「続・続・最後から二番目の恋」

「最後から二番目の恋」がいま、心に沁みる理由――小泉今日子&中井貴一の答えを出さない関係が愛おしい

2025.05.26 18:10
「続・続・最後から二番目の恋」

“恋”とも“友情”とも言い切れない距離にいる、アラカンの男女。彼らと周囲の人々を描くドラマ「続・続・最後から二番目の恋」(毎週月曜夜9:00-9:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)は、なぜこんなにも滋味深いのか――。タイトルの意味から、この物語の豊かさが見えてくる。

「最後から二番目の恋」って、どういうこと?

多くの人はこのタイトルを、第1シリーズ(2012年)の吉野千明(小泉今日子)のセリフから考察する。「次の恋は最後から二番目の恋だ。その方が、人生はファンキーだ」という、前向きでエネルギッシュなセリフ。けれど、現在放送されている新シリーズでは、少し違った意味に響いている。

本作は、千明と長倉和平(中井貴一)を軸とした愛おしい群像劇。鎌倉の古民家でお隣同士に暮らすふたりは、「恋人」とは言えないが、「友人」ではとても表しきれない関係だ。彼らとその家族、さらに友人たちの日々と人生が、ユーモアと優しさを交えて描かれていく。

その第1話で、コロナ禍の初期に千明が感染し、和平と扉越しに話す回想シーンがあった。和平が「どんな形であれ、ずっと一緒に生きていくんでしょ、私とあなたは」と真面目に言ったのに、いつもの調子で「キープしといてよかったぁ」と返す千明。すると夫婦漫才のように、和平も「私だってね、ほかにいい人がいたらね、すぐにそっち行きますよ」と軽口を叩く。

「この恋は“最後から二番目”ですよ」とうそぶく、大人の軽やかな距離感。冗談めかした言葉の裏に、「あなたがいい」という本音が滲む。“最後の恋”という言葉にときめく時期はとうに過ぎて、もう恋だけで人生を決めるような歳ではないが、恋する心はいつだって人生を楽しくしてくれるだろう。

揺らぎの中にある、大人の恋と親子のかたち

新たに千明に芽生えた恋は、まさにそうだ。彼女が出会った医師・成瀬千次(三浦友和)の亡き妻は、千明に瓜二つ。成瀬が自分を意識していることも、千明に想いを知られていることも、お互いにわかっている。けれど、ふたりは気まずくなることもなく、思いがけず舞い降りた小鳥を愛でるように、笑顔でその恋を眺め、心動かされることをただ楽しむ。

きっぱり白黒つけず、ぼんやりしたままにしておくことが、時には人を自由にする。それは、人生のある段階に来た人たちにとって、すごくリアルな感覚だ。

親子の関係もまた同じ。和平と娘・えりな(白本彩奈)は、反発しあっていた時期を経て、大人同士の関係へと移行している。千明には、離れて暮らす実家の両親から、相変わらず心配の電話が入る。「うっとうしい」その愛情は、くすぐったくもある。大人になったからこそ見えてくる、親子の関係の変化と、その中に宿る情も、このドラマの大切な要素だ。

ただの日常が、こんなに沁みる理由

さらに特筆すべきは、役者たちの芝居の引き出しの多さと、脚本の柔らかさ。

小泉今日子と中井貴一を筆頭に、ベテラン勢が肩の力を抜いて、思い切り芝居を楽しんでいるのが伝わってくる。会話劇のテンポは絶妙で、派手な演出があるわけではないのに、ただの“日常の一コマ”が、なぜかおかしくて、やけに沁みる。それは、キャストを信じて預ける岡田惠和の脚本だからこそ可能な空気感だ。

結論が出ないまま続いていくことを楽しむ。そんな人生の“途中”を生きる人々の姿が、笑えて、沁みて、希望をくれる。観ているうちに、「揺らいでいる今こそが人生なんだ」と思えてくる。

SNS社会を中心に、強い言葉があふれ、決断ばかりが求められる、今だからこそ。「今夜、何かを観たいけど決めきれない」――そんな夜に、本作の「揺らぎ」に身を委ねてみてはどうだろうか。

■文/熊倉久枝

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