四千頭身・後藤拓実 撮影/松山勇樹

四千頭身・後藤、M-1と距離を取ってた「また頑張りたい、3人だからこそできる漫才を」

2024.12.27 06:03
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四千頭身のツッコミ、後藤拓実が『安心できる男』(中央公論新社)を上梓。書籍出版に際してコラムとネタとの違いから、漫才賞レースの最高峰『M-1グランプリ』との向き合い方まで話を聞いてみた。(前後編の後編)

今年のM-1グランプリでにわかにお笑いファンを騒がせたのが四千頭身の“復活”だ。2017年のM-1グランプリ準々決勝進出をきっかけにお茶の間でもブレイクを果たしたものの、近年は結果を残せず。2020年以降は最高でも3回戦進出にとどまっていた。

そんな中、今年は鬼門の3回戦を突破し、4年ぶりに準々決勝の舞台へ。「3回戦落ちが続いてからM-1というものから距離を取っていた」という後藤だが、今年に関しては思わぬ反応に驚きすら覚えたようだ。

「今年も3回戦までだろうと思っていたら意外とウケが良くて。こっちが勝手に距離を取っていたんですけど、ちゃんと見てくれているんだと思いましたね。YouTubeのコメント欄は毎年散々なんですけど、今年は好意的なものが多くて嬉しかったです。こんなに嬉しかったんだと再確認したし、今はまたM-1を頑張りたいです」

ネタ作りに関しても「細かいところを気にしたり、時間をかけるようになりました」と後藤。静かで集中できる図書館に身を置きつつ、これまで以上に「3人だからこそできる漫才」にフォーカスしたという。

「これまでは石橋から逃げていた部分がありました。使わない笑いみたいな、そういうのを残しつつ…ですね。ボケは多いほうが面白いと思うし、掛け合いを増やすと威力も変わってくる。これまではコンビでもできるネタもあったんですけど、今はトリオ漫才でしかできないことをやるのが武器なのかなと思います」

トリオでM-1グランプリ準決勝まで進んだのは2019年の四千頭身が最後。「トリオでは1位と自分で言っていた時期を思い出した」と失いかけていた自信を取り戻しつつある様子。一方で、『安心できる男』の中に残る過去の自分に対して、苦々しい感情があることも隠さない。

「当時は芯の尖り具合が違うし、嫌なコラムが多かったです。変な自信を感じる。あの頃の自分が書いていると思うと、気持ち悪い。書いている僕だから感じてしまうだけなのかもしれないですけど」

文章を書くのは元々苦手ではない。それでも、最初は1話800文字のコラムをどう埋めるかばかりを考えていたという。しかし、執筆経験を積んでいくうちに筆も進んでいくように。「慣れてくると文章が長くなってしまうこともあったので、どう短く伝えるかが大事になってきた」と後藤は執筆していく中での成長も明かす。

確かにエッセイを読んでいると、後藤独特の語り口が頭の中で再生するようで癖になる。後藤がエッセイの中で扱うテーマは過去の思い出から日常の疑問、生活の変化など様々。担当者からもらっていたものか、自分で思いついたものか、その時々によってテーマは違うと説明するが、文字を追っているとまるで彼の頭をのぞいているかのような気持ちにさせられる。

四千頭身のネタ作りを一手に背負う後藤にとって、ネタ執筆とコラムは「かなり違う。会話ができないので、必然的に自分語りになるし伝え方が難しいですよね」と話す。一方で、伝わる人に面白く届いてほしいという気持ちは同じだ。

「読者には面白く伝えないといけないのかなって。内容自体が面白くなくても、面白い言い回しを探したり、読者には面白く伝わるといいですね」

そんな書籍のタイトルは『安心できる男(ひと)』。「やっぱ今のご時世、みんな安心したいと思うんでね」とは後藤らしい。読者に向けてのメッセージでも「手にとっていただければどう伝わろうと、読んでくれればそれでいいです」と謙虚だ。

昔はカリスマ的な扱いを受けていたが、現在は同じワタナベエンターテインメントに本当の“カリスマ”が出現。リンダカラー∞のDenやぱーてぃーちゃんのすがちゃん最高No.1を間近で見たことで、「僕はこんなじゃないなと。あれがカリスマかと思いました。本人は本気でカリスマやっていないと思うんですけど、あれは本物です。僕にはできない」と差を実感したようだ。

あの頃の後藤が今の後藤になるまでにどのような変遷を歩んできたのか。そんな道のりも透けて見える作品が『安心できる男』となっている。

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