“ブチギレ女優”伊勢川乃亜『NOBROCK TV』での迫真演技の真相「女よりちっせえ声だな」も実体験から

――『NOBROCK TV』でのブチギレ演技、ものすごい迫力で毎回大きな話題になっています。普段から怒りっぽいタイプなんですか？とよく聞かれるんじゃないですか。

伊勢川　めちゃくちゃ聞かれますね（笑）。でも、プライベートで怒ることは本当にないです。最後に怒った記憶も思い出せないくらいで……。むしろ怒るより諭す方が多いかもしれません。

――では、あのキレキレの演技はどこから生まれてくるんですか？

伊勢川　あれは、これまで私が出会ってきた先輩や演出家の方々の姿を参考にしているんです。「私よりでけえ声出せよ」とか「このレッスン場の外に聞こえるぐらい声出せ」「そこの子役より声出てねえぞ」などと過去に言われたことがあり、実はこれをドッキリのシチュエーションに合わせて「女よりちっせえ声だな」みたいに変換して使っています（笑）。

――実体験がベースになっているんですね。

伊勢川　私が俳優を始めた10年ちょっと前は、まだギリギリ演出家さんが竹刀を持っていた時代だったんですよね。

――竹刀！

伊勢川　昔の漫画に出てくる体育の先生みたいに本当に持っていたんです。それでバンバン床を叩いている時の記憶が強烈に残っていてすごく怖かったんですよね。実は私のなかでイメージモデルが3人ぐらいいるんですけど、その方々を“ガッチャンコ”させたのが『NOBROCK TV』の私です。いまでは、「当時の先生たち、ありがとうございます」という感じですね（笑）。

――ということは、ほとんどアドリブで……？

伊勢川　「相手が大柄な態度を取ってくるので、それ以上にキレてください」くらいしか言われていないんです。逆ドッキリなので、相手が何をしてくるか分からないですし、そのときどきで対応していく感じですね。

でも、最初の撮影（森脇梨々夏さんの回）の帰り道は、「あんな可愛い子に羽交い締めみたいなことまでして……絶対に大炎上する」って本気で落ち込みました。2回目のメインの回では「ああ、全然できなかった」と、悔しくて帰りの電車で泣きながら帰った思い出があります。

――相当悔しかったんですね。

伊勢川　演技の仕事だと手応えが分かるんですけど、バラエティは完全に初めてだったので、何が正解か分からなくて。毎回、公開された映像は何度も見返しています。初登場の時、相手に「柔道やってみろよ」って振ったのに、相手の動きがどう見てもボクシングだったとか。「あー、そこツッコミたかった！」って後から気づいてすごく悔しかったです。

――ストイックですね。実際、撮影が終わった後の現場の空気はどんな感じですか？

伊勢川　仕掛け人の「ザ・マミィ」の酒井さんは、本当に怯えちゃってたみたいで、カットがかかった後もずっと私と距離が遠いんです（笑）。写真を撮るときも、スタッフさんに「もっと近づいてください」って言われるくらい離れるから、「本当に怒らないんで、大丈夫です」って言っても、「ほんとに？」って疑われ続けてました。

――演技の参考にするため、普段からどんなことを意識していますか？

伊勢川　そうですね。今後、キレる機会がきっと増えるだろうなと思って、日頃レッスンを見てくださっている監督に「怒らなそうな女性がキレる作品を教えて下さい」っておすすめされた映画を観て学ぶことが増えました。あと、これはちょっと自分でも変態だなって思うんですけど、街中で怒っている人、例えばクレーマーさんとか、電車で謎に怒ってる人とかを見かけると、最近は「やった！」って嬉しくなっちゃうんです。

――どういうことですか（笑）。

伊勢川　過去にコンビニで働いているときに、お客様からパウチの商品を「温めて」と言われたことがあったんです。ただ、お店の業務用レンジのワット数が高く、温めると危険な可能性があったので「申し訳ありません」とお断りしたんですね。そしたら「温められないもの置くんじゃねえ！」って怒られたことがあります。「なるほど、その切り口か」って思っちゃいました（笑）。「そんな理不尽なキレ方があるのか」「いい引き出し、見つけた！」と、つい分析しちゃうんですよね。接客業のアルバイトもしていたので、毎日が勉強になります。

――仮に、ご自身が理不尽なクレームを言われたとしたらどう怒りますか？

伊勢川　全く怒らないんです。例えばお店のバックヤードとか裏で「何だよあのお客さん！」って言う人がいるじゃないですか。私はそれが逆にできないんです。接客中は「役に入っている」感覚に近いから、どんなクレームを言われても「本当に申し訳ありません」って心から思えるし、裏に戻っても「あれは私のせいだ」って。そう思うようにしないと、顔に出ちゃう気がしてだめなんです。だから裏で文句を言う時があったとしたら、「あのお客さん、不思議な人でしたね」くらいに留めてます。「嫌い」って言っちゃうと、もうダメなんです、私の中で。

▽伊勢川乃亜（いせかわ・のあ）1998年10月12日生まれ、愛知県出身。O型、てんびん座。『NOBROCK TV』で見せた迫真のブチギレ演技が話題を集める注目の若手女優。中学生の頃から俳優を志し、大学では教育学部で子どもたちと向き合いながら演技の礎を築く。プライベートでは“黄色”がテーマカラー。小物類はすべて黄色で統一し、好きな色のためにスマホをAndroidからiPhoneに変えたほどの筋金入り。