玉袋筋太郎×植野広生が語る「雑味」の真価 「ブームじゃなくてライフにしろ」長く愛される味わいを継承する意味を語る
BSフジの「日本一ふつうで美味しい植野食堂」(毎週月〜木曜夜6:00-)と、BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」(毎週月曜夜10:00-)のコラボが決定した。局の垣根を超えたコラボレーション番組として1月13日(月)夜6:00~6:30に前編、翌14日(火)夜6:00~6:30に後編が放送され、BS-TBSでは1月27日(月)夜10:00~1100に1時間番組が放送される。街で営業する普通の店を訪ね、その味わいを楽しむという点で共通する両番組。放送を前に、MCを務める元「dancyu」編集長・植野広生と玉袋筋太郎に話を聞く。インタビューの後半では「人生を楽しむための方法」など、より2人の人生観について深く語ってもらった。
適当が生む「良い雑味」
――前・後編ともに、お2人の軽快な、気の知れたトークが敷き詰められているんだろうなという気がします。なかでも前編の「昭和あるあるトーク」というのがすごい気になるんですが…。
玉袋:俺が「昭和あるある」という本を出したんですよ。2024年が昭和99年で、2025年が昭和100年なので。100年を記念して本を出して、昭和「あるある」のいろいろなエピソードについての話をしたということです。
植野:本に書いてあることは全部思い当たることばかりなので。昭和の「あるある」トークといっても、昭和世代の僕らにとっては普通の話をしているだけなんですけど。たまたま、昭和がベースなんで。
――トークのさわりだけでも紹介していただけますか?
玉袋:「町中華あるある」みたいな話もしているかもしれない。ショーケースに「何でこれがあるんだ?」みたいな、そういう話が出てきています。五円玉で作った亀とか縁起物が置いてあったりとか、そういうのが「昭和あるある」じゃないですか。
植野:トークだけじゃなくて、飲んでいる時の所作にも昭和が出てくるんですよ。
玉袋:はっはっは。
植野:最初のお店で、おしぼり袋を開けるところから昭和ですから。
玉袋:そこから始まっている。
植野:ビールの飲み方も全部、昭和です。
――後編は玉袋さんがキッチンに入って料理をされるという内容です。普段の「町中華で飲ろうぜ」では料理をされることはないと思いますが、今回やってみてどうでしたか?
玉袋:楽しかったです。自分の手際でいいのかとか、自分の仕事でいいのかとか、不安はありましたけど。それでもどうにか着地できて、植野さんにも喜んでいただけたので、ホッとしています。
植野:本当に美味しかったです。
玉袋:「御前相撲」みたいなもんだからね(笑)
――「飲むことが好きな人」は美味しいものをわかっている人だと思うので、玉袋さんも料理センスはありそうな気がします。
玉袋:まあねえ。
植野:言い方は悪いですけど、いろいろな材料を用意してその場で「これ入れるか?」みたいなことをするわけですよ。でもつまみってそういうものの方が美味かったりする。料理雑誌を作っておいて何ですけど(笑)、レシピで何グラムとかやるよりもその時の気分とか飲み具合とか、いろいろなものでやった方が美味いものができると思うんです。それをまさに玉ちゃんはやっていただいたので。
玉袋:何というか、まだまだ人間として…よく例えるんだけど、毒蝮三太夫さんという人がいますよね。あの人は“ジェダイの騎士”の最高峰なわけですよ。フォースを使ってブアーッと、ね。まだまだ俺は自分がジェダイの騎士なのかどうかはわからないけど、俺から出たフォースが料理に入っていたら「俺もジェダイの騎士だったんだ」…という感じ?
植野:相当、フォースが入っていましたよ。店の中で光っていたもの。
玉袋:はっはっは。入っていました?植野さんもフォースを持っているわけじゃないですか。そのフォースが見られるからこそ「植野食堂」も人気番組なわけで。俺も「町中華で飲ろうぜ」の中でどこまでフォースを出せるかを、自分の中で課している部分があるんですよ。「昭和」というフォースを。
植野:作っていただいたものは本当に美味かった。この番組もうすぐ400回になる中でいろいろな人に教わってきて…正直、まあまあざっくりとした作り方をする人もいたんですよ。でも400回の中で、玉ちゃんが最も適当に作っていました。
玉袋:“最も”が俺なんだよね(笑)。
植野:でもその“適当”の良さ…適当の味がいいんですよ。例えば「雑味」にも余計な雑味と良い雑味があると思っていて。人生や落語でも、あるかどうかの「間」がだいじですよね。それがないとやっぱりつまらないんですよ。1回食べて美味いと思う料理も、たぶんもう1回作っていただいたら違う味がすると思うんです。でもそれが、味わいなんですよ。
玉袋:そうでしょうね。常習性のあるものですね(笑)。でもやっぱりそういうところを目指して、見ている方がそれを感じてくださったら幸いですよ。
植野:視聴者の皆さんも真似できるというか、自分なりの感覚で、自分なりの雑さで、味わいが出ますので。あれはぜひ真似していただきたいですね。
――後編では、3軒目で「人生後半戦の生き方」をテーマにお話もされています。どういうテーマでのトークだったのでしょうか?
玉袋:例えば、建物の築年数で言ったら俺は築57年(57歳)の古い建物ですよね。何というか、耐震ができないから、耐震構造を付け加えるような人生で生きていく。植野さんは築何年なんだっけ?
植野:僕は62年。
玉袋:築62年の建物ですよね。そういったところを2人がどういうふうにリノベーションするのかとか、補強するのかということ。ガラリと変えるわけではないけどね。
植野:するのか、しないのかということも含めてね。
玉袋:そう!管理組合が身体の中にいて「そこはちょっと変えましょう」みたいな話をしながらやるということ。それが「枯れていく」というか、味が出るわけじゃないですか。
見えない部分にある苦労が「氷山」を大きくする
――お2人ともすごく楽しく生きているイメージがあるのですが、楽しく生きていくコツなどはありますか?
玉袋:つらさは絶対ありますよ。楽しさを見せている部分なんかは氷山の一角で、実は見えていない部分ではものすごい苦悩とかがありますよね、人間ですから。それが見えない部分にあるから、大きい氷山になるという感じはします。
植野:「枯れる」ことも含めて、我々の世代は面倒くさいことをどんどんと排除していくというか…。
玉袋:断捨離というか、「もういいよ」と。
植野:人は子どもから大人になっていくと、だんだん面倒くさいことを抱えていくわけですよ。自分で集めてなくても、のしかかってくるものを僕らの世代はそれらを落としていく、排除していく。意識しなくても自然とそうなるんです。そうすると楽になるというか、自然体になれるというか。
玉袋:トラックでいえば、年を取れば取るほど過積載になっていくんですよ。家族だとか仕事だとか。過積載のまま走っていたら絶対、車はバーストする。だからどういうふうに荷物を降ろしていくのかとか、あとは背負っていたものを降ろしたあと、どれだけきれいに並べるのか…それを整理していくという感じなんじゃないかな。トラックの積み荷も、ルートによって順番に積んでいきますよね。それが人生の経験であって、それができるようになってくると「良い年の取り方」なんだと思います。
植野:我々のような昭和世代は色んな経験をしてくると、捨て方が上手になってきますよね。意識しなくても自然と、「トラックのこっちにベニヤ立てて」とかを考えなくてもできるようになっていくんです。
玉袋:そうそう(笑)それが大事。
――今後、「植野食堂」と「町中華で飲ろうぜ」が続いていく上でどんなことを視聴者に届けていきたいか、お2人の現在の思いをお聞かせいただけますでしょうか。
玉袋:「町中華で飲ろうぜ」はやっぱり、「捨てたもんじゃねえんだから」「良いもんだから」というイメージで。押しつけがましくなると人間、よくないからさ。わかる人が見て、理解してくださって「こういう楽しみ方があるんだ」というのを伝承していく。これが大事だよ。
町中華を食べに行ったことがない人も増えているわけですよ。そういうことではなく、「ああいいな」とか、「味があるね」「染みてるね」という感じの物の見方をすると「優しくなるよ」ということを伝えていきたいと思います。
――優しくなれるというのは素敵なことですね。
植野:町中華が今はブームと言われますけど、ブームとかそういう問題ではないですよね。やっぱりずっとベースであり、今後も日常の当たり前であるという。ある意味、ブームに対するアンチテーゼみたいなことを玉ちゃんはやってくれているわけじゃないですか。
玉袋:そう、「ブームじゃなくてライフにしろ」とよく言うんですよ。ライフだろと。ブームと言ってすぐ飛びついてしまう人がいるじゃないですか。健康食品とか健康法とか、すぐ飛びついちゃってなんでもやっている人がいるでしょ。そんなことをやったって、200年生きられるわけないんだからみっともないよと。ここは攻撃的に書いておいてください(笑)
――一過性の「ブーム」ではなく、日常の「ライフ」にしてほしいと。
植野:「植野食堂」は初回からそうですけど、日常にある普通の美味しさ…おじちゃんやおばちゃんたちが長年、代々にわたって普通に作っていますよという、普通のすごさ、日常にある普通のありがたさみたいなものを伝えたい…というとおこがましいのですが。
僕が視聴者の皆様に成り代わってお店へ行って食べて、厨房にも入れさせてもらって。そしていつも皆さんが食べている普通のお浸しとか野菜炒めとかが、実はこんなに丁寧に丁寧に作っているんですよということを、少しでもわかっていただきたい。翻訳者ではないんですが、お店の人たちが寡黙な分、僕が若干の日本語の遊びも交えながら紹介していければなと思っています。そこはずっと変わっていないですし、今後も続けていって、年に2、3回は玉ちゃんとコラボしたい(笑)
玉袋:はっはっは。
――職人の方は口下手の方も多いですし、そういう翻訳という部分も番組の役割でもあるのかなと思いますよね。
玉袋:「町中華で飲ろうぜ」という番組をやらせてもらっていて、もしそれに俺が出ていなくて、他の芸人がこの番組をやっていたら、絶対に嫉妬しますよ。それは植野さんも、もし違う「植野食堂」をやられちゃったら…。
植野:まあ、「植野食堂」ですからね(笑)
玉袋:そういう番組にしたいよね。ここは使わなくていいけど(笑)
植野:そのくらいの思いがないと、続けられないですからね。
――300回、400回と続いていますから、そうなっていると思いますけどね。
玉袋:そういう気持ちでやっています。
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