幼き“ヨヌ”の遺書に涙が止まらないキム・スヒョン“フォン” 月の記した文字が運命を加速させる第10話<太陽を抱く月>
キム・スヒョンが主演を務める韓流ドラマシリーズ「太陽を抱く月」(Huluにて配信中)。2012年に全20話が放送された大人気ドラマシリーズである同作は、朝鮮王朝の架空の時代に繰り広げられる宮中ラブストーリーを描いた作品。第10話では周囲からホ・ヨヌ(ハン・ガイン)を忘れられずにいるイ・フォン(キム・スヒョン)に対し、ホ・ヨム(ソン・ジェヒ)らがある進言する。(以下、ネタバレを含みます)
"もうホ・ヨヌはいない"ということを受け入れられないイ・フォン
夜、厄受け巫女としてイ・フォンの寝室を訪れたウォル。イ・フォンは寝ることなく起きておりウォルを待っていた。癒すという言葉に責任を持てというイ・フォンは、胸の痛みと政務の疲れを忘れさせてくれとウォルに迫る。そのとき王妃ユン・ボギョン(キム・ミンソ)もイ・フォンの寝室に忍び込もうとするが、王の護衛であるキム・ジェウン(ソン・ジェリム)によって止められる。
ユン・ボギョンは「心配で来ただけだ。王様には黙っていろ」と従士ヒョンソンらに命令し、その場をあとにする。悩みが増えたことにヒョンソンが溜息をついていると、寝室のイ・フォンから声がかかった。怪我をしているウォルの治療のため、御医を呼べという指示だ。
王族のために存在する御医を巫女のためにはと渋るヒョンソンだったが、「私の呪符のためだ」と命じられ命令に従うことに。また寝室から下がったキム・ジェウンは、他の兵からウォルが持っていたとする手紙を受け取るのだった。
御医によってウォルの身体へ治療が施されている間、イ・フォンはじっとウォルを見つめ、ウォルもまたイ・フォンを見つめ続ける。その日の夜も眠るイ・フォンのそばに居続けたウォルは、イ・フォンが目覚める前に退室。しかしイ・フォンはまだ眠っておらず、目を薄く開いてウォルの背を見送る。
翌日、ウォルが持っていた手紙はキム・ジェウンからイ・フォンへ。「野草は美しくなくとも使い道があり、巫女は人でなくとも王様の民なのです」と記された手紙を読み、「巫女も人だから尊重しろと?強烈な忠告だな」と笑うイ・フォン。しかしヒョンソンが横から「漢字がわかる上に中々の文字ですね」と満面の笑みでほめそやし、小さく舌打ちを返す。
ヒョンソンの言葉を受けて、イ・フォンの脳裏には聡明で学識豊かな才女ホ・ヨヌの記憶が駆け巡る。そんなイ・フォンに、ヒョンソンは務めて優しく声をかけた。「あの者は巫女です。王様のおそばで仕えて来た私です。お顔を見ればお考えはわかります。どうか、惑わされないでください」と語るヒョンソンに強がるイ・フォン。しかし「あの者はヨヌではありません。似てはいても、もうヨヌは…」という言葉には、さすがに激情をあらわにした。
しかしヒョンソンは引き下がらない。昨晩、王妃ユン・ボギョンが部屋を訪れていたことを打ち明け、「女の自尊心を捨て中に入らず帰られたのです。おつらかったでしょう。どうか、王妃様のご心情をお察ください」と進言する。
ヒョンソンの忠言もあり、イ・フォンは王妃ユン・ボギョンと2人の時間を設けた。顔色が悪いユン・ボギョンに悩みごとでもあるのかと問うと、ユン・ボギョンはイ・フォンの健康以外に悩みなどないと答えつつ、続けて昨晩は眠れなかったとこぼす。そんな彼女に、イ・フォンは昨晩寝室に来たことを挙げて「何を監視しようとした?」と鋭く切り込む。そして「何を目にし、何を聞いたとしても人はいなかった。王妃が見たのは…きっと呪符だろう」と冷たく告げた。
さらに1カ月後に子作りの日取りに触れるイ・フォン。内医院と観象監から子作りの日までイ・フォンとユン・ボギョンはお互いに近づかず、心身を浄化するように指示があった旨を伝える。言外に“それまで寝室には来るな”と宣告したイ・フォンが退室すると、残されたユン・ボギョンは怒りに震えながら厄受け巫女を徹底的に監視するように命令を発する。
「本当に――会ったことはないか?」
次にウォルがイ・フォンの部屋を訪れたとき、イ・フォンは受け取った手紙について「きつい忠告だった。私への恨みが十分すぎるほどわかったぞ」とウォルに語る。しかしウォルはすかさず「心からの進言と私的感情による恨みは別物です」と伝え、王様の民として任務を果たす覚悟を示しただけだと反論。ウォルはイ・フォンが意図を曲解して受け取っていると伝えるが、イ・フォンは「相手が誰か忘れたか」と憤る。「私はこの国の…」言いかけた言葉は、奇しくも幼い頃のホ・ヨヌに向けた言葉と同じものだった。
言葉を切ったイ・フォンは、ヒョンソンを呼び付けて息苦しいから散歩へ出ると伝えて外へ。「呪符なら早くついてこい」と一方的に言葉にして、ウォルと連れ立って歩き出す。
キム・ジェウンやヒョンソンをはじめとした護衛や臣下たちを遠ざけ、イ・フォンはウォルと2人だけで散歩をはじめる。やってきたのはある建物だ。そこは8年前にイ・フォンとホ・ヨヌの2人が、ホ・ヨヌの病を理由に離れ離れにさせられた場所だった。霊力によってイ・フォンにとって悲しい過去を持っている場所だと悟ったウォルはそれを問うが、イ・フォンは強引にウォルを抱きしめる。
霊力で過去を知ったウォルに、その霊力で“これから何をするのか”当ててみてくれと告げながら頬に触れるイ・フォン。「私が巫女のお前を――抱けると思うか?」「おやめください」そんなイ・フォンとウォルのやり取りに、そばにいた臣下たちはそっと目を背ける。そして全員の目が2人から離れたことを確認した瞬間、イ・フォンは突如ウォルとともに走りだした。
イ・フォンはある部屋へ逃げ込むと、改めて「お前は何者なのだ?」とウォルに問う。「巫女のウォルです」と答えるウォルに、「いや、ウォルではない」とイ・フォン。しかし名を持たなかった巫女にウォルと名付けたのは他でもないイ・フォンだ。指摘されたイ・フォンだが、それでも「私を知らないか」と涙を浮かべながら問いかける。
「本当に――会ったことはないか?」続いた言葉に、ウォルは自分のなかに誰を見つけようとしているのか、自分を通して誰を見ているのかと答える。「ヨヌ――その方ですか?」まっすぐに見つめるウォルは、仕えさせる理由は彼女(ヨヌ)に自分(ウォル)が似ているからかと問い、その上で自分は別人だと語る。
「黙らないか。分をわきまえろ、私は心まで開いていない。お前は単なる厄受け巫女だ。お前ごときが…なぜだ。何の資格があって私を…」涙を浮かべながら憤るイ・フォンは、そこで言葉を切ってしまう。続く「惑わせるのだ」という言葉は心の中でこぼすだけで、ウォルには伝えられることはなかった。イ・フォンはウォルに背を向け、「もうこれ以上度を越したら容赦しない」と一方的に言いつけて部屋をあとにするのだった。
ウォルは赤くはらした瞳で夜空を見上げており、そこにチャン・ノギョン(チョン・ミソン)がやってくる。王様のおそばで仕える時間だと語るチャン・ノギョンに、「私は誰ですか?」と悲しそうに問うウォル。他人の記憶が鮮やか過ぎるほどに見えてしまうことに戸惑っていると相談すると、チャン・ノギョンは過去に囚われるなと助言する。
だがウォルの「いくら似ていても、本人になれないでしょう」という言葉を耳にして、真実を知るチャン・ノギョンはただ言葉を失う。残酷すぎる運命は、いつまで2人を翻弄するのだろうか。
ホ・ヨヌ最期の手紙が、改めて運命を動かす
翌日、ホ・ヨヌの兄であるホ・ヨムは王宮へ向かう。「お呼びしなければ来てくれないのですか?」と微笑むイ・フォンに出迎えられ、ホ・ヨムは自分から挨拶をさせてくださいと語る。久しぶりに出会う師と2人だけで話すとヒョンソンに伝え、他の者を下がらせるのだった。
ホ・ヨムが差し出したのは、ホ・ヨヌが遺した置手紙。ホ・ヨムはたとえ遅くなったとしても、イ・フォンに届けることが道理だと語る。「妹が夫として慕った方は王様ただ1人です。罪人の手紙なので、燃やしてもかまいません。すべて王様に委ねます、それでこそ――あの世で妹が喜ぶでしょう」と語り、「ただし王様、これで妹をお忘れください」とホ・ヨムは頭を下げる。
いまの相手は王妃であること、彼女に寂しい思いをさせないこと、妹の影から抜け出せないこと…それらは妹も望んでいないはずですと嘆願するホ・ヨムに、イ・フォンは涙を流しながら「誰もが忘れろというのだな」と悲しみに染まった笑みを見せるのだった。
1人になったイ・フォンは、ホ・ヨヌの手紙を開いてその内容に目を通す。
「世子様、最後の力を振り絞り、これを記します。ご迷惑になるでしょうか、お手元に届かないかもしれませんが、書きます。私はこの世を去る前に、世子様を拝見できただけでとても幸せでした。ですから、もうご自分を責めず、私のことは思い出になさってください。もうじき私の父が薬を持ってきます。そうしたら、もう2度と世子様にはお会いできないでしょう。どうか私のことはお忘れになり、お元気でいてください。万世、輝く聖君になられますよう」。ホ・ヨヌからの最期の手紙を読み、イ・フォンは涙を流して心情を漏らす。
「私の身体を気遣うとは…死ぬ直前までだぞ。死力を尽くした手紙だ、なのに私は…情けない。どれだけ苦しんだか、どれだけつらかったか…あの美しい字が…これほど乱れるとは…」泣き崩れるイ・フォンは、同じく涙を流すヒョンソンに華角箱(ファガクハム)を持ってくるように告げる。「思い出せないのだ。ヨヌの字が…思い出せない…。見たい。私にくれた手紙を、もう一度読む」イ・フォンが途切れ途切れの言葉で出した指示に、ヒョンソンは従う。
やがて持ち込まれた華角箱の中に納められていた手紙を見つめ、その美しい字に涙を流すイ・フォン。13歳の少女の文字とは思えないその美しさに触れたとき、イ・フォンの心に電撃が走った。何かに気付いたイ・フォンはウォルからの忠言が書かれた手紙を取り出し、ウォルの文字とホ・ヨヌの文字を見比べる。そして切迫した声で、キム・ジェウンにウォルを呼び寄せるように強く命じるのだった。
ウォル、そしてホ・ヨヌという月を求める2つの太陽
第10話では、ウォルとホ・ヨヌの筆跡から大きくストーリーが動く予感を見せた。さらにかつての師としてイ・フォンに妹を忘れるよう進言したホ・ヨムや、そばに居続けて来たヒョンソンが見せた忠義が特に印象に残る展開となっている。
本当に主を思うが故の言葉は、発した本人たちをも傷つける諸刃の剣だ。主がどれほどホ・ヨヌを想っているのかを知っていればこそ、未来へ進めという進言がどれほど重く、苦しい忠言なのかがわかるというもの。
それでもホ・ヨヌの影から抜け出すことのできないイ・フォンとヤンミョングン(チョン・イル)。彼らの悲しいすれ違いは、どのような結末へと向かって行くのか。そして“行動しなかったこと”を悔いるヤンミョングンが、今後どのように行動していくのか。故人を想うだけではなく、未来へ進むために臣下たちも動き始めた「太陽を抱く月」。Huluにて全20話が配信中だ。
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