12月22日(日)に最終回を迎える「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)の舞台裏を、新井順子プロデューサーが語る

<海に眠るダイヤモンド>新井順子Pが語る大反響シーンの裏側と最終回「鉄平の告白シーンは神木さんの演出でした」

2024.12.21 15:00
12月22日(日)に最終回を迎える「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)の舞台裏を、新井順子プロデューサーが語る

神木隆之介が主演を務めるドラマ「海に眠るダイヤモンド」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)が、12月22日(日)放送の「海に眠るダイヤモンド 最終回2時間SP」(夜9:00-10:50、TBS系)でいよいよフィナーレを迎える。第8話では、炭鉱で再び石炭が採れ、端島が復活したら一緒になることを誓い合った鉄平(神木)と朝子(杉咲花)だったが、最後にいずみ(宮本信子)の口から語られたのは、鉄平がその日以来二度と端島に帰ってこなかったという衝撃の事実だった。

なぜ鉄平はリナ(池田エライザ)と共に島を去り、朝子の前に二度と現れることがなかったのか。そして、現代の玲央(神木/2役)といずみ、さらに2人を取り巻く人々の物語にはどのような結末が訪れるのか。WEBザテレビジョンでは、本作を手掛ける新井順子プロデューサーにインタビューを敢行。これまでの放送回で描かれた名シーンの舞台裏や、最終回の見どころなどについて語ってもらった。

「『6話が最終回でいいんじゃないか』みたいなことはすごく言われました(笑)」

――このドラマの発端となったのが、脚本の野木亜紀子さんと新井さんが長崎旅行へ行かれたことだったと以前伺いました。最終回まで完成された今、新井さんご自身の長崎への思いは結実されましたか?

そんな個人的な話は全然ないんですが(笑)、たくさんの元島民の方々にお話を伺って、撮影にもご協力いただきしましたし、現在東京にいらっしゃる島民の方もたくさんいて。そんな皆さんのお話を元に、実際起こったこととフィクションを混ぜながら野木さんが壮大な物語を描いてくださいました。

現代と過去をリンクさせていくのはなかなか高度なテクニックで、視聴者の皆さんも「このドラマどこに連れて行かれるのかな…」という感じだったと思うのですが、8話からようやく物語がしっかりリンクするようになって。考察や謎解きしがいがあるというか、複雑だからこそ見ごたえがある作品になったかなという気はしています。

――回を追うに連れて物語が盛り上がってきていますが、新井さんの元にはどのような反響が届いていますか?

先日放送された6話では、「もう6話が最終回でいいんじゃないか」みたいなことはすごく言われました(笑)。「7話が(予告の時点で)嫌な予感しかしない」って。こちらもそういう風に予告を作っているんですが、6話って物語の中では第2章の始まりと言える回なんです。

実は5話から6話の間って4年くらい時間が進んでいるんです。第2章ということで新たな展開も考えていたので。あと、6話ってすごく平和な回なんですよ。台風が来たり、夏八木(渋川清彦)が盗みを働いたり、労働闘争が起こったり、戦争をテーマにした話があったり、毎回盛りだくさんな中で唯一平和な回になっていて。

ほっこりしすぎたかなというか、「刺激がなかった」と言われるかなとも思ったんですが、最後の鉄平と朝子の告白シーンがものすごく評判が良くて。「お芝居がヤバい」とか「何なんですかあのお芝居は」とか「どうやったらああなるんですか?」ということを、本作に出演されていない俳優さんからもよく言われました。そこは思わぬ反響でした。

大反響の告白シーンは「フルバージョンもお届けしたい」

――6話の告白シーンは、視聴者の方々からも「名シーンだ」「これアドリブなの?」といった声が相次いでいましたが、このシーンはどのような意図で撮影されたのでしょうか?

告白のシーンについては、神木さんから「すごい望遠で、長回しで、ドキュメンタリーっぽくやりたい」という提案があったんです。「みんなが『これどうなっちゃうの?』『がんばれがんばれ!』って思うようにしたい」ってずっと仰っていて(笑)。まさに“神木演出”のシーンでした。

これは監督から伺ったんですが、監督はカメラマンに「下手に撮ってくれ」と言ったそうなんです。きれいに撮らないでちょっと素人が撮った風にしたいという思いがあって。それプラス、神木さんがいつ「好きだ」と言うのかは本当に誰もわからない状態だったので、ずっと一連で撮影していました。

神木さんはシーンを撮り終わった後も、その現場を見ていなかった人が現れたら「今こういうシーン撮ったんだけどすぐ見てほしい!」って仰ってましたね。それくらいご本人的にもチャレンジングだったのか、気合を入れていたのかもしれません。

杉咲さんも、告白されて思わずカメラに背中を向けて涙を拭く瞬間があるんですが、どういうリアクションをするかというのも誰にも話をされていなくて。杉咲さんが感じたままに、涙がポロッと出てきちゃったんじゃないかなと思います。

杉咲さんが本番中思わぬところで涙が出てしまうことは別のシーンでもあって。ご本人が「すみません泣いてしまいました…もう一回やった方がいいですよね?」と仰ったんですけど、監督が「そのままの方が良いから」とOKにしていました。本当に心でお芝居されているんだなと思います。

放送ではちょっと短くなっているんですけど、本当はもっといろいろなタメがあったり、「あの、その…」みたいなせりふがあったり、5分くらい(カメラを)回しているんです。フルバージョンもお届けしたいです。ディレクターズ・カット版でぜひ(笑)。

「いかに過去と現代がリンクできるかは常に考えていた」

――6話では鉄平と朝子の告白シーンだけでなく、賢将から百合子への告白シーンもあり、そちらもとても素敵なシーンでした。撮影時のエピソードやこだわったポイントについて教えてください。

監督の狙いで、日常の中でプロポーズしたいという思いがあって。結構周りにも人がいる中での告白シーンになっています。リハでは意外と普通に告白していたんですけど、OAでは賢将が抱きしめようとするから百合子が「やめてよこんなところで」と押し問答みたいになるんです。

6話は賢将のものと鉄平のものでプロポーズが2つあるじゃないですか。この差をどう付けるかということは、神木さん含めて考えていたんだろうなというのがあって。賢将が正統派で来るから、差を出すためにも「恋愛リアリティーショーみたいにしたい」という発想が出てきたのかなと思います。

賢将と百合子のシーンでは、2人のアドリブは無かったですけど、それを見ている神木さんと杉咲さんが2人で喜んでいたのはアドリブも入っています。あんなにキャッキャキャッキャしたりバンザイしたりしていたのはかわいかったですね(笑)。

――朝子たちが中心となり緑がない端島に屋上緑地を作るエピソードも印象的でした。「緑がない端島」の姿は、ある意味で現代の東京の姿とも重なってくるように感じますが、どのような意図でこのエピソードを描かれましたか?

屋上緑化は実際に端島で行われていたことなので、それを物語の中で生かしたいとなった時に、朝子にその仕事をさせようとなりました。現代でも(都市部を中心に)屋上緑化は進められているので、最終的にそことも繋げようとなりましたが、先に端島で起きたことがベースにあって設定されました。

屋上緑化に限らず、「いかに過去と現代がリンクできるか」ということは常に考えていたので、その一つである屋上緑化は「朝子の設定として使えるね」となって取り入れました。

――7話で描かれた炭鉱火災は、端島を描く上では外すことができないストーリーでした。実際に火が出ていたこともあり、撮影は過酷なものとなったのではと思いますが、現場の様子について教えてください。

7話の撮影は本当に大変だったんです。ほぼほぼ坑内か建屋にいるシーンで、坑内の撮影は(埼玉の)飯能と(兵庫の)姫路の方で行っていたんですけど、丸4日間くらい坑内に入って撮影していました。坑内はものすごく暑いという設定なんですけど、実際の現場はめちゃめちゃ寒くて息が白くなってしまうくらいで。

朝の8~9時くらいから夜まで坑内にいると、だんだん感覚が鈍ってくるというか。本当に炭鉱で作業されていた方たちの苦労が身に沁みました。爆破のシーンなども結構派手にやっていまして、実際に坑内に火を入れて撮影もしていましたが、よくやらせてくれたなと思います(笑)。

他にも「ここに放水してください」とか「ここを粘土で固めてください」とか、もうお芝居という感じじゃなかったですね。皆さん言われるがままに作業をしていたので、撮影している時は「今どこのシーンなんだろう」という感じだったと思います。なので、キャストやスタッフの皆さんは放送を見て「繋がってる!」となったんじゃないかなと。

「ちゃんぽんの島」端島を表現する上で欠かせなかった“方言”

――本作では杉咲花さん演じる朝子の役柄が非常に印象的で、特に「端島弁」のナチュラルなせりふ回しには毎回驚かされています。各キャラクターごとに方言の強さが違っているようにも感じますが、そうした方言のせりふでこだわられたのはどんなところでしょうか。

朝子は幼なじみである鉄平、賢将(清水尋也)、百合子(土屋太鳳)とは違い、1人だけ一度も端島を出たことがないため、フルで方言を話しています。一方、賢将は小学校4年生の時に東京から来たという設定なのでもともと標準語になっていて、鉄平と百合子は大学で島を離れていた時期があったのでなまりは強くない。

また、鉄平に関しては「外勤」という立場上いろんな方と接することがあるので、標準語にしようと決めました。ただ、6話くらいからちょこちょこなまり出しているんです。ナチュラルすぎて皆さんあまり気づいていないかもしれませんが(笑)。

その他のキャラクターでは、進平(斎藤工)は朝子と同じくらいなまっています。一平(國村隼)は関西なまりが入っていて、ハル(中嶋朋子)は長崎なまり。そして、端島は「ちゃんぽん」の島なので、鉱員役の方々には「皆さんそれぞれ自分の地元の言葉でしゃべってください」とお伝えしています。

台本上は全部標準語になっているんですけど、鉱員として端島に出稼ぎにやって来た人々はそれぞれルーツも異なりますので、それを方言を通して表現しています。

――いづみの正体が朝子であることが判明してから、視聴者の皆さんの盛り上がりも一気に増していきましたが、その時に1話からさまざまな伏線があったことに気付いた方も多くいました。まだバレていない伏線などあればぜひ教えてください。

食堂で花瓶に花をさしていたのが現代での仕事に繋がっているのはわかると思いますが、ヘアピンを付けていることと、キラキラしたものが好きなこととなども気づいた方が多かったみたいですね。

それと、皆さん「きくらげ」って気づいていましたか? 食堂ではちゃんぽんにきくらげが入っていたんですが、1話で和馬が「何できくらげ入れるかな~」と文句を言っているシーンがあって。そこも繋がっています。

あとはカステラが好きってことですかね。1話からカステラは出ていたんですが、朝子がカステラが好きだとわかるのは6話だったので、気付いた方はあまりいないかもしれません。

「石炭が出たシーンは感情豊かに撮られていて非常にグッときました」

――池田エライザさん演じるリナは、本作ではかなりの「呪い」を背負ったキャラクターとして描かれてきましたが、撮影時の池田さんの印象的なシーンなどありましたら教えてください。

2話の台風のシーンでは、何度も雨風にさらされながらも、進平との関係を予感させる非常に良い表情を切り取れたと思います。憂いのある表情がとても良くて。夏なのにずっと濡らされていたので待ち時間には震えていましたが、本番はそんな素振りは見えず女優魂を感じました。最終話でも圧巻のお芝居です。

――リナの素性について、「博多のクラブ・フロリダから逃げてきた」という事実以外の詳細がここまで語られておらず、「結局リナは何をして追われているのか」などは謎のままです。最終回ではリナの過去はどこまで明らかになるのでしょうか。

答えると楽しみがなくなると思うので(笑)、ぜひ放送をご覧いただければ!

――台本においては何げないせりふやシーンだったものが、映像となることで何倍にもイメージが膨らんだ印象を受けました。新井さんの中では、そうしたシーンは想像以上の仕上がりだったのか、それとも思い描いていた通りの仕上がりだったのでしょうか?

やっぱり「ここがこうなるんだ」と思ったシーンは多かったです。特に8話の石炭が出たシーンは、台本上ではト書きが多かったんですが、すごく感情豊かに撮られていたので非常にグッと来ました。

アドリブか演出かはわかりませんが、鉱員たちが子供の頃の鉄平にやっていたようなことをしていたり、とにかくキャストの皆さんの顔が生き生きしていて。撮影終盤に撮ったシーンだったので、距離が近いというか、チームとしての結束感がよく表れていた感じがしました。

それから、最終回に閉山式のシーンがあるのですが、台本に「北村が一人座り、たばこを吸っている」というト書きがあるんです。そこで超長回しで撮ったんですけど、それを見てスタッフが泣いていました。北村は一言もしゃべっていないのに、ただただ建屋を見てたばこに火を点けて吸うだけなんですけど、それがどういう形で繋がるのか楽しみです。

やっぱり(北村役の中村シュンさんのように)人生を経験されてきた方の表情とかニュアンスは、20~30代には出せない貫禄、辛さ、寂しさのようなものがありました。塚原監督も現場に下りてきて「泣きました~!」って仰っていました(笑)。

「自分の人生と地続きなもの、未来へ繋がっていくものを見つけてもらえたら」

――撮影するシーンが多く、ロケーション的にも大変な部分も多かったと思いますが、一方で現場にはすごく和やかな時間が流れていたのが印象的でした。そうした現場の雰囲気は誰が率先して作っていたのでしょうか?

キャスト陣はやっぱり神木さんが話の中心になっていてくださって。あとは百合子と朝子が仲良しなので、学校の休憩時間みたいな感じになっていました(笑)。現場にはベースの後ろにテーブルがあるんですが、そこでみんなが座ってしゃべっているという。みんな仲良しです。

――本作は積み上げられてきた「過去」へのリスペクトを感じさせながらも、玲央のような若い世代や「未来」に繋いでいくことへの意識も感じます。そうした思いは物語を作るにあたって込められたのでしょうか?

そうですね、時代は繋がっていて、自分の道の先にも未来はあって。未来が変わっていくのかどうか、それともうまくいかないのか。

登場人物たちには、現代のように便利なものはそこまで無い時代にキラキラしたものがあって。8話で玲央が「俺もダイヤモンドが欲しい」って言いますけど、玲央は(自分にとっての)ダイヤモンドを見つけて、どうなっていくのか? このドラマを見たことで、そうした自分の人生と地続きなもの、未来へ繋がっていくものを見つけてもらえたらいいなと思います。

――最後に、本作をご覧になっている視聴者の皆さんへ向けてメッセージをお願いします。

すべての謎が解き明かされまくる2時間SPとなっています。時々視聴者の方から「私は過去派」「私は現代派」みたいな話を聞きますけど、皆さん興味のあることや注目している人が違っていて。現代では新しいキャラクターも登場して、「本当に人生は地続きだな」という感じです。

ぜひ最終回を見ていただいてから、もう一回1話から見ていただきたいです。「だからこういうことになったのか」となるはずなので。考察されている方はご自身の考察合っているのかご確認いただき、されていない方はただただ登場人物たちの人生を見届けていただければと思います。

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