

<私の知らない私>中間利彦Pが明かす、時代に沿ったドラマ制作の裏側 主演・小野花梨と“リアリティ”のある芝居を徹底

小野花梨が主演を務める「私の知らない私」(毎週木曜夜11:59-0:54、読売テレビ・日本テレビ系※Lemino、Hulu、TVerでも配信)が現在放送中。同作は、目が覚めると一年間の記憶を失っていた羽田芽衣(小野)が、幸せな日常から一転、次第に周囲の人間から大切なものを奪われ始める。殺人疑惑までかけられた芽衣は、無実を証明するため“空白の1年”の解明に奮闘するヒューマン・ラブサスペンスだ。
この度、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める中間利彦氏にインタビューを実施。制作秘話やキャスト陣の魅力、今後の見どころなどについて話を聞いた。
登場人物の心情をしっかりと描くドラマ作りが必要
――本作はオリジナル作品ですが、制作に至った経緯を教えてください
2022年の10月期に、山本舞香さんと瀧本美織さんがW主演を務めてくれた「Sister」という作品を制作していた、それが終わった頃に脚本家の大林利江子さんと「次はオリジナルのラブサスペンスをやりたいですね」っていう話をしていたことからチャンスを得て、企画を進めたことがきっかけです。
――制作するにあたって、大事にしたことはありますか?
昨今、ラブ要素の入っているドラマが本当にたくさんあると思いますが、その中で視聴者の方の印象に残り選んで貰うためには、大切にしなきゃいけないことが二つあると思っていて。一つは「展開の速さ」、もう一つは「心情に寄り添える丁寧さ」だなと。
視聴者の方もじっくり待っていられないというか、展開がドンドン起きていかないと飽きてしまったり、興味が薄れていってしまうんじゃないかと焦るような思いがあります。
ただ一方で、展開が早いだけで感情が追いつかないドラマも選んで貰えないんじゃないか? ヒューマンドラマだからこそ、登場人物の心情をしっかりと描くドラマ作りが必要なんじゃないか? と。この作品は「展開の速さ」と「心情に寄り添える丁寧さ」、2つを両立させることが大事だと意識しています。
――確かに、ドラマを倍速で見る方も多い時代になりましたよね
そうなんです。TVerだと1.75倍で見ることができますし、今の時代、視聴者の方も倍速で見ることが習慣付いているので、展開の早さってすごく大事だなと感じています。ただ今回のドラマは「想いの掛け違い」というテーマを僕なりに持っていて、登場人物たちが抱える【友達への想い】、【家族への想い】、【愛する人への想い】など、登場人物たちの想いはできるだけ丁寧に描きたいなと思っています。
―― 小野さん、馬場さん、渋谷さん女子三人組の嫌な感じとかも、すごく丁寧だなと伝わってきます
大林さんと最初に「女子三人の心情、やり取りは丁寧に描きたいですね」っていうのを話していたので、そこは意識して作っているところではあります。多分、このかけ違いがなければこんなことは起きてないんだろうし、心情を丁寧に描きながらその心情にサスペンスという軸がうまく絡み合っていくドラマにしたいなと思っています。
小野花梨の存在感に惚れてオファー
――ドラマ単独初主演を務める小野さんの起用理由を教えてください
主人公・芽衣は、記憶喪失になっていた間に【殺人疑惑の疑い】をかけられ、二転三転する状況に直面していくという役どころで、その状況を説得力を持って演じていただく必要があると考えていました。記憶喪失という「ほぼほぼフィクションである状況」を、リアリティを感じられるようにもっていかないとこのドラマを主人公目線で見て頂けないんじゃないか? と思っていたので。
そんな時、小野花梨さんの、リアリティがあって「すぐそこにいる」と感じさせてくれる自然なお芝居と、「見る人の共感」を集めることができる存在感に惚れてオファーをさせていただきました。
――小野さんはかわいらしい素朴さを持ちながらも、存在感があってオーラのある演技をされますよね
本当にそう思います。普通のサスペンスって、顔の寄りがあって、目を大きく開いて…という「驚きの表情」ってありがちじゃないですか。今回はリアリティ重視で演じてもらいたいと思っていたので、最初に「このドラマはそういうことはしなくて大丈夫です」、って彼女にはお話をさせてもらいました。小野さんにリアリティのある芝居をしていただけたことによって、このドラマの深みが出たなと思っています。
――思い返してみると、過剰なリアクションや「キャー!」っていう叫び声も無かった気がします
そうなんです。僕も伝えましたけどご本人もそう思ってらっしゃいました。フィーリングがあって相性が良かったなと僕は思っています。ご本人が僕のことをどう思っているかはわかりませんが(笑)。
――座長としての小野さんの魅力を教えてください
カメラが回っていない時はすごく明るいし、笑顔でいつもニコニコしていて、場の空気を作ってくれる方です。ただ、お芝居に入ると誰よりも脚本を理解していて、とにかく真っ直ぐ。真っ直ぐがゆえに、芝居に対する熱量が高く緊張感もあって。その緊張感が現場を引っ張っていってくれているなと感じます。共演者の方々もそこに引っ張られている部分はあって、背中で語るじゃないですけど、存在感に皆ついていきたくなるような座長です。
小池徹平は「ギャップを作り出すのが上手」
――親友役の馬場さん、婚約者役の小池さん、同僚役の兵頭さんの起用理由も教えてください
親友役・翠は、芽衣とは対照的で誰もが憧れる美貌であったり、カリスマ性がある役どころで。馬場さんは、凛とした強さだとか、独特の存在感を持っている人だなっていうのは他の作品を拝見したときに思っていたので、オファーをさせていただきました。
――7話あたりから翠の儚さ・脆さが出てきて、一気に見方が変わりました
難しい役ながらも、繊細に演じていただきましたね。共感したくなるじゃないですけど、どこか憎めないし、翠は単なる悪者ではなく、翠には翠の正義があって、その正義のために動いているっていうところをしっかりと描きたかったので。馬場さんにはそこをすごく理解して演じていただけました。
――小池さんはいかがでしょうか?
小池さんは以前「ギルティ〜この恋は罪ですか?〜」や「ボクの殺意が恋をした」というドラマでご一緒させていただいて、今回三回目になります。最初から「西島役は小池さんしかいない!」と思っていたので、お願いしました。
――ここ数年、癖が強い役が多く怪演ぶりが素晴らしいですが、中間Pから見て小池さんの魅力とは?
純粋に「演技力の高さ」だと思います。あんなにお芝居に真摯に向き合っていて、こちらが求めていることを120%できる人、なかなかいないです。本当にすごい。あとは、柔らかくて優しい表情と癖のある部分とのギャップを作り出すのがとても上手だなと。
小池さんにしかできないことだと思います。今は癖の強い役を世の中から求められているのかもしれませんが、次回作、またご一緒できたら、優しいお父さん役とかいいんじゃないかな…とか考えています。
――兵頭さんの演技もSNSで注目されていますよね
兵頭さんはすごく伸びしろを感じる役者さんだと思っています。表情の機微だとか、真っ直ぐな瞳とか、正直なお芝居をされるなと。今回、龍之介っていう役はかっこいい要素が詰まっていて、芽衣を救ってあげられるヒーローじゃないですけど、龍之介に芯の強さがないと物語の後半戦走り切れないなと思っていたので、スター性も含めて兵頭さんにお願いしました。
今後、さらに龍之介と芽衣の関係が一つ進展する展開にもなっているので、期待していただきたいです。
4話・小野&馬場の演技は「とても光っていた」
――非常に緊迫としたシーンが多い印象ですが、撮影現場の雰囲気はいかがですか?
小池さんとか、渋谷(謙人)さんとか、レギュラーキャストの中でも大人な二人がやっぱり空気を作ってくれていて、兄貴としてムードメーカーになってくれているなと思います。そこに小野さん、馬場さん、兵頭さん、渋谷(凪沙)さんが入って、楽しい雰囲気で基本的にはいますけれど、いざ本番でスイッチを入れるとちょっと場がピリッとするというか。笑いのない日も当然あって緊張感のある朝もあります。でも、それは緊迫感のあるシーンを撮る上で大切なことだと思うので、非常にメリハリのある現場だなと感じますね。
――中間Pが特にお気に入りのシーン、またはせりふはありますか?
4話で、芽衣がお父さんの手紙を翠に渡すシーンですね。あそこは、芽衣が翠に事実を突きつけて全ての誤解を解こうとする最後の賭けのシーンだったんですけど、芽衣が必死になっている言動に対して翠は父の遺品の手紙を破るっていう…。
その直後の芽衣の顔を見た時、「小野花梨の演技力、すごいな」と思いました。泣いている訳じゃないし泣き芝居でもないんですけれど、全身から悲しみが伝わってきてモニターを見ていたら泣きそうになりました。
――翠の反応も逆に人間らしいというか、「許せない」と感じさせる渾身の演技でしたね
まさにそうで、やっぱり人間って何かあった時に揺らいでしまう生き物だし、揺らぎの部分があるのがヒューマンドラマの面白さだなと思うんですけれど、あの時点では翠も芽衣 の想いに揺らいでいるし、許してあげられるタイミングだったと思うんです。でも、それをやっぱり許さないっていう選択をする時の馬場さんの揺らぎを僕はすごく感じました。お二人のお芝居がとても光っていたシーンだなと思っています。
ラストに向けて「種明かしも用意してます」
――最後に、最終回に向けての見どころと、視聴者の皆さんへメッセージをお願いします!
最後の最後まで目が離せないですし、記憶喪失の真相、殺人疑惑の真相っていうのがまだまだ二転三転するので、楽しみにしていただきたいです。一方で、感情の部分では想いの掛け違いからスタートしたドラマですが、しっかりとその部分は解消されますし、なぜこうなったのか?っていう種明かしもしっかりとご用意しています。ラストまでぜひ見ていただきたいなと思っています!
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