撃だった。特に印象的だったのは、ラファウがノヴァクに語った、「あなた方が相手にしてるのは僕じゃない、異端者でもない。ある種の想像力であり、好奇心であり、畢竟(ひっきょう)、それは知性だ」という言葉。「チ。」は地動説、地球の「地」を表しているだけでなく、「知」と「智」も含むタイトルなのだということが第2話以上に鮮明になった瞬間だ。なお、ラファウが書き残した「Ziemia(地)」というのはポーランド語で、「地球」という単語でもある。

そして、ラファウの死から10年。フベルトからラファウに託されたネックレスはまた別の誰かの手に渡っていた。オリオンのベルトに重ねた隠し場所にあったのは、ラファウが遺した地動説の研究資料。知の継承は絶たれることなく、また次の探求者に渡っていくようだ。

この展開は視聴に様々な感情を与え、放送後のSNSには「12才の子どもの死がこんなにも静謐なの、本当にすごい」「もしかしてどんどん主人公が変わっていくのか??」「一時代での地動説の流布は難しいと思ってたが。好奇心と知性で時代と共に戦っていくって事か。ハア!?スゲェな!?」「ちょっと呆然…人の知への渇望をこんな風に表現できるのか」など様々なコメントが寄せられる。

感動をつづる視聴者のコメント

なお、作品の性質的に、SNSでは長文で感銘をつづる視聴者も多くいる。最後に、それをいくつか抜粋したい。

「真理に触れた者の感動は、これからの生をなげうっても構わない。もしかすると預言者イエスが感得し、刑死した理由もその感動が故でなかったか。その感動は自己でしか感得するものであるし、覚悟の異名なのかもしれない」

「サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』という数学ノンフィクションを思い出す。沢山の数学者の知識を受け継ぎ長い時間を掛けて真理に辿り着く、とても静かだか美しい。ラファルも感動的で美しいものを受け継ぎ次世代へ繋げる継承者の一人なんだろう」

「常識や概念と言ったものは時代によって変わる。前に進む為に変わり続ける勇気こそ人が大事にしなければいけないものなのかも。少なくとも必ず終わる命よりも不変の感動を重んじた人達が居たからこそ今の私達があるのだ。ラファウありがとう」

「震えが止まりません。 『チ』は、『地』でもあり、『知』でもあり、『血』でもあるのかなと思っています。チ。という短いタイトルにたくさんの意味が込められていて、勉強にもなるし人の根幹というか歴史というか今に繋がる人の営みや信念や思いが心に刺さります」

◆文=鈴木康道

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