川原和久

「相棒」シリーズを支える屈指の人気キャラ・川原和久“伊丹”の存在【てれびのスキマ】

2025.01.29 07:00
川原和久

シリーズ屈指の人気キャラ「イタミン」

「特命係の亀山ぁ~!」

2000年の「土曜ワイド劇場」の単発ドラマとして始まり、2002年からレギュラー化。以降、現在まで続く「相棒」シリーズ(テレビ朝日系)の中で水谷豊演じる主人公の杉下右京と並び、単発時代から含めすべてのシーズンに出演しているのが、「イタミン」こと伊丹憲一だ。

右京の“相棒”である亀山薫(寺脇康文)のライバル的存在の捜査一課刑事として登場した。右京の“相棒”が変遷していく中でも伊丹は変わらず活躍。もともと強面で口は悪いが正義感の強い男だったが、シーズンを重ねるごとに人間味も増していき、シリーズ屈指の人気キャラに成長した。

2013年には彼を主人公に据えたスピンオフ映画「相棒シリーズ X DAY」が制作されるほど。この伊丹を演じるのが川原和久だ。川原は、この「相棒」シリーズに出るまでは知る人ぞ知るというような存在だった。

舞台の魅力に浸かっていった学生時代

そもそも川原が初めて「演技」の世界に触れたのは高校生の頃だった。中学までは野球部のキャプテンだったが、高校でも野球を続けようか躊躇していた。その頃、友人から頼まれ演劇部の手伝いに行ったのだ。初めて与えられた役は「死神」。

そのときどう演じたかはあまり記憶にないものの、みんなで暗幕を張って暗くしたり、照明を工夫していったりする「舞台を作ること」に惹かれるようになった。その演劇部を指導する先生が東京で実際に芝居をやっていた人で、そのオリジナル脚本が優れていたこともあり、川原の在学中は毎回、高校演劇の県大会まで進んでいたという。

もうその頃には舞台の魅力にどっぷり浸かっていた。大学は迷わず日本大学芸術学部・演劇学科を選んだ。とはいえ、父は大反対だった。自分が高卒で就職し苦労したから息子には銀行員や公務員などの安定した職に就いてほしかったのだ。

「大学4年までしか面倒をみてやらない」と言われ福岡から上京した。そしてすぐに「劇団ショーマ」に立ち上げメンバーのひとりとして参加する。それは新入生歓迎の一環でセミナーハウスに宿泊したとき。座長となる高橋いさをと加藤忠可(ちなみに加藤も「相棒」に出演を果たしている)が意気投合。2人に誘われる形で劇団を立ち上げた。1982年だった。なお、同学部同学科で三谷幸喜が東京サンシャインボーイズを立ち上げたのが翌年。ライバルとしてしのぎを削り、1980年代小劇場ブームの代表格となっていった。

劇団時代から“ライバル”関係が続く六角精児

劇団ショーマと同じ1982年、早稲田大学の横内謙介が旗揚げしたのが劇団「善人会議」(現・「扉座」)だ。横内は高校時代、演劇の全国大会で優秀賞と創作脚本賞を受賞した高校演劇界の寵児。彼がその頃の演劇部員たちを中心に劇団を立ち上げたのだ。

その中にいたのが、「相棒」で伊丹と並ぶ名物キャラ・鑑識の米沢守を演じた六角精児。やはりスピンオフ映画「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」(2009年)が制作された。劇団時代から2人の“ライバル”関係が続いていたのだ。さらに伊丹とともに「トリオ・ザ・捜一」と呼ばれる後輩刑事・芹沢役の山中崇史も同劇団に所属している。

そして「トリオ」のもうひとりだった三浦役の大谷亮介もまた小劇場出身。1977年にオンシアター自由劇場に入団後、1986年に「役者集団東京壱組」を旗揚げした。他にも「暇か?」でお馴染みの角田を演じる山西惇も劇団そとばこまち所属だし、そもそも寺脇康文も劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」出身だ。

四半世紀近く続くドラマ「相棒」

「相棒」は舞台出身の役者を主要な役どころで重用しているのだ。もちろん、単発ドラマからレギュラーになるタイミングで別のもっとテレビで馴染みのある役者を起用する選択もあっただろう。けれど、そうしなかったからこそ「相棒」は四半世紀近く続くドラマになったに違いない。川原は伊丹を演じる上での心構えをこう語っている。

「小手先の芝居、思いつきの芝居はなるべくやらないで、キャラクターを肉づけしていきたいと。そのうえで、もしその場で思いついたことをやってしまったら、それを伊丹の個性として継続していこうと思うんです。それに、そうやって肉づけしたところを作家さんが気づいてくれて、次のシリーズでちゃんと台本のなかに活かしてくれることもありますから。それは、長く続いてるドラマならではの面白さだなと、楽しい思いをさせてもらってますね」(「バイプレーヤー読本」)

文=てれびのスキマ

1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「全部やれ。日本テレビえげつない勝ち方」

※『月刊ザテレビジョン』2025年2月号

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