

<メイドインアビス>残酷すぎる展開、全ては予言者ワズキャンの思惑…?イルミューイの変貌を考察

アニメ「メイドインアビス 烈日の黄金郷」(毎週水曜日深夜1:05~、TOKYO MXほか)の第8話「願いの形」が8月24日に放送された。「メイドインアビス」は「WEBコミックガンマ」(竹書房)で連載中の、つくしあきひと原作によるダークファンタジーアドベンチャー。人類最後の秘境と呼ばれる大穴アビスに、偉大な探窟家だった母を追う探窟家見習いの少女リコと、謎の少年型ロボット・レグ、アビスの中で出会った“成れ果て”のナナチが挑む物語だ。(以下、ネタバレが含まれます)
残酷すぎた“香ばしいもの”の正体
前回からヴエコが語り出した成れ果て村の成り立ち。それは黄金郷を求めたガンジャ隊の悲劇と絶望の回想だった。
ワズキャンから与えられた“香ばしいもの”のおかげで水もどきの症状から回復することができたヴエコ。高熱のまどろみの中、ただただ欲するままに口にしてしまったが、あれは一体なんだったのか。同じく発症していたベラフも“香ばしいもの”のおかげで回復していたが、彼はそれを食べてしまったことをひどく後悔し、精神を壊してしまっていた。
その答えはすぐにワズキャンによって明かされた。相変わらず飄々とした様子でいる彼の後に続きヴエコが見たものは、すでに人の形も言葉も失い、それでも一日と生きられない赤子を産み続け、愛おしそうに抱きしめるイルミューイの姿だった。産まれたばかりの人ではない赤子を取り上げたワズキャンは、「思うに鮮度なんじゃないのかな」とヴエコに話しかけながら、包丁を肉に当てる。これが気高いベラフがどうしても抗えず、そのために精神を壊してしまった原因だったのだ。
“度し難い“と表現されることが多い本作だが、今回は過去回を振り返っても指折りの闇深い描写であったのは間違いないだろう。ネット上のコメントを見るとこのシーンには胸を痛めた人も多くいたようだ。ただし、だからと言って本作を残酷なブラック作品と切ることはできず、痛みを伴うシーンでは、常にその中から掬われてくる人の精神性も描かれている。赤子を見殺しにした懺悔を言葉にしながら、イルミューイと共に命を落とそうとしたヴエコの姿。高潔ゆえに苦しむベラフの姿は、そこに心がないとは決して言えないシーンであったと思うところだ。
神がかりの予言者、ワズキャンが視ていたものは?
日に日に肥大化していくイルミューイから、ある日ヴエコは割れたはずの欲望の揺籃を見つけだす。それはワズキャンがイルミューイに渡した2つ目の卵だった。欲望の揺籃は願いを叶える卵であるという。しかし、今のこの状態は本当にイルミューイが願ったことなのか。ワズキャンが返した穏やかな表情は、笑みというには恐ろし過ぎるものだった。
神がかりの予言者ワズキャンには一体どこまでが視えていたのか。キャンプから動き出したイルミューイの行動を「彼女の本当の願い」と言い、ベラフには「君が必要だ」と、まるでこの事態を予見していたかのような口ぶりで諭す。その言葉の意味を証明するように、イルミューイに自身を食わせたベラフは尊厳を取り戻したかのように、神々しい白龍のような姿に生まれ変わる。ベラフの生まれ変わりは地獄の日々からの解放に見えたのか、ワズキャンの促しに押され、生き残っていたガンジャ隊の面々も進んで身を捧げ、新しい姿を手に入れていく。
しかし、ヴエコだけは違った。彼女にはこれが、イルミューイが望んだことだとはとても思えなかったのだ。崖に立ったヴエコにワズキャンはそれまでの余裕を消し、君がいなくなったらイルミューイの願いは叶わなくなってしまうと諭すように投げ掛ける。自分が死んだらイルミューイはきっと悲しんで、弱って、死んでしまうだろうと、ヴエコも答えを返す。そして、「それで?私が死んだら予言が外れてしまうの?」と。
さっと、ワズキャンの顔色が変わる。「こめんね、イルミューイ。我がままで…。私だけの暖かい闇…誰にも渡さない…」。断崖に身を投げたヴエコの懺悔の言葉は痛いほどに暖かく、愛を感じさせるものだった。
イルミューイのただ1つの願いの子、ファプタ
イルミューイの変貌には様々なことが推測できる。赤子を産むようになったのは、1つ目の揺籃で叶えた願いだったのだろう。しかし、赤子が水もどきの回復からの薬となり、肥大化していったのは、ヴエコが疑ったように本当にイルミューイ自身の望みだったのか。ガンジャ隊が生き残るために――イルミューイにとってはヴエコとずっと一緒にいるために、2つ目の揺籃を使ってワズキャンが刷り込んだ願いだったのではないか。明確なことは原作にも書かれていないため真実を知ることはできないが、ワズキャンの思惑が大きく働いていることは間違いないだろう。ワズキャンはヴエコが持っていた星の羅針盤を見たときに、なぜか望郷を感じたと言い、もしかすると、彼女をガンジャ隊に引き入れた時点からこの結末が視えていたのかもしれない。
身を投げたヴエコを寸でのところで救い、彼の予言は成就されたのか。イルミューイは成れ果て村の礎となり、アビスの呪い、原生生物の襲撃から体内の元人間たちを守っている。冒険を諦め、人間であることを捨てたガンジャ隊は、皮肉にもワズキャンが宣言したようにここで黄金郷の最初の住人になり、今も暮らし続けている。そして、長い間イルミューイの体の奥深くに捕らわれていたヴエコは、冒険という憧れに挑み続けるリコのおかげで解放されることになる。
そんなヴエコの衝撃の告白を受け止めたリコは、2つ目の揺籃から産まれたというファプタについて尋ねる。ヴエコが答えるファプタの目的は、母親の解放、この村を滅ぼすことだった。ワズキャンも視えなかったというファプタの誕生は、イルミューイが誰にも悟られぬよう、ひた隠しに育てていたただ1つの願い、最後の子供。ヴエコは産まれたファプタの叫びから、イルミューイが何も許してはいなかったことを悟っていたのだ。
「メイドインアビス」の物語にある謎と余白
「メイドインアビス」の物語にはいくつもの余白があり、いまだ明かされていない謎も多くある。例えば、2000年周期の地層から発掘されるお祈りガイコツと、ボンドルドが口にしていた「次の2000年」という言葉。また、アビスで産まれた者はアビスの中心に向かおうとする行動。呪い除けの籠で生き返った赤子のリコはアビスの中心に這っていったというように、イルミューイが大穴の中心にまで移動したのも、ファプタをそこで産むためだったのかもしれない。
なお今回のエピソードで言えば、イルミューイがなぜ膜を超えて村に入れないのか、ワズキャンが使った3つ目の欲望の揺籃はどうなったのかなどについて、原作者つくしあきひとが自身のTwitterで答えやヒントを送っている。気になる方は一度目を通してみるのもいいだろう。
次回、第9話は「帰還」。ナナチを取り戻したいというレグの頼みに、ファプタは耳と腕を引きちぎり、差し出していた。村に帰還するのはレグなのか、それとも…?放送後のTwitterには、「話は重いしつくし卿の性癖盛々でイルミューイもあんな目に……だからこそ面白いし引き込まれるのが凄い」「安直な死じゃなくて生を描いてるからいいんだよな」「どちらの意味にも取れる帰還。姫はヴエコをみたときにどうなるのか?」など、次週に向けて様々な感想が寄せられている。
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