

もう古い。「自虐的な発言」をやめるべき理由
連載 #女子を困らせる人、今回のテーマは「自虐する人」。
自虐について、拙者の思うところを書きたい。
初めに断っておくが、自虐が悪いわけではない。過去の私も自虐していたが、それはサバイバルの手段だった。
「イジる人」の記事に書いたが、私は女子校から共学の大学に進んだ時、イジりの洗礼を受けた。男子から「ブス」「デブ」「モテないだろ(笑)」的なイジりをされて、ものすごく傷ついた。
当時の私は「ひょうきんなブスでーす!」みたいに自虐して、笑いで返していた。それは「ブスだと自覚しているから、これ以上殴らないで」という自己防衛だった。
でも自虐すればするほど「こいつには何言ってもオッケー」とナメられて、扱いがひどくなった。それで自尊心をゴリゴリに削られた結果、過食嘔吐するようになった。
イジりの厄介な点は、イジメやハラスメントを「笑い」というオブラートで隠してしまうことだ。
日本のバラエティー番組では「見た目イジりや非モテイジりに対して自虐で返す」という古典的な型がある。
それを見た子どもたちは「人をイジると笑いが取れる」「イジられたら自虐で返すのが正解」と刷り込まれるだろう。
それはイジメやハラスメントを容認・助長することにつながってしまう。
最近は若手芸人が「そういうのは古すぎて笑えない」と意見したり、女性芸人が「(自分をブスと言うような)自虐ネタはやめることにした」と発言したりしている。
私も過去にエッセイなどで自虐ネタを書いていたが、今は書かないようにしている。
私は2016年から「アルテイシアの熟女入門」という連載をしており、それをまとめた『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』という文庫本を出した。
コラムの中では加齢ネタを書いているが、あくまで「JJ(熟女)あるあるネタ」であって、自分を卑下するような書き方はしないようにしている。
私も含めて、みんなアップデートの途中なのだ。「あれは良くなかったな」と気付いたら、その時点でやめればいい。
過去は変えられないけど、未来の行動は変えられるのだから。
■自虐する日本人女性が多い理由
自虐がクセになっている女子も多いと思う。
そもそも日本には己を下げることを美徳とする、謙遜(けんそん)文化がある。また、日本は「堂々と自信のある女性=生意気」と叩かれる、男尊女卑の価値観が根強い国だからじゃないか。
欧米に住んでいる、または住んだことのある日本人女性陣にヒアリングしたところ、以下の意見が寄せられた。
・欧米に移住した当初、ついクセで自虐してしまったら、周りは一様に困った顔をしていた。「なぜそんなに卑下するの?」「なぜそんなに自信がないの?」「もっと堂々と振る舞って」と注意されることもあった。親しい友人からは「そんなこと言わないで、私が悲しい」と真剣に言われた。
・欧米には「堂々と自信のある女性=生意気」という価値観はなく、むしろ堂々と自信を持って振る舞うことが評価される。日本を出てみて、自分は日本社会で女性に期待される振る舞いをしていたことに気付いた。
これらの意見に涙目で膝パーカッションする我である。
私の母校は自主自立系のリベラルな女子校で、「自分の意見をハッキリ言おう」という教育方針だった。そのまま共学の大学に進んだら、男子からイジりという名のイジメを受けた。
彼らの中には「女のくせに堂々と意見を言うな」「生意気な女をこらしめてやる」という思いがあったんじゃないか。
上記の欧米に移住した女性陣からはこんなエピソードも寄せられた。
・人前で夫のことを褒めたら、日本人の男性から「さすがガイジン(笑)」と揶揄されて、外国かぶれのように扱われた。
・日本では「愚妻」などパートナーを下げる文化があるが、欧米でそんなことを言うと人間性を疑われる。夫婦げんかをして愚痴を言うことはあっても、パートナーをおとしめるような発言は聞いたことないし、事あるごとに「マイスペシャルワイフ」などとたたえるのがデフォルトだ。
・体にフィットした服を着ていたら、日本人の男性から「めっちゃアピるやん(笑)」とイジられた。「私の体は完璧ではないけど、自分では気に入っている」と説明しても「自画自賛、乙」みたいな反応をされた。
まさにジェンダーギャップ指数121位のヘルジャパン、ブオオー!(ほら貝)
「女性差別の強い国ほど、女性の自己肯定感が低い」という説もよく聞く。女性が自己肯定することが許せない、そんな国で生き延びるために自虐がクセになるのは無理もない。
無理もないけど、次世代の女の子たちのために、女性が自信を持って生きられる社会に変えていきたい。
昨今は渡辺直美先輩やバービー先輩のような女性芸人たちが、そうした発信をしてくれている(先輩と呼ぶのはメッチャ尊敬しているから)。
パイセンたちが切り拓く未来に続きたい、とイマジナリーほら貝を吹き鳴らす日々である。
■自虐されて困った時の対処法
自虐が人を困らせるケースがあるのは事実だ。読者の女性たちから、こんなエピソードも寄せられた。かつて自虐していた民として、以下は自戒を込めて書きたい。
・仲の良い友達が「私なんて○○だから」と自虐するのを聞く度、悲しい気分になる。
・「ブス」「デブ」「モテない」みたいな自虐をされると反応に困るし、ネガティブすぎて正直ウザい。
・「私なんてもうおばさんだし……」と自虐されると「おばさんじゃないですよ!」とフォローするのが面倒臭い。
・「私なんてもう30代だし……肌も老化してきたし……」と自虐されると、年を取るのが怖くなるし、下の世代に呪いをかけないでほしい。
続いて、こういった自虐をされて困った時の対処法も紹介しよう。
◇真摯に伝える
相手が親しい友人であれば「私はあなたを好きなのに、あなたが自分を卑下するのは悲しい」「あなたはすてきな人なんだから、自信を持ってほしい」と真摯に伝えるといいと思う。
その上で「自虐すると自尊心が下がるし、『こいつは見下してもオッケー』とナメられるし、厄介な人を引き寄せてしまうよ」と意見してあげるといいだろう。
◇修造返し
特に親しくない相手であれば「もっと自信持って! スマーイル!」と修造返しをキメよう。
ポジティブすぎてウザいキャラになれば、「この人の前で自虐はやめよう」と相手は控えるはずだ。
◇スピ返し
あまり関わりたくない相手であれば「言霊って知ってる? あなたの周りに漆黒のオーラが見える……」とスピ返しをキメよう。カラスやフクロウを肩に乗せると、魔女感が出てチャーミング。
が、相手もスピ系の人だった場合「私もオーラの研究にハマってるの!」と前のめりなリアクションをされて、逆に困るかもしれない。
そういう時は「これ邪気を払うんだって」とそのへんの石や塩を渡して、さっと逃げよう。
◇足クサ返し
「私なんか……」と自虐されたら「私なんかめっちゃ足クサいよ! カメムシが即死するレベルだよ! よかったら嗅いでみる?」と、足クサ返しをしよう。
いそいそと靴下を脱げば「いや結構です」と相手が逃げていくはずだ。
■「おばさん」をポジティブな言葉にするために
こちらに自虐するつもりはなくても、自虐と受け取られる場合もある。
例えば「おばさんだから」とつい言ってしまう気持ちは、このJJにはよく分かる。
同世代の友人と集まると「3分前のことを忘れる」「何もないところで転ぶ」「夕方になると目が見えない」とJJあるあるで盛り上がり、「おばさんだからね!」とキャッキャウフフするのが楽しい。
が、年下の相手に向かって「おばさんだからね!」と言うと「フォローするべきかな?」と気を使わせてしまうもの。
なので私は「JJ力を見せつけた」という言い方をしている。すると若いガールズも「よっ、JJムーブ!」と返してくれて、明るい雰囲気になる。
関西人の我が思うに、関西では「おばちゃん」に悪いイメージが少ないんじゃないか。
子どもの頃は、中年女性のことを、親しみを込めて「おばちゃん」と呼んでいた。
また、ヒョウ柄パンチパーマの「大阪のおばちゃん」は人類最強の部族っぽくて憧れるし、アベンジャーズの一員になってほしい。
ちなみに、マンガ『じゃりン子チエ』のおバァはんは「正拳イスぶち抜き」などの必殺技を持つ、ヤクザもぶちのめす宇宙最強のおばあさんだ。私もあんな強いRJ(老女)になりたい。
そんな拙者としては、「おばさん」「おばちゃん」がポジティブな言葉になるとうれしい。
■褒められた時のリアクション
褒められた時に反応に困って、つい自虐してしまう。そんな自虐の民もいるんじゃないか。
例えば「きれいですね」「若く見えますね」と言われた時に「ありがとう、と返すべき? でもお世辞なのに本気にしてると思われたらイヤだし、どっどどどどうどどうしよう?」と又三郎になった挙句「もう、おばさんをからかわないで!」という返しをしてしまったりとか。
そんな場合、私は「わーい」「ヒャッハー」などテキトーに返すか、「恐悦至極に存じます」と武士っぽく返す。
相手は特に深い意味があって言ってるわけじゃないので、さらっと受け止めて「ところで推しがね」と、もっと大事な話をすればいい。
ちなみに関西人が「その服、すてきだね」と褒められた時に「これ1,000円やってん!」と食い気味に返すのは、お得な買い物ができた喜びの表現である。
■「自虐をしなくてもいい時代」を目指して
17年前に書籍『負け犬の遠吠え』が出版されて、ベストセラーになった。
これは「独身女性は自虐した方が生きやすい」という趣旨の本だったが、独身女性が「負け犬」と揶揄(やゆ)されて、既婚女性と未婚女性の分断をあおる結果になった。
何より、下の世代に「独身女性は自虐するべき」と呪いをかけたと思う。
そこからようやく「イジりや自虐はもう古い」という風潮になってきた。令和は女性が自分をおとしめなくていい、堂々と自信を持って生きられる時代になってほしい。
そのためにヒョウ柄のコスチュームをまとい、ほら貝片手に大暴れしたいと思う。
(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)
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