見えない絆の残酷さ。「パパやらなくていい」の本当の意味【海のはじまり#3】

見えない絆の残酷さ。「パパやらなくていい」の本当の意味【海のはじまり#3】

2024.07.22 11:10

※このコラムは『海のはじまり』3話までのネタバレを含んでいます。

■「水季は夏のことを実はずっと待っていた?」説

ある日突然、6歳になった自分の子ども・海(泉谷星奈)が目の前に現れた夏(目黒蓮)。

もともと自分をうまく出せない性格もあり、まだ出会って間もない中で全力で愛情を表してくれる海に、なぜこんなにも好かれているのか分からず戸惑います。

そんな中で、海のとの時間を設けるたびに、自ずと亡くなった水季(古河琴音)の母である朱音(大竹しのぶ)との交流も増え、知らなかった事実も色々と分かってきます。

水季は親にも相談せずに出産を決めていたこと。そして、夏に妊娠の事実を知らせなかったのは「選べない」からであるということ。

夏の性格なら、産む決意を伝えれば父親になると絶対に言うだろうから、他の選択肢を奪いたくないという、水季の気持ちがあってのことでした。

常に「自分がどうしたいか」を考えて行動することをポリシーにしていた水季にとって、夏が「自ら父親になりたい」と言ってくれることと、「責任をとって父親になる」ことは雲泥の差。

誠実な夏は後者の行動を絶対にとってしまうけれど、もし父親になるのであれば、前者の選択をした上であってほしいから、ひっそりと身を隠したのでしょう。

1話で「夏が好き。夏がお迎えに来るまで今は冬眠してる」という動画の中での水季の言葉がありましたが、いつか子どもの事実を知った上で自ら父親になりたいと夏がお迎えに来てくれることを夢見ていたのかもしれません。あれは四季の中での話でしたが、月岡夏に対する願いに見えてしまいます。

■見えない絆が壁となって弥生に立ちはだかる

夏は海と会う時間を増やそう。と、決意し、少しずつ交流を増やします。

いつも小学生の下校に合わせたかなり早めの時間に会えているので、夏の会社の退勤時間がスーパーホワイトすぎて、視聴者的にもその会社に転職したい欲がむくむく湧いてきます。

夏と弥生(有村架純)と海での、始めての遠出は水季の働いていた図書館。

そこで出会ったのが水季の同僚である津野(池松壮亮)。彼はおそらく密かに水季に恋心を寄せ、水季や海の力になれるよう色々尽力していたものの、恋はかなわなかったよう。

そんな津野が、夏と海が仲良さそうに二人で話す様子を見ている弥生に「疎外感すごいですよね。自分は外野なんだって自覚しますよね」と声をかけます。

子どもの扱いがめちゃくちゃ下手くそなのに、子どもの接し方100点の弥生よりも、なぜか海に好かれる夏。血のつながりや見えない絆の強さをひしひしと感じます。

弥生にとって、もし生きていたら中絶をした実子と同じ年齢である海。母親を失った彼女の母になれたら、と淡い期待を抱いている弥生にとって、血のつながり、実子であるという絆が大きく立ちはだかってきます。

弥生にとっての「疎外感」はまた別の日にも。今まで当然のように3人で会っていたのに、ある日夏が弥生なしで海のところに会いに行くなど、あらゆる場面で感じ始めます。

もし今後、母をやることになったなら、この疎外感の壁は今後も立ちはだかる場面がいくつもあるのでしょう。弥生の母は茨の道であるような示唆に見えてしまいます。

■海のパパが始まり、弥生の疎外感が助長される残酷なシーン

ある日、夏は海が無理しているのではないかということに気がつきます。

遠回しに朱音に聞いても歯切れの悪い返事で、海本人に直接問いかけます。

「水季死んで悲しいでしょ? なんで無理するの? 泣いたりすればいいのに。水季だって元気でいてほしいって思ってると思うけど、元気ぶっても意味ないし。悲しいものは悲しいって吐き出さないと」

すると、今まで満面の笑みを仮面のように崩さなかった海の顔が曇り、ぽろぽろと泣き始めます。

弥生は夏の言葉を静止して、海に寄り添い、「頑張って元気にしてたんだもんね。えらいよ」とハンカチを差し出すのですが、海はそれをスルーして夏に駆け寄り抱きしめます。

一般的な対応は弥生側で、こんな辛い感情を無理に子どもから引き出す必要はないのではと感じてしまいます。

でも、母である水季をよく知る夏であり、父だからこそ分かる、「海の本心」や、「こういう時にどうしたら苦しさが軽減されるのか」の正解が夏の対応だったのでしょう。

過ごした時間はほぼ同じなのに、優しい言葉で包んだ弥生ではなく、辛い現実を突きつけた夏を選んだ海。

ここでもまた、弥生が大きな疎外感を感じ、外野であることを意識するのです。

そして2話まで海を抱きしめられなかった夏ですが、今回はきちんと抱きしめ返していました。少しずつ、海のパパが始まってきた瞬間が見えるシーンでした。

■「パパやらなくていい」の本当の意味

海に「パパいつ始まるのって聞いてくれたけど、パパになってほしいってこと?」と尋ねた夏。それに対して「ううん。パパやらなくていいよ。でもいなくならないで」と返します。

もし海が「パパをやってほしい」と答えたら、夏の意思ではなく、責任感から夏は「パパになる」と答えることを見越しての断りだったのでしょうか。本当はパパになってほしいけれど、水季と同様に、パパになる時は自分の意思でなってほしいと思っての、あえての「ううん」だったのかもしれません。

また、「いなくならないで」と言うフレーズも大きな意味がありそうです。

水季が亡くなったから誰かがいなくなるのを恐れている、というわけではなく、水季が生きていた頃から海は水季がいなくなることを恐れている描写がありました。何かここにも過去のトラウマがあるのでしょうか?

「水季の代わりにはなれないけど、一緒にいれる」と約束した夏は海の写真を撮るために「そこにいてね」と声をかけます。

それは前回、海が水季の遺影の前で夏にかけたのと同じ言葉。「そこにいてね」には、夏からの前回の言葉のお返しと、「これから一緒にいようね」の意味が込められているようにも感じられました。夏の中で「海がはじまった」瞬間なのでしょう。

■さまざまな母の形が描かれている

いろんな母の形と生き方が描かれているこのドラマ。シングルマザーの水季、中絶をした弥生、長い不妊治療の末、念願の子どもを授かった朱音、ワーママとして働く弥生の同僚、ステップファミリーの月岡家。血のつながりを求めた朱音と、血のつながりがなくとも母として生きたいと考える弥生。血のつながりはなくても、絆の固い月岡家。

疎外感といったワードも出ていましたが、今後どのような形で彼らが描かれていくのでしょうか。

■ランドセルの色の選び方も水季式

海のランドセルは自分で選んだと言っていました。ランドセルは子どもが選ぶもの、とはいえ、奇抜な色は避けたり、親好みの色に誘導したりする、といったこともランドセル選びの親あるある。これも水季は余計な口出しや誘導をせず、海の意思で好きな色を選ばせたのでしょう。

その色はブルー。自分の名前でもあり、水季の大好きな海の色である深い青を選んだのでしょうか。

海が始まった夏と、パパが少しだけ始まった海の関係がどう変わっていくのか。そして弥生は……。次回も楽しみに待ちましょう。

(やまとなでし子)

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