矢吹奈子がミュージカル「ブラック・ジャック」に出演。ミュージカル初挑戦の心境を語ってくれた

矢吹奈子「この作品が“生きること”について改めて考える時間になれば」/ミュージカル『ブラック・ジャック』インタビュー

2025.07.07 19:30
矢吹奈子がミュージカル「ブラック・ジャック」に出演。ミュージカル初挑戦の心境を語ってくれた

手塚治虫による不朽の名作『ブラック・ジャック』。深い人間ドラマの中には、医療の不平等への批判、人間の尊厳へのまなざし、そして科学と倫理のせめぎ合いなど、多くの社会的テーマが息づいている。そんな医療マンガの金字塔が、演出・栗山民也、脚本・鈴木聡、音楽・笠松泰洋という豪華クリエイター陣の手によってミュージカル化。“命の価値”を真正面から問いかけるミュージカル『ブラック・ジャック』が、6月28日に幕を開けた。

天才的な腕を持つ孤高の外科医・ブラック・ジャック役に坂本昌行。18年間、双子の姉の体内に存在していた畸形嚢腫(きけいのうしゅ)からブラック・ジャックによって人の姿に生まれ変わったピノコ役に矢吹奈子。安楽死専門の医師ドクター・キリコ役には味方良介、謎の拒食症に悩む女優・真理子役を大空ゆうひ、真理子の叔父で医師の白川役に今井清隆と、錚々たる実力派がそろい、重厚なテーマを歌と演技で浮かび上がらせる。

今回、ブラック・ジャックの助手であり、家族のような存在でもあるピノコ役の矢吹奈子のインタビューが到着。ミュージカル初挑戦となる彼女が、稽古の中で何を感じ、どんな思いでこの役に向き合っているのか──その胸の内を聞いた。

矢吹奈子、ミュージカルに初挑戦!「ブラック・ジャック」でピノコ役に抜てき

――現在(取材は6月中旬)、まさに稽古の真っ最中だそうですね。

矢吹 歌稽古は5月から始まって、最近は通し稽古に入りました。一昨日にはバンドの皆さんも合流してくださって。その日がちょうど私の誕生日だったんです。バンドの生演奏に、共演者の皆さんの美しい生歌でお祝いしていただいて…。特に“きよさん”(今井清隆)のハモリが本当に素晴らしくて! 幸せな時間でした。

――最高の雰囲気で稽古に臨めているんですね。

矢吹 はい。本当に素敵なカンパニーです。

――ミュージカルへの出演は、今回が初めてになりますね。

矢吹 はい。オーディションを受けさせていただいて、合格の知らせを聞いたときは本当にびっくりしました。

――稽古に取り組む中で、心境の変化はありましたか?

矢吹 最初の読み合わせでは、どんなふうにピノコを演じればいいのか全くわからず、探り探りでした。自分なりに模索する中で栗山(民也)さんに演出をつけていただき、「だんだんピノコらしくなってきたね」とスタッフさんにも言っていただけるようになり、何となく感覚を掴んできたかな、と思っています。

――現時点での、ピノコ像”をどう捉えていますか?

矢吹 どんな場面でも、ピノコがいることで空気が和らいだり、癒やされたりするような空間を作れたらと思っています。いい意味で、場の空気を壊すような存在といいますか。ピノコは自分の気持ちにとても素直な子なので、その自由さをしっかり表現していきたいですね。

――栗山さんから印象的だったアドバイスはありますか?

矢吹 「ピノコはブラック・ジャック先生によって形成された子で、人間ではあるけれど“完成形”ではない。成長しきれていない部分もあるから、“普通の子”ではダメなんだよ」とおっしゃっていたのが、とても印象に残っています。実際に栗山さんが「こういう言い方で」と演技を見せてくださるんですが、それが本当に素晴らしくて…! みんなで「ピノコが憑依してる!」と言っているくらい(笑)。そのお芝居を参考に「どうしたら私もああいう演技ができるんだろう?」と考えながら、日々ピノコを作り上げています。

「うまくなっちゃダメ」…ミュージカルの“歌”の難しさを実感 

――“完成形じゃない完成形”を目指す…とても繊細な作業ですね。

矢吹 そうなんですよね。歌に関しても、稽古の序盤に「うまくなっちゃダメだよ」と言われて驚きました。初めてのミュージカルで、歌の面でもとても緊張していたんです。アイドルとして歌ってきた経験はあるけれど、ミュージカルの発声は全く違うじゃないですか。だから「うまくなっちゃダメ」と言われたときは「あ、そうなんだ…!」と(笑)。あえて音程を少し外したり、リズムに合わせずに遅らせて歌ったり、踊ったり。身体に染みついた感覚と違うことをやるのは難しいですが、そこも面白い部分ですね。

――初挑戦で、挑むことがたくさんあるのですね。

矢吹 私、無意識なんですけど、歩くだけでも音に合ってしまうみたいなんです(笑)。今はその“無意識”を手放すことに取り組んでいて。大変ですが、今までと全く違うアプローチなので楽しいです。

――アイドルとしての歌との違いも感じているのでは?

矢吹 全然違いますね。アイドルの歌は、何よりも“リズムに合わせること”が大事で、特に(IZ*ONEのメンバーとして)韓国で活動していたときは、ガイドボーカルに限りなく近い形で歌うのが基本だったんです。とにかく聴き込んで“完コピ”するというか。でもミュージカルでは、歌詞を“言葉”として、“セリフ”として届けることが求められる。アイドルのときも歌詞を大切にしていたつもりでしたが、ミュージカルでは、より物語の一部を歌が担っていると感じます。リズムを優先するという考え方とは違うので、最初はかなり苦戦しました。

――苦労も多い一方で、新たな発見もあったのではないでしょうか?

矢吹 はい。稽古中の歌唱練習に加えて、栗山さんにご紹介いただいたボイストレーナーの方のもとでレッスンを受けています。そこで、息の吸い方や整え方をイチから学びました。歌は、“息”が本当に大事で。普段は引き気味に話すことが多いですが、歌では声をしっかり“前に出す”必要があると教えていただきました。そのためのテクニックを、今まさに学んでいるところです。

――その中で、逆にアイドル時代の経験が活かされていると感じた部分はありますか?

矢吹 ステージ上の立ち位置の感覚ですね。舞台には番号が振られているんですけど、動きながらでも自然と「今ここが何番だな」ってわかるんです。あの音までにここへ移動しなきゃっていう計算も、身体が勝手にやってくれている感じで(笑)。

――まさに“経験値”ですね。劇中で披露する楽曲についても教えていただけますか?

矢吹 ピノコは元気で明るい子なので、そういう曲が多いのかなと思っていたんですが、そういうわけでもなく。約2時間の物語の中で描かれるピノコの成長に合わせて、彼女の内面や想いを表現したナンバーもいくつかありますよ。

――さまざまな表情の“歌声”が聴けそうですね。

矢吹 はい、ぜひ楽しみにしていてください!

坂本昌行と息ぴったり!?「あ、ピノコとブラック・ジャックだ!」と感じた瞬間

――共演者の皆さんも、歌唱力の高い方ばかりです。

矢吹 本当に皆さん、迫力がすごすぎて……! 稽古場にいるのに、まるで本番を観ているかのような感覚になります。特に、きよさんの声量には圧倒されました。稽古前に「あ〜」と軽く発声されるだけで、ものすごく響いていて! 近くでコソコソ話なんてできません(笑)。「私もいつかこんなふうになりたい!」と、毎日憧れながら見させてもらっています。あと、先日、私が歌っていたパートで「この部分、ちょっと聞き取りにくいからセリフに変えようか」と提案があって。その後、振り付けと合わせて練習していたら、大空(ゆうひ)さんが「こういう感じでポーズをつけてみたらどう?」とアドバイスしてくださったんです。宝塚(歌劇団)で長年活躍されてきた方のすごさを改めて実感しましたし、もう、ずっと大空さんのことを見てしまいます(笑)。

――ブラック・ジャックを演じる坂本昌行さんの印象はいかがですか?

矢吹 ブラック・ジャック先生が3曲ほどをつなげて歌う場面があるんですが、毎回そのシーンに感動しています。感情がしっかり込められていて、先生の想いがまっすぐに伝わってくるので、心が揺さぶられます。

――おふたりで歌うシーンもあるのでしょうか?

矢吹 はい。最初に合わせたときから、違和感なく歌えたんです。歌唱指導の方からも「グループ活動を経験してきたふたりだからか、お互いの呼吸を感じながら歌えていて良かった」と言っていただけて。

――自然な調和があったのですね。

矢吹 そうなんです。この前の通し稽古でも印象的なことがあって。坂本さんに確認したい部分があって、ちょうどタイミングができたので、小道具のコップを持ったまま(笑)、坂本さんのもとへ歩いていったんです。そしたら、坂本さんも同じことを考えていたみたいでバッタリ遭遇して。「あ、ピノコとブラック・ジャックだ!」と感じた瞬間でした。

――まさに! その空気感をより磨いて、ステージ上に持っていけたらいいですね。

矢吹 はい。坂本さんと一緒に踊るシーンもあるんですが、そこはもう完全にお任せしています(笑)。もし私が早く立ち位置についてしまっても、坂本さんが引っ張ってくださると自然と音にハマることがわかっていて。なので安心して、全部預けて(ポーズを取り)待っています(笑)。

ミュージカル「ブラック・ジャック」から受け取ったのは「生きることのすばらしさ」

――おふたりのコンビネーションも見どころになりそうですね。さて、『ブラック・ジャック』は“命の価値”を問いかける、深いメッセージ性を持つ作品だと思います。矢吹さんは、台本からどのようなことを受け取りましたか?

矢吹 題材となっているのは“生と死”。ピノコは、ブラック・ジャック先生のおかげで命を得た存在だからこそ、“生きている”ことへの感謝を強く感じている子なんです。その“生きる楽しさ”を、(大空ゆうひ演じる)真理子さんに伝えていく場面があって。そのピノコの姿を通して、観てくださる皆さんにも「生きていることは当たり前じゃない」と、改めて感じてもらえたら嬉しいです。もちろん、“生きることの楽しさ”もお伝えできればと思っています。

――ピノコを通して、“命”について考えるきっかけになる物語ですね。

矢吹 物語の中で、ピノコが周囲の人たちに“みんな生きている理由”を尋ねるシーンがあるんです。それぞれの答えを聞いて、ピノコ自身も何かに気づいていく。そのやりとりがとても印象的で、いろいろなことを考えさせられる場面だなと思っています。

――そんなミュージカルを携えて、全国6都市を巡回します。

矢吹 兵庫公演を除いては各地1日公演なので、お会いできるお客様は限られてしまうかもしれませんが、それでも全国をまわって、多くの方に『ブラック・ジャック』を届けられることが本当に嬉しいです。

――では最後に、公演を楽しみにしている皆さまへメッセージをお願いします。

矢吹 今回が初めてのミュージカル出演なので、開幕を前にドキドキが募るばかりですが…物語が始まれば、自然とセリフが出てくるように、ピノコとして生きられるように頑張ります。観に来てくださる皆さんにとって、“生きること”について改めて考えるきっかけになったら嬉しいですし、何かひとつでも心に残るものを持ち帰っていただけるよう、私も全力で舞台に臨みたいと思います。

文:豊泉彩乃 ヘアメイク:舩戸美咲

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