＜PJ ～航空救難団～＞内野聖陽“宇佐美”、施設育ちの訓練生・前田拳太郎“白河”に「もっと甘えていいんだぜ？“家族”みたいに」

2025.05.10 19:34

内野聖陽主演、航空自衛隊全面協力のドラマ「PJ ～航空救難団～」(毎週木曜夜9:00-9:54、テレビ朝日系／TELASA、Tverにて配信)。5月8日放送の第3話では、成績トップの訓練生・白河(前田拳太郎)を襲った恐怖の感情とそれを乗り越える姿が描かれた。(以下、ネタバレ含みます)

「人命救助最後の砦」のPJを目指す学生たちと教官の群像劇

「PJ」とは、“パラレスキュージャンパー”の略。海上保安庁や山岳救助隊など他のどの組織でも救助不可能と判断された場合に出動する究極の救難隊のことで、「人命救助最後の砦」とも言われる航空自衛隊の航空救難団だ。

本作は、航空自衛隊小牧基地を舞台に、救難教育隊の主任教官・宇佐美誠司(内野)と7人の学生たちが織りなす群像劇、そしてPJの過酷な任務の様子を、リアル且つ壮大なスケールで描いていく。

仲間の溺れた様子を見て、恐怖心が植え付けられてしまった白河

2週間後の海上総合実習に向けて、本日は“エアーステーション”(水中に設置されたボンベが安全に作動するか点検する訓練)をすることに。4人1組で3か所に置かれたステーションを回り、各ステーションで呼吸できるのは2回だけという厳しい訓練だ。

まずは白河をチームリーダーに、長谷部(渡辺碧斗)、ランディー(草間リチャード敬太)、東海林(犬飼貴丈)が訓練を開始。ステーションに着き、ボンベで酸素を吸い込む白河。だがその時、彼の脳裏に、先日のプールでの訓練で溺れたさやか(石井杏奈)のパニック状態の姿が蘇った。あの時、他の訓練生たちは我先にと彼女に駆けよったが、白川は恐怖で足がすくんで1歩も動けずに固まってしまったのだった…。そんなことを考えていたその時、彼の背後にいた長谷部が息が続かず水面に上がろうとし、その途中でブラックアウトしてしまった。

幸い、長谷部はすぐに意識を取り戻しだが、介抱される彼を白川は茫然としながら見つめるしかなかった。「すみませんでした！自分がちゃんと長谷部の動きを見ていれば…」。ほんの一瞬の気の緩みが大事故に繋がる可能性があることを痛感させられる出来事だった。

後日、格納庫でヘリコプターから装備を背負って飛び降りる訓練が行われた。白河は飛び降りようとした瞬間、またあのさやかの姿がまた蘇り、数10cm下のコンクリートにすら足がすくんでしまった。教官・仁科(濱田岳)の怒声で我に返った白川は慌てて降りたがバランスを崩し、後頭部を強打。宇佐美が脳震盪の可能性があるから医務室で休め、と言ったが、「大丈夫です！みんなに後れをとりたくありません！」と聞かない白河。だが「周りとの勝負じゃない」と仁科にたしなめられ、白川は医務室に“連行”された。

養護施設出身の白河

白河は養護施設の出身だ。白河が幼い頃、彼の父親は仕事に失敗し、借金を残して蒸発。そのせいで母親は心を病み育児放棄。彼は、どこかで拾ったモノで腹を満たすような生活をおくるしかなく、児童相談所に保護されて施設に入ったのだ。その後、母親は病死。身寄りのいなくなった彼は、現在、卒論のために訓練所の取材をしに来た宇佐美の娘・勇菜(吉川愛)が、離婚したとはいえ、父親である宇佐美に冷たい態度をとっているのが腹立たしく、また羨ましくもあるようだ。

白河が救難員を目指したのは、施設の子供たちに「親がいなくても、やればできる」と希望を持ってほしいからだ。施設の相撲大会で優勝して以来、子供たちに「ヒーロー」と呼ばれている彼は、救難員として“本物のヒーロー”になりたい。その為にずっと努力して、トップの成績で選抜試験に合格したのだ。

だが今の自分は、思い描いていた“ヒーロー”とは程遠い。仲間がパニックになった姿を見て、動けなくなるなんて言語道断だ。「怖い」と思う事自体、自分自身が許せなかった。そして、“弱音を吐く、誰かを頼るヒーロー”など、彼の概念には存在しない。

これまで自分は、何でも誰よりも一番うまくこなし、仲間たちにも頼られ、理想に近づいているつもりだった。だが、今の自分は何なんだ…。元々、自分を追い込むタイプではあったが、このところ前にも増して取りつかれたようにトレーニングに没頭している白河を、仲間たちは心配していた。そして、当然宇佐美もそんな白川が気になっていた。

白河のせいで訓練中止

その後のプールでの訓練でも、事あるごとにあのさやかの目を見開いてもがき暴れる姿がフラッシュバックする白河。それに加えて、先日の長谷部のブラックアウト…。白河の恐怖は減るどころか増える一方だ…。

そして、いよいよ、洋上救出訓練当日。ヘリコプターの中で「俺にできるのか…？人を救えるのか…？」と震えた声で繰り返しつぶやく白河…。「全員、降下準備！」との宇佐美の声で訓練生たちは迅速に準備を始めた。だが、白河だけは動けない…。「白河！降下準備！」と宇佐美に注意されて、やっと動き出した彼は、「やれる、やれるやれる！」と自己暗示をかけるように何度も自分に言い聞かせるのだった。

全員が降下のために自己確保を解除したが、白河だけは安全装置が外せないでいた。仲間たちがいくら励まして応援しても、彼は解除することができず、号泣するばかりだった。そんな彼を見た訓練生たちに不安が伝播する…。この状態での訓練は危険だと判断した宇佐美の指示で、訓練は中止となった。

「もっと甘えていいんだぜ？家族みたいに」

白河の今後の処遇について教官たちが話し合う中、宇佐美は突然「稽古つけてきますわ」と、教室へ向かった。カリキュラムを変更して野球場に生徒たちを呼び出した宇佐美は、「俺は今、モーレツに相撲がしたい！」と言い出し、仁科は白河を指名した。

だが、すぐには動けなくなっていた白河に、宇佐美は「負ける姿はカッコ悪くて見せらんねえか？」とバカにしたように笑い、「カッコいいもんなぁ、オマエは！」と挑発。「ヒーロー気取りが！」との宇佐美の言葉にやっと火が付いた白河は、土俵の中に入り、取り組みが始まった。だが、宇佐美は赤子の手をひねるように白河をあっさり倒してしまう。「あらあら、汚れちゃったねぇ。情けないねぇ！」と白河を挑発しまくる宇佐美。負けず嫌いが加速した白河は、必死で宇佐美に食らいつく。そんな彼に「虚勢張って1人で追い込んでんじゃねえよ！本当は脳みその中、不安でパンパンなんだろ！」と全てお見通しの言葉を告げ、白河は「そうですよ。不安ですよ！」と素直に認めた。

そして、彼を見守る仲間たちに、さやかが溺れた時に恐怖で何もできなかったことを告白し、自分はみんなに頼られるような人間ではない、こんな自分は救難員にもヒーローにもなれない、と今の想いを吐き出すのだった。

「ここで終わりか？それでいいのか？」と尋ねる宇佐美に、「ウワァーッ！」と溜まっていた想いをぶつけるように叫びながら突進した白河。そんな彼に心から声援をおくる仲間たちの姿が、かつての施設の相撲大会で応援してくれた子供たちと重なった白河は、ありったけの力をこめて、ついに宇佐美を土俵外へ投げ飛ばした。

教官を投げ飛ばしてしまったことを謝る白河に、宇佐美は「弱くて情けねぇとこ見せたって、ヒーローにはなれるんだぜ」と言い、仲間たちをもっと頼ればいいし、自分たち教官も生徒の為だけにいる、だから、「もっと甘えていいんだぜ？“家族”みたいに」と告げた。「家族」は、白河にとってのパワーワードのはずで、宇佐美はその辺りをちゃんとわかっているところがさすがすぎる。

後日、洋上救出訓練のやり直しが行われ、自信を取り戻した白河は皆と共に見事に成功させた。訓練後、彼は宇佐美の元に駆け寄り、礼を述べた。そんな白河を抱きしめ、「よくやった」とねぎらう宇佐美。その様子は父親そのもので、宇佐美がある意味一番求めていたことだったのではないかと思った。「家族」を得た白河が今後どう飛躍していくのか見守りたい。

◆文＝ザテレビジョンドラマ部