インド・ラダックへ一人旅…“きれいな水道水”が引き起こした大惨事を描いたコミックエッセイに「強い女憧れる」「この方しゅごい…」の声【作者インタビュー】
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、ダ・ヴィンチで連載中の、里中はるか (はるか180cm) さんが描くコミックエッセイ『女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。』をピックアップ。
里中さんが2024年12月1日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、4,000件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、里中さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
初めてのラダックで下痢に…
著者の里中はるか (はるか180cm) さんは、東京で働く日々の中、度々己の無価値感を感じ鬱気味になっていた。そんな時ふと、インドのヒマラヤ「ラダック」でバイクに乗ろうと決意する。「ラダック」はライダーの聖地。そこへ行けば何かが変わるかもとの思いを抱いていた。
3年半ぶりの海外旅行、10年以上ぶりのインドに興奮していた里中さん。高山病予防のための薬も機内で飲み、ラダックのレー空港に到着。しかし、標高3,500メートル越えの地に慣れず、体調を崩し始める。水を求めホテルのフロントへ行くと、ペットボトルの水の販売はないが「clean tap water(きれいな水道水)」ならあると言われる。高山病には水分という知識があったため、そのお水をごくごくと飲む。すると突然、腹痛に襲われ何度もトイレに行くことに。
全身の傷みや下痢で苦しむ里中さんは、翌日心配になりついに病院へ。なんとか症状を説明し、注射と点滴の処置をしてもらう。徐々に身体は良くなっていくものの、まさかこの下痢が3週間続くとは予想だにしていないのだった…。
作品を読んだ読者からは、「下痢とダニと謎の高熱はインドの洗礼」「旅はいいぞ!お腹は!大事!」など、反響の声が多く寄せられている。
作者・里中はるか (はるか180cm) さん「誰かの楽しさや息抜きのお供になれば…」
――『女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。』はご自身の旅のコミックエッセイですが、描かれようと思ったきっかけや理由などをお教えください。
以前から旅のコミックエッセイを描きたい描きたいとは思っていたのですが、ついに描けたのが今作でした。
旅は学生の頃から好きで、当時から自分が一番癒される時間でした。また、もう10年以上前ですが、社会人になってすぐ鬱で休職していた時に、昔漫画家に憧れていたことを思い出し、漫画を描きはじめました。日常エッセイや創作漫画を描いては挫折、描いては挫折を繰り返している中で、旅のコミックエッセイやコミティア(オリジナル創作物の同人誌即売会)の存在を知りました。
実は、2018年にイランを旅したときや、2019年にニュージーランドツーリングをしたときにも、数ページ描きかけたんです。ただ、なかなか描き切ることができなくて…。そのままコロナ禍に突入し、漫画も描けなくなっていました。
それが、コロナ禍明けにインドのヒマラヤ「ラダック」のバイク旅が、1日の出来事で50ページ漫画が描ける!と思うくらい、濃い体験だったんです。もう今回描くしかない!と、帰国後すぐにコミティアに申し込み、当時のTwitterで「漫画本を作ります!」と宣言して。ギリギリの進捗を公開し、フォロワーさんに応援してもらいながら、本書の前身となる同人誌「ワンマン夏休み」Vol.1を完成させ、本書への一歩を踏み出すことができました。
その後、KADOKAWA編集の篠原さんとご縁があり、二人三脚で走っていただいて、200ページフルカラーの本書を描き切ることができました。
――今作を描くうえで、特に心がけたことはなんですか?
心がけたポイントはたくさんありまして…。
まず、旅の出来事をまとめるだけでなく、そこでどう心境が変化したかを描こうとした点です。(こちらは次の次のご質問でお答えします。)
次に、「リアルに一緒に旅している気分になれる本」であること。少し珍しいかもしれない表現ですが、漫画と写真と情報ページを組み合わせ、主観と現実を行ったり来たりしながら、読者さんがリアルに旅の様子を想像できるようにしました。ところどころに記載されているQRコードを読み取ると、21本の旅の動画を見ることができ、臨場感を味わえます。
また、旅の実用書としての側面も。自分が旅行記を読む時に、エピソードだけでなく、旅の全体像や今どこにいるのか、実際の写真も知りたい…と常々思っていたので、それらを全部形にしました。ラダックの解説、1ヶ月の旅のスケジュールや、移動ルート、11ページにわたる持ち物解説などこだわって描きました。
――隅々までこだわられた作品だと感じました。心がけたこと以外に、本作で大切にされていたことはありますか?
大切にしたこととしては、旅の舞台であるラダックを正確に解説することです。歴史や文化が複雑な地でもあるので、本書のラダック情報は、長年ラダックに通い、ラダックの本もたくさん書かれている山本高樹さんに、丁寧に監修いただきました。
また、作中では下痢と高山病で9キロも痩せたり、トイレや悪路に苦労するエピソードを載せているのですが、困っただけでなく、厳しい自然の中で暮らすラダックの方への尊敬の念や、生活の工夫に感動したことなどもきちんと伝えられるよう、言葉一つ一つの表現にはかなり注意を払いました。単純に「インド=怖い」の印象にはなってほしくなくて。水や高山病など気をつける点はありますが、それを補って余りある魅力があることを伝えられるよう心がけました。
最後に、今作は、生まれて初めて作った同人誌「ワンマン夏休み」Vol.1,2,3の続きを描き下ろして1冊にまとめ、完結編として書籍にしたものです。そのため、これまで安くない本(同人誌は個人印刷なので、どうしても割高に)を買ってくれていた方でも、「書籍を買ってよかった」と思ってもらえるよう、約100ページを描き下ろし、既出ページもできるだけ加筆修正しました。ワンマン夏休みから読んでくださった方も「昔からのファンも大切になさっている気持ちが伝わりました」とレビューを書いてくれ、よかったなと思いました。
――今回の作品のなかで、特に見てほしいポイントがあれば理由と共にお教えください。
メンタル不調気味だった私が、1ヶ月の旅を経て何を感じたのか、その心境の変化です。出発前はコロナ禍疲れや仕事の不出来、キャリアの悩みから、生きるのを休みたいレベルで落ち込んでいました。(気分の波は毎年のことですが…。)
それが、険しい自然をひとりバイクで走り、いろいろなトラブルを乗り越え、現地の方の温かさに触れる過程で、少しずつ自分らしい自分を取り戻して行きます。何かを作る理由なんて自分のためだけでよかったこと、意外と自分がたくましいこと、日常生活のかけがえのなさを実感します。
ただ、本書のこだわりは、それで元気になってハッピーエンド!とせずに、現実に戻ったら再び落ち込んだエピソードまで描いたことです。旅先での奮闘は現実社会と切り離されたところにあるので、旅をしたからといって仕事ができるようになるわけではないし、現実の悩みも解決!となるわけではありません。
でも、それでも。旅先で一生懸命だった自分が、さまざまな交流が、思い出が、ささやかに自分を支えてくれている。だからやっぱり少しは変化している。そういうリアルな結末を描きたかったんです。
当時の日記やツイートの言葉をそのまま使い、生っぽい感情を注いだので、バイク好きな方のみならず、私と同じように少し疲れている社会人や学生の方にも楽しんでいただけたら、心から嬉しいです。
本自体に関しては、デザイナーのAPRONさんがデザインも色も紙もものすごくこだわってくださって、例えば表紙が革のような質感なので、紙でお手に取ってくださる方はぜひご注目ください。
――ラダックでのバイク旅を終えられた今、一番バイクで走りたい国や場所はどこですか?
一番はかなり難しいですね…!笑
こんな旅ができる機会はもうなかなかないんじゃないか、と思いつつですが、ラダックもまた行きたいですし、広大なインドの他の地域も。
学生の時に訪れてその明るさと歴史に惹かれたペルーやグアテマラ。コロンビア。(モーターサイクル・ダイアリーズの影響)
広大な大地を冒険するモンゴルやキルギス。アルプス。アイスランド。地中海周辺。ニュージーランドも再訪したいです。
日本もまだまだ走りたくて、離島巡りをしたいと考えています。
バイクではありませんが、インドのチベット文化圏であるラダックを訪れたので、中国側にあるチベットをいつか訪れたいです。
――これまでに20カ国以上旅されたという里中さんですが、読者の方におすすめしたい国はどこですか?
まず、インドのラダックはとてつもなく広大な自然と奥深い歴史・チベット文化に触れられ、人も優しい方が多いので、おすすめです。本書を描き上げた後に、2度目のラダック旅に行ったほどです。デリーから飛行機で1時間半なので、意外とアクセスもしやすいです。(下痢と高山病には気をつけてください。)
インドはラダック以外にも、バラナシやコルカタ、アグラを訪れたことがあります。インドは好き嫌いが分かれるとはいいますが、私はインドの方の溢れんばかりのエネルギーに感化され、ものすごく元気がでます。(水と食べ物、都市部で向こうから話しかけてくる人には注意してください)
最近特に惹かれたのは、トルコです。2023年に1ヶ月間バイクで旅して、あまりにもよかったので、翌年2024年に新婚旅行で2週間旅しました。多様な宗教や文化、歴史、人種が入り交じるトルコの魅力はそこ知れず。モスクあり、教会あり、遺跡あり、グルメあり、絨毯あり、下痢なしで、何よりトルコで会う方が本当にフレンドリーで、行く先々でチャイを振る舞われおしゃべりするなど、とてもよくしていただきました。(ただどの国もそうですが、女性の一人旅の時はセクハラやぼったくりには注意してください)
他に、ホームステイやおしゃべりなど現地の方との交流が濃かったイラン、初めての海外旅行でそののんびりした雰囲気に心底癒されたベトナム、平原、砂漠、古都と魅力の付きないモロッコなど、これまで訪れた国はどこも大好きなので、また漫画などでご紹介したいです。
――里中はるか (はるか180cm) さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
直近では、1月15日(水)から2月17日(月)にかけて、UNITEDcafe世田谷と宮ヶ瀬にて、初の個展「女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。展」を自主開催しています。書籍の世界や旅の楽しさを感じられる展示になりましたので、お茶がてら遊びに来ていただければ嬉しいです。 詳細・在廊予定日やお問い合わせは、私個人のXをご覧ください。
また、形は変わるかも知れませんがこれからも旅をして、あるいは生活の中で、感じたことを漫画や絵日記にしていきたいです。
今回初めての同人誌制作、初めての漫画書籍刊行ということで、感じたことを形にする楽しさや、自分一人の体験だったものを本を通じて読者の方と共有できる喜びを、初めて知りました。レビューやSNS、イベントでご感想をいただけることが、本当に嬉しくて。
また、1冊の本を作るのに、ものすごいエネルギーと、たくさんの方の力が注がれていることを知り、それ以降本屋さんに並ぶ1冊1冊の本を見て圧倒される感覚を覚えるようになりました。そしてまた、本を作りたいなと。
無理のないペースで漫画執筆を続けて、みなさんに楽しんでいただけたらなと思います。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
本書は旅好き・バイク好きの方だけでなく、日常生活で少しお疲れの方、私と同じように日々悩める社会人や学生の方にも、読んでいただけたらと思って書きました。自分自身が漫画に支えられてきたように、誰かの楽しさや息抜きのお供になれば幸いです。
いつも応援してくださる方、読んでくださっている方は、本当にありがとうございます。お手に取ってくださったこと、ご感想が、心から嬉しいです。創作や生活の糧になっています。
引き続き作品を楽しんでいただければ嬉しいです!
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