「SHOGUN 将軍」は、ディズニープラス「スター」にて独占配信

<SHOGUN 将軍>すべては真田広之の“長いリスト”から始まった「エミー賞」18冠の裏にあった制作秘話5つ

2024.09.27 08:10
「SHOGUN 将軍」は、ディズニープラス「スター」にて独占配信

9月15日(現地時間)に授賞式が行われた第76回エミー賞にて、「SHOGUN 将軍」が、作品賞、主演男優賞、主演女優賞など同賞史上最多18部門を受賞した。快挙の背景にあったのは、プロデューサー兼主演俳優としてチームを支えた真田広之と、彼を中心に一つにまとまったプロダクションの結束。情報解禁から快挙までの間に当メディアが取材した「SHOGUN 将軍」に関するさまざまな情報から、彼らが一丸となって作品作りに打ち込んだことが分かる製作秘話5つをあらためて紹介する。

秘話1:真田広之自作の“長いリスト”から始まった

戦国時代の日本をモチーフにしたジェームズ・クラベルのロングセラー小説を「トップガン マーヴェリック」のジャスティン・マークス氏らが新たに映像化した「SHOGUN 将軍」。1600年代の“天下分け目の戦い”前夜の日本を舞台に、戦国最強の武将・吉井虎永(真田)、漂着したイギリス人航海士ジョン・ブラックソーン(のちの按針/コズモ・ジャーヴィス)、ブラックソーンの通訳を務めることになったキリシタン・戸田鞠子(アンナ・サワイ)らが直面する陰謀と策略を描いた物語だ。

真田が俳優としてだけでなく、プロデューサーとしても携わることが決まり、企画が動き出した。エグゼクティブ・プロデューサーのマークス氏とレイチェル・コンドウ氏は、初対面時に真田に渡された長いリストが印象に残っているという。

「(大きく手を広げて)こんなにも長いリストを彼からもらいました(笑)。例えば、『所作の指導者に参加してもらう』『衣装、メイク、小道具に関しても日本の専門家にしっかりと見てもらう』とか。時代考証に関しても、きっちりと行うというようなことが書かれていて。そのリストをもとに、制作も進めていきました」(マークス氏)

作品を紹介する場で一貫して「日本を世界に正しく紹介したい」と語ってきた真田。「そのためには、日本から招いた専門家に加わってもらわなければならない」と当初から考えていたことが分かるエピソードだ。

秘話2:何往復も繰り返した脚本作り

そんな真田自身が「大変だった」と振り返ったのは、脚本作り。アメリカで制作されるドラマだが、リアルな世界を構築するため日本人キャストのセリフはすべて日本語とし、その上で英語字幕をつけることにした。

「脚本作りの段階で吟味したのは、原作を尊重しながらも、日本人が見て『これっておかしいよね』と思わないようにすることでした。台本が上がってきたら翻訳者に渡して、翻訳したものを劇作家に渡してセリフになって返ってきたら、それを逆翻訳してジャスティンに送り返す、というのを何往復も繰り返して1話1話作っていきました」(真田)。丁寧に時間をかけて違和感を一つずつ潰していく、根気の要る作業によって「SHOGUN 将軍」の世界観が構築されていった。

秘話3:屋内のシーンでも「中から外の“庭”を撮る」という発見

撮影の進め方も、日米どちらかのやり方にこだわるのではなく、両方のいいところを採用していく方法をとった、とマークス氏は言う。真田が作成したリストをもとに、時代劇の経験豊富な日本人クルーを各所に配置。各部門のアメリカ、カナダ、日本のスタッフが「なぜこれが間違っているのか」という疑問を一つ一つ納得するまで話し合いながら信頼関係を作っていった。

その過程で各国スタッフの異文化理解がより深まり、それが作品にいい影響を及ぼすこともあった。

物語の舞台は日本であるため、セットの建物も日本家屋。前述の記事によると、撮影時、米側スタッフが背景の壁が殺風景で悩んでいたところ、日本人スタッフが「日本の家屋は室内から庭を望むように作られている」とアドバイス。そこで見た景色に米側スタッフはみな驚いたという。「外から中を撮るんじゃなくて、中から外の庭を撮る。カメラを置く位置を変えただけで、全然違う風景が広がっていました」(コンドウ氏)

秘話4:“名もなき侍”役まで日本人、ケータリングに日本食

本作では、メインキャラクターはもちろん侍A、B…といった“名もなき侍”もふくめ、日本人役を日本人俳優が務めている。撮影前には徹底したブートキャンプ(訓練合宿)も実施。 日本人キャストはみな、所作監修スタッフによる指導の下、着物の着方や歩き方、座り方、障子の開け方などを徹底確認したほか、殺陣も猛特訓を重ねて本番に臨んだ。日本人俳優のためにケータリングした日本食は現地スタッフにも好評で、1日に90~200人分が用意されたという。

刀を使った殺陣や馬術、弓術はもちろん、これまであまり描かれてこなかった女性陣の戦い方も、専門家の監修の下、忠実に再現された。なぎなたで戦うシーンのある鞠子役のアンナ・サワイは、扱い方を特訓。「女性は戦闘中も足を開くことが許されないから、なぎなたで距離を保ちつつ戦う」と女性ならではの戦い方について学んだことも明かした。

秘話5:「ディズニーアトラクション」のようなセット

スタジオFXの創業以来、最高額の予算が投じられたという本作。真田がメイキング映像で「毎日、毎カット、細かく確認した。日本の史実や文化を忠実に守った。すべて計算してある。細部へのこだわりが大きな変化を産む」と語った通り、そのこだわりは細部にまで徹底しているが、やはりインパクトが大きいのは莫大な予算をかけて作られたハリウッドの力技と言われる巨大なセットだ。

「嵐のシーンのセットも、空中に浮かんで自動で操縦できる実物大の船を作ってしまって、その上にウォータータンクがあって、実際に役者を乗せて船を揺らしながら水がダーッと流れてくるんです。それをカメラマンが手持ちのカメラで撮影するという、ディズニーのアトラクション的な感じでした(笑)」と真田は振り返る。

樫木藪重(浅野忠信)がおぼれかける崖下のシーンも、セットの崖に数トン単位の水を流して生み出したという。「忠信くんも体を張った演技を見せてくれています。そういうスケールの大きさとダイナミックなところと、繊細な日本の美学というのが今回のテーマだったので、その辺りが見てくださる方に伝わるといいなと思っています」(真田)

けた違いの規模の予算と人員、労力をかけて作られ、歴史的快挙を成し遂げた「SHOGUN 将軍」。海外では、配信日の火曜日が“Toranaga Tuesday”と呼ばれ、SNSで“Marikosama”や“Fujisama”がトレンド入りするなど大きな反響を呼んだ。

その中心で大車輪の働きをした真田は、「これが配信されて、さらに日本の題材や人材を紹介する作品がどんどん増える。その架け橋にこの作品がなればいいなと思いますし、また機会があればプロデューサーとして日本の素晴らしいタレント、スタッフ、美学を紹介していければいいなということも思っています」と語っていたが、その言葉通りFXは、すでに本作のシーズン2&3の制作を決定した。あの壮大な世界で紡がれる新たな物語の誕生が今から楽しみでならない。

“正しい日本を伝えたい”という真田とプロダクションの熱い思いから生み出された稀代の歴史ファンタジー「SHOGUN 将軍」は、ディズニープラス「スター」にて全話独占配信中だ。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

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