小山薫堂

いよいよ第2回トーナメント決勝が迫る「リモートシェフ」、生みの親である小山薫堂が語る料理対決番組としての“未来”

2025.03.28 12:00
小山薫堂

料理×バトルのムーブメントを作った伝説の番組「料理の鉄人」。構成を担った放送作家の小山薫堂は、“店の中にいた料理人”に光を当てるためにこの番組を考えたという。番組制作のほかにも“くまモン”の生みの親、映画「おくりびと」の脚本など、小山の仕事は多岐なジャンルにわたる。現在は“料理人が料理をしない”料理対決番組「リモートシェフ」(毎月第3月曜夜5:00-6:00、BSフジ)を立ち上げている小山。まったく新しい同番組を思いついたきっかけを聞いたところ、アイデアの源泉、テレビ&メディアが担うべき役割を語ってくれた。

「料理の鉄人」で抱えていた料理人への申し訳なさ

――「リモートシェフ」が、「料理の鉄人」の小山さんが企画したということで注目を集めています。本番組はどのような経緯で立ち上がったのでしょうか?

「料理の鉄人」ですが、あの番組が始まったときは「負けた側の料理人のプライドを損ねてはいないか」「プライドを棄損していないか」という申し訳なさをずっと持っていたんですよね。結果としては、皆さん「料理の鉄人」に出られるというだけで喜んでくださるようになったのですが、やっぱり負けた側のダメージは大きかったと思います。遊び気分で出られた方は、1人もいませんでしたから。

「リモートシェフ」は、そのダメージを和らげる手法はないものかと考えて生まれた番組です。クッカー(料理人の指示で調理をする出演者)がクッションになり、自分で調理しない分、負けてもそれほどでもないだろうなと。ところがやってみると、皆さん意外と自分でやるよりもダメージを受けてしまっていて…それだけ真剣にやられている結果なんですよね。渡辺雄一郎(フレンチ)さんなどは、「今日は店に帰れねえな」とこぼしながら帰っていきましたから。なかなか頭で考えた通りにはいかないものです。

ただ、これは新しい料理の世界の種になる番組だと思います。今まで料理屋さんに行って、お金を払って作ってもらっていた料理が、“シェフの作品”として著作権のように料理が1人歩きをする。そしてそれを誰もが再現できる…というのが新しい。レストランでもない、家での調理でもない、出張料理ともちょっと違う。新しい食のジャンルになりうるのではないかと思っています。

――「リモートシェフ」の面白さを実現するために工夫した点はどこでしょうか?

一番はちょっとしたゲーム性の付加ですね。ただ教えるだけだとハラハラしたりワクワクしたりする瞬間がないので、“シェフタイム”(1分間だけクッカーに代わって料理人が自分でキッチンに立てる時間)を設けたり、あるいは時間をオーバーすると減点されていくというルール。料理教室ではなくエンターテインメントにすることで、“料理を伝える面白さ”を考えました。

あとは5000円という食材予算を設定することで、ご家庭の方が見て、自分も作ってみたくなるような料理にすること。5000円というラインだと特別高価な食材は使えず、だいたいスーパーマーケットに行けば買い揃えられるものになるんですよね。

「リモートシェフ」台風の目となったタイ料理・森枝、イタリアン・辻大輔

――現在番組は第2回トーナメントを実施中で、4月の放送で決勝戦を迎えます。たった今収録を終えましたが、どのような戦いでしたか?

今回、本命と目されていた巨匠たちが途中で敗退し、森枝幹さん(タイ)と辻大輔さん(イタリアン)という、台風の目と言える2人が勝ち残る結果になりました。私たち審査員もそうですし、視聴者の皆さんも予想しづらいトーナメントだったと思います。

森枝さんは特にそうですが、2人とも変化球。そういう意味では、試合としてはすごく面白いです。どちらが勝つのか、どんな料理を作らせるのか、見ていて楽しんでもらえると思います。

――その次には第3回トーナメントが始まります。新しい仕掛けなどは考えているのでしょうか?

今はシェフ同士、ほのぼのとした雰囲気で試合をしているじゃないですか。負けて悔しいとはいうものの、仲良さそうにしているんですよね。そこをもっとリアルな戦いになるようにしてもいいのかなと思っています。

クッカーの人によってもけっこう試合内容が変わります。それが面白さでもありますが、クッカーを複数人用意して、シェフが自分のクッカーを指名するというのもありかなと。

今はクッカーが1人なので、どちらのシェフにも平等に肩入れして調理しているんですよ。それは試合として正しいですが、クッカーを指名するゲーム性が入るともっと面白くなるんじゃないのかとも思います。

自分は誰かの望みを叶える“アイデアのお医者さん”

――小山さんといえば「料理の鉄人」制作、映画「おくりびと」脚本、くまモンの生みの親と多岐に渡って活動されている印象です。それぞれ全く違うジャンルのお仕事のように思えますが、小山さんの本業というべき軸はどこにあるのでしょうか?

僕は、言ってみれば“アイデアのお医者さん”みたいな人で、アイデアに困っている人を助けているだけなんですよね。「リモートシェフ」に関しては僕から申し出ましたが、くまモンは別にキャラクターを作りたいと思ったわけではなく、熊本県から相談があって、結果として生まれたもの。ほかの仕事に関しても、きっかけは全て誰かの望みを叶えているだけにすぎないんですよ。

――そのアイデアの源泉はどこにあるのでしょうか。新しい題材を見つけるために、日々、行っていることはあるのでしょうか?

源泉は、人を喜ばせたい、喜んでもらいたいという想いですね。それを形にするために日々何をしているかというと、特別な努力をしているわけではなく、ただただ、どうしたらあの人に喜ばれるか、喜んでくれるのかということを考えているだけです。

ただそのためには常に面白いことへ目を向ける好奇心を持っていて、それがアイデアのきっかけと言えるのかもしれません。

テレビ、メディアの役割は本当に必要なものに光を当てること

――小山さんがテレビマンとして大切にしていること。これからのために考えていることがあれば教えてください。

テレビの最大の使命は、社会に必要な部分に光を当てることだと思います。世の中の空気を作り出す使命もあると思います。今本当に必要なもの、必要な人、必要な活動などをしっかり見極めて、たとえそれが地味であっても光を当てる。光を当てるというのは、皆さんがそこに興味を持つように、面白くするということだと思います。

ですがマスメディアの目は、最初から光っているもの、世間が興味ありそうなものに行きがちです。

世間の興味を伝えるのがメディアだという見方もありますが、そうではなく、メディアの力でその職業が偉大なものなんだと気づいてもらう方が大切なんですよね。ですから、「料理の鉄人」は料理人に光を当てました。それまで、ほとんどの方がお店のことは知っていても、そこで働いている料理人の名前までは知らなかったと思います。

――「おくりびと」の納棺師もそうですね。

はい。最近では被団協(日本原爆水爆被害者団体協議会)も。ノーベル平和賞の受賞がきっかけでメディアが注目するようになり、被団協の活動が報道されるようになりました。それまで、被団協の存在自体、知らなかった方がほとんどだと思います。

世の中に知られたのはいいことですが、本来、メディアはその活動にもっと早くからスポットを当てなければいけなかったと思います。

何を見つけ、どのようにして光を当てるか。それを考えるのが、公共性の上に立つテレビの役割。エンタメ化することが最善ではないですが、注目してもらうためのきっかけの1つが、エンタメとして見やすくすることだと僕は思います。

◆取材・文=鈴木康道

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