語学留学よりも俳優業に専念と語る土屋直武、演劇【推しの子】出演は「芝居が上手ではない役柄をどう演じるかが今の悩み」
ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン、「チェンソーマン」ザ・ステージなど、さまざまな人気作に出演している土屋直武。12月13日(金)開幕の演劇【推しの子】2.5次元舞台編で鳴嶋メルトを演じることでさらに注目を集める土屋に、デビューからこれまでを振り返ってもらい、自身の成長や未来について語ってもらった。
留学への思いが後押しした芸能界デビュー
――まずは芸能界に入ったきっかけを教えてください。
高校を卒業後は語学留学をするつもりだったのですが、サロンモデルにスカウトされたことをきっかけに、「日本でやり残したことがないようにしてから留学をしよう」と考えるようになって、現在所属している事務所のオーディションを受けることになりました。
――もともと芸能界への憧れがあったということですか?
はい、ありました。K-POPやSMAPさんが好きで、ライブを見に行ったりしていたんです。ステージに立つだけで、ファンの方々を笑顔にしたり、喜ばせたりしている姿が本当にすごいことだと思っていたんです。だから、僕も自分の力で誰かを幸せにできたらいいなという憧れはありました。でも、当時は自分には向いていないだろうなとも思っていて…。留学を考えたことで、「一歩踏み出せないでいたことに挑戦してみよう」という前向きな気持ちが生まれたんです。
舞台作品へのドライなイメージを変えた“テニミュ”の現場
――その挑戦が実って、2021年にダンス&ボーカルグループでデビューされました。
日本で活躍するグループの方々は、お芝居やバラエティーなど、ソロでもいろいろなことに挑戦されているイメージがありました。グループという「戻る場所」があることで、さまざまなことにチャレンジしやすいのかなと思ったんです。そのため芸能界を目指した当初からグループでの活動に興味を持っていました。
――そしてすぐに、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンで伊武深司役を射止めましたが、初めての舞台はいかがでしたか?
お芝居の経験もなかったのですが、オーディションのお話をいただいたとき、「やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいい」と思ったので挑戦することにしました。ありがたいことに役をいただけたのですが、すべてが初めてのことだらけで業界用語、舞台用語も全然分からず、最初は戸惑うことばかりでした。それでも、大変さを感じつつも想像していた以上にお芝居は楽しかったです。
舞台作品に対して、公演が終わったらキャスト同士の関係性もなくなるんじゃないかというドライなイメージを持っていたのですが、“テニミュ”のメンバーとは今でも連絡を取り合うくらい仲良くなれました。ダンスが苦手な子に得意な子たちが教えてあげたり、できるまで一緒に練習をしたりと、本当の部活みたいな雰囲気で楽しかったです。
――部活といえば、中学では副部長、高校で部長、ボーカルグループではリーダーをされていたとのことですが、人をまとめるポジションを務めることが多いですね。
人をまとめるのが得意というよりかは、真面目な性格なんだと思います。中高は部長が指名制だったのもあって、そういうポジションに就くことが多かったのかなと思います。
――“テニミュ”の現場でもまとめ役を?
伊武の所属する不動峰は熊沢学くん演じる橘 桔平が部長なので、例えば「そろそろ歌の練習をしよう」というようなことを学くんにそれとなく伝えて、学くんがメンバー全員に発信してまとめることで、不動峰らしいチーム感が出るんじゃないかなと考えていました。
初めて芝居の本質に触れた「心霊探偵八雲」
――その後、さまざまな作品に出演するなかで感じた俳優業のやりがいについて教えてください。
2024年は、2月に特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」-呪いの解法-、9月にはミュージカル「七色いんこ」と“テニミュ”からお世話になっている三浦香さんが演出を務める舞台に出演させていただきました。以前から三浦さんには「お芝居の基本を学ぶといいよ」とアドバイスをいただいていたのですが、当時はどういうことかちゃんと理解できていなかったんだと思います。「心霊探偵八雲」のときに、せりふをせりふとしてとらえずに、自分の感じた言葉と気持ちでお芝居をするということに挑戦して、そこで初めてお芝居の本質に触れたような気がしました。
――お芝居の本質を知ることにより、ご自身の成長も感じられたんですね。
「七色いんこ」のときは、舞台上で役として生きていないとすべてのシーンが成り立たないということを実感することがあって。そしてそれは僕だけが頑張ればいいわけではないし、キャストやスタッフさん全員で作り上げていくものなんだなと。そういうお芝居の基本的な部分をこれまでよりも深く知ることができたと思いました。
お芝居は突き詰めるほど難しくて正解がないものだと思いますので、正直、そのうち嫌になるかもしれないと最初は思っていたんです。でも今は、僕が誰かを演じることによって、お客様が面白い、楽しいと感じてくださることがすごくうれしいですし、僕自身も自分が何者にもなれるんだという可能性を感じられるようになったので、それがやりがいです。
――12月に開幕する演劇【推しの子】2.5次元舞台編には、鳴嶋メルト役でご出演されます。【推しの子】は一大ブームを起こした話題作が原作ですが、出演が決まった際の印象は?
まず、「【推しの子】に出られるの?」と驚きました。原作、アニメ、主題歌も含め、とても人気がある作品ですし、2.5次元舞台編と聞いたときは「本当に舞台にしちゃうんだ!」と興奮しました。
――本作は劇中劇の舞台化ということで、役作りがむずかしそうな印象です。
そうですね。ただ、2024年は劇中劇をやる役が結構多かったので、その経験を生かしていきたいです。でも、メルトくんはあまりお芝居が上手ではないという役柄なので、それをどう表現していこうかというのが今の悩みですね(笑)。
映像作品にも興味「俳優業についてしっかり学んでいきたい」
――今後のビジョンとしては、どう考えていますか?
今は2.5次元作品を中心に活動させていただいていますが、ストレート作品やミュージカル、そして舞台だけではなく、映像のお芝居にも挑戦していきたいと思っています。デビューしてから今日にいたるまでで、俳優としての基盤が少しずつ築けてきたと感じているので、ここから視野を広げていろいろなことに挑戦していきたいです。
芸能界に入るまで、舞台もそうですし、ミュージカルもあまり見に行く機会がなかったので、たくさんの作品を見て勉強していきたいです。今の自分には何が足りないのかを考えて、しっかり学び、目指すものへアプローチをかけていけたらいいなと思っています。
――ちなみに、芸能界は留学前にやり残したことがないようにと飛び込んだ世界ということでしたが、留学もいつかは…と考えているのでしょうか?
1つのことにしか集中できない性格なので、今は俳優業にしっかりと向き合っていきたいと思っています。でも、語学の勉強もしたいので、両立できる方法についても模索していきたいですね。
◆撮影=渡会春加
取材・文=榎本麻紀恵
スタイリング=齋藤良介
ヘア&メーク=田中宏昌
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