撮影/佐賀章広

お見送り芸人しんいち、クズ芸人への覚悟「徹底的に嫌われる悪魔に生まれ変わろう」

2025.10.31 06:03
提供:ENTAME next

『R-1グランプリ2022』王者の芸人・お見送り芸人しんいちが、初の著書『嫌われ者って金になる!』を上梓した。バラエティやドッキリ企画で“クズ芸人”と呼ばれる立ち回りが炎上を呼ぶ中、それを武器に仕事へと繋げていく処世術を明かしている。本稿では、家庭で育まれたポジティブさ、サッカー部での立ち回り、芸人デビュー以降の苦労と覚悟など、彼が“嫌われ者”として生き抜くために選んできたこれまでの道のりをひもとく(前後編の後編)。

大阪の松竹芸能で芸人の道を志すも、事務所の大先輩、森脇健児の元で走るだけの生活が続き、2011年に退所を決意したお見送り芸人しんいち。その後、勇んで上京を果たすが、早々に試練が訪れる。当時の相方が芸人を引退、一人残されてしまったのだ。まさかのピンでの活動に踏み切ることはできず、しんいちは芸人としての歩みを約2年半に渡り止めてしまう。

休止を経て、2013年にグレープカンパニーに所属。ピン芸人としてのキャリアをスタートさせることに。

「事務所ライブにはランクがあるのですが、僕は一番下のクラス。しかもそこで10ヶ月連続の最下位になるほどウケなかった。オーディションも通らない、お客さんの評判も良くない。事務所内でも『アイツ、必要?』の声が起こったほど最悪の状況にいました(苦笑)」

先輩芸人のライブの手伝いなどで食いつなぐも、芸人としてはまだ芽が出ない日々。しかも周囲からはウケないからと白い目で見られる始末。そうした苦境の中、大先輩のサンドウィッチマン・富澤たけしの言葉が転機をもたらす。

「サンドさんのライブの手伝いをしていたとき、コントの小道具にあったギターを休憩中に弾いていたら、『お前、ギター弾けるならそれ使ってネタやってみろよ』と言われたんです。正直、歌ネタ、特にギターを使ったネタが僕は大の苦手で、『何もわかってへん人やなあ』と心の中で反発していました。けど、このままではクビになる。しゃあない……と、ギターを使った歌ネタを披露したら、まさかの大ウケ。ここから僕のギター片手の歌ネタスタイルが始まりました」

ライブで徐々に結果を残し始めた彼に大きな変化が訪れたのは、2017年のこと。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)内の企画「山-1グランプリ」への出演が決まったのだ。収録現場に向かう途中、偶然思いついた俳優・天海祐希にひたすら毒づくネタを披露。放送終了と同時に彼のSNSには「面白い!」という賞賛の声。そしてその褒めを遥かに凌駕する、「謝れ!」、「一生宝塚に来るな!」などの怒りのメッセージの数々が届いた。人生初の大炎上。普通なら怖気づくほどの状況に対し、しんいちは自分でも驚くほど冷静でいたという。

「来る反応全部を見ながら、ニヤニヤしていました。『俺、目立ってる!』って。これまで完全に無風だったから、人に知ってもらえるだけで嬉しかったんです。それに、人に好かれようと頑張っても、人生を変えるデカいことに何一つ繋がらない。そんな中、僕は人に嫌われるようなネタで注目を浴び、賛否両論が巻き起こった。人生初の大きな反応。なら、徹底的に嫌われまくる悪魔に生まれ変わって、メチャクチャしてやろう!と思いました。この瞬間に、『お見送り芸人しんいち』の歴史が本格的に始まったんです」

そこからは毒舌、悪口を活かしたネタを数多く作りはじめる。『R-1』優勝ネタである「僕の好きなもの」もこの頃に生まれた。しかし、嫌われてやろう!と思い振り切ったことが、周囲の見方を変えた。

「『お前、おもろいやん』って寄ってくる人が増えてきたんですよ、今まで相手にもされない、なんなら『つまらないヤツ』と白い目で見ていたのに。劇場でも今までになくウケはじめて。まさか悪口を吐くことで人に認められるとは思いませんでしたね」

『R-1』でも結果を残すようになる中、2021年から大会にレギュレーションが「芸歴10年以下」(2024年に撤廃)に変更。休業期間中を除くと2022年度で芸歴が満10年になるしんいちは、「ここで決勝行けんかったら、芸人を辞めようと思いました」と、芸人人生を賭けた。これまで積み重ねてきたものを出した結果、初の決勝進出を果す。

「『これで芸人辞めずに済んだ』と、決勝に進めただけで満足で。優勝やその先まで考えていませんでしたね」

しかし仲間たちの期待の声をもらうと火が点き、同時に“悪いしんいち”が顔を出した。

「ここまできたなら、『おもんない』と言ってきた人を見返したいし、ZAZY、吉住のような強豪に負けっぱなしなのは悔しい。そこで、ネタの中身を当日変えて、Aqua Timezさん、ロンブー亮さん、闘莉王さんをメチャクチャにイジるという、炎上間違いなしの悪口ネタを用意しました。『生放送? 知るか!』と、ぶちまけたら……まさかのクリーンヒット」

気づくと紙吹雪が舞うステージのど真ん中で、優勝トロフィーを抱えていた。

「これまで怖くて仕方なかった才能溢れる芸人たち、そしてこの芸能界のスネを、この瞬間一蹴りできました」

その後の彼の活躍は、ご覧の通り。様々な番組に出ては炎上を繰り返し、「嫌い」「おもんない」という、罵声を浴びながらテレビを賑わせている。『嫌われ者って金になる!』は、彼の生きざまを以て、“嫌われることを怖がらない人生”を、堂々と肯定している。

「この生きづらい世の中やし、僕まではいかないけれど炎上が誰にも付きまといます。この本を読んで、僕の生き方や考え方から、この世界で楽に生きる方法を受け取ってもらえたらうれしいですね」

▽お見送り芸人しんいち お渡し会開催決定

開場日 2025年11月3日(月・祝)開催時間 13:30開場/14:00開演開催場所 芳林堂書店高田馬場店 8階イベントスペース住所 東京都新宿区高田馬場1-26-5 FIビル参加料金 2,420円(税込) ※書籍代1,870円・イベントサポート費を含みます

参加チケット購入はコチラ→ 

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