

<【推しの子】>悪いのは誰なのか? 破綻した原作者と脚本家の関係、創作センスまで否定された脚本家の姿が痛ましすぎる

アニメ「【推しの子】」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほかにて放送/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Leminoほか)の第十三話「伝言ゲーム」が7月10日に放送された。原作者・鮫島アビ子(CV.佐倉綾音)が突き付けた脚本全否定で凍り付く舞台「東京ブレイド」の稽古現場。アビ子の激しい怒りを正面から受け、創作者としても否定された脚本家・GOA(CV.小野大輔)の痛ましい姿がつらすぎるエピソードとなった。(以降、ネタバレが含まれます)
アビ子のすさまじい怒りを受け、傷心のGOA
漫画の実写化やアニメの2.5次元化など、原作もののメディアミックス化は非常に難しい。実際にもあることだが、良い化学反応を起こして絶賛される仕上がりになる場合もあれば、原作ファンから酷評される場合もある。さらに制作の過程では原作サイドと制作サイドでのトラブルも起こり得る。今回の「東京ブレイド」は残念ながら後者に当てはまり、脚本に対するアビ子の怒りはすさまじいものだった。
時間は巻き戻って、舞台「東京ブレイド」顔合わせ当日。役者たちが稽古入りする一方で、アビ子は先輩漫画家の吉祥寺頼子(CV.伊藤静)に、舞台化に対しての相談を行っていた。変わり者が多い漫画家の中でもアビ子は特にクセが強い人物。「揉めないといいな」と思っていた頼子だったが、不安は的中。付き添った稽古場見学の場でアビ子は脚本の全修正を求め、怒りをぶちまけはじめる。
じかに見たアクア(CV.大塚剛央)ら役者たちの芝居への取り組みがすばらしかっただけに、非難の矛先はダメな脚本を書いたGOAに向けられる。展開を変えるのはまだしも、キャラクターを変えるのは無礼だと。「うちの子たちはこんなに馬鹿じゃないんですけど!」とアビ子が声を荒げたのももっともで、キャラクター性が違ったら別の作品を見ているのも同じだ。原作者にとってキャラクターは我が子同然で、それがひどい改変を受けたらたまったものではないだろう。
しかし、頼子が独白していたように、自分が担当する作品を悪くしようなんていうクリエイターは存在しない。特に今回のGOAに限っては、原作は本誌で1話から読んでいるガチファン。「他の仕事をずらしてまで受けた仕事」「いい舞台になるように魂を込めて書いたのに」「ちくしょう…」と悲しさと悔しさを露わにしており、並々ならぬ熱意をもって臨んだ仕事だったのは容易に想像できる。それを原作者から面と向かって却下され、創作者としてのセンスまで否定されてしまったのだ。
よく見ていれば目に止まるところだが、アビ子が「脚本、全部直してください」と告げたとき、カメラはGOAに切り替わり、愕然…どころではない絶望感に突き落とされた表情が映されている。これだけでもショックの大きさは十分に伝わり、まくしたてるアビ子の非難を受けるその顔からは、同時にやるせない心中も見て取れた。
「リライティングは地獄の創作」GOAの苦悩をアビ子は知らず
ちょっとチャラい風に見えるが、GOAは決していい加減であったり、高慢な脚本家ではない。むしろ第一話で「脚本家は汚れ役」と発言していたように、脚本家の立場を客観的に理解している人物だ。今話でも、脚本家は世間で思われているような地位にいないこと。プロデューサーや原作者らの多大な注文を一身に受け、作品評価が悪ければファンからは戦犯扱い、成功すれば全て原作の手柄になることを寂しそうに打ち明けている。その上で、「リライティングは地獄の創作」だとも。
ただ、そんなGOAの苦悩、葛藤はアビ子には伝わっていない。なぜなら、そこには“業界の慣習”として、幾人もの“仲介者”という壁が存在するからだ。今回の「東京ブレイド」では「原作者→サブ担当編集→担当編集→ライツ→制作orプロデューサー→脚本家マネージャー→脚本家」という流れになっており、それぞれが自分の立場と物差しで原作者の意見を翻訳し、次に伝えていく。
きつい言葉をマイルドにしたり、端折ったり。クッションの役割でもあるが、これではGOAにたどり着いたときにはアビ子の意図が歪んでいるのは明らかだ。奇しくも「もっとセリフ少ない方がエモいと思うんだけど…。原作者が言うなら仕方ない」と指示内容に疑問を抱くGOAこそが、ねじ曲がった指示の向こうにあるアビ子の意図を一番理解できる感性を持っていたという皮肉な状況になっていた。結果、繰り返しの修正指示が反映されないことにアビ子の怒りは頂点に達し、不運にもアビ子の不興を買ったGOAは降ろされることになってしまう。
良い舞台を作り上げたいという思いは共通なのに、仲介者によるミスコミュニケーションから破綻してしまった原作者と脚本家の関係。アビ子は自分で書き直すと宣言したが、前話でGOAが述べていたように、漫画と舞台では演出の文法が全く異なる。舞台本番まであと20日。アビ子はそこを理解した上で、自分の欲求だけでなく、役者やファンが納得できる脚本を書き上げることができるのか。また、傷心のGOAはこのままフェードアウトしてしまうのか。
放送後には、「GOAさんとアビ子先生のどっちの気持ちも伝わってきてキツイ」「GOAさんが気の毒すぎる」「アビ子先生が大暴れしてたけどその一方でGOAさんの事情をお出しされる視聴者としてはやりきれないというか、誰も悪くねぇ……!と思ってしまう」「本誌から読んでる程大好きな作品で、心血注いだ仕事を白紙に戻されるとか心折れるな」といった視聴者からの感想が多数寄せられている。
■文/鈴木康道
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