ドラマ『量産型リコ』三女・香絵役をオーディションで射止めた新人俳優・佐月絵美、演技審査での秘話を告白「女子高生っぽくというより少しおじさんぽく演じました」
現在放送中のテレビ東京 木ドラ24『量産型リコ-最後のプラモ女子の人生組み立て記-』(毎週木曜 深夜24:30~)で、主演の与田祐希(乃木坂46)が演じる主人公・リコの妹、香絵を演じている佐月絵美。2021年『第2回スター☆オーディション』のファイナリストとなったことがきっかけで芸能界デビューを果たし、短編映画『ワタシって何もの』(奥田瑛二監督)主演、映画『ブルーピリオド』(萩原健太郎監督)など、映像作品を中心に活躍している注目株の新人俳優の一人。
オーディションを経て、初の連続ドラマレギュラー出演を勝ち取った彼女に、同ドラマへの出演が決まった際の想いや、香絵と自身の共通点、撮影現場の雰囲気、さらには俳優を志したきっかけから、今後の目標、それを叶えるために日々大切にしていることまで、たっぷりと語ってもらった。
■「いろんな役を演じることができる、実力派といわれるような俳優になりたい」
――『量産型リコ-最後のプラモ女子の人生組み立て記-』は、オーディションで出演が決まったそうですが、どのようなオーディションでしたか?
「オーディション当日は、三女の香絵のほかに、次女で主人公の璃子(リコ)と長女の侑美の三姉妹をそれぞれ演じ分けしてくださいと言われて、三役を演じました。その中で他の方々と違った点で言うと、私は三女・香絵を演じるときに、漫画を読みながらアイスを食べて寝転んでいるというシーンがあったのですが、女子高生っぽくというより、少しおじさんっぽく演じました。笑い方もキャハキャハ笑う感じじゃなく笑ってみたり、台本を読んだときに、自由なキャラクターなのかなと感じたので。その結果、現場でもスタッフさんから『ほかの子たちとはぜんぜん違っていたんだよね』と言っていただいて、すごく嬉しかったし、良かったなって思いました」
――今回第3弾となる『量産型リコ』ですが、これまでのシーズンを通して、この作品のどんなところに惹かれましたか?
「前回のシーズンでは、少しバチバチな場面もありましたが、基本的に誰も傷つかないし、脚本を読んでいるだけでフフフって笑えちゃうところもあったりして、素敵な作品だなという印象でした。それと、主演の与田祐希さんをはじめ、キャストさんやスタッフさん、皆さんがすごく穏やかで温かい方々ばかりで、その柔らかい雰囲気が作品にもすごく出ているなと感じています」
――地上波ドラマ初レギュラーとなる佐月さん。出演が決まった際、どのような想いだったのでしょうか。
「最初はあまり実感できませんでした。マネージャーさんからドラマの資料を頂いたときに、"私、受かったんだ”とは思ったのですが、テレビで放映される連続ドラマに自分が出るという実感がぜんぜん湧かなくて。でも、ドラマの記者会見に初めて参加させていただいたり、メイキングカメラがしっかり入っている現場というのも初めてだったり、作品のファンがたくさんいるということだったり、いろんな”初めて“のことを経験して、段々と実感が湧いていった感じです」
■「監督ともたくさん話し合って香絵ちゃんを作っていきました」
――実際にドラマをオンエアで観た際は、いかがでしたか?
「オンエア前に完パケ(編集が完了した映像)をいただいて観てはいたのですが、それとは違って実際のオンエアでは間にCMが流れていたり、母がSNSでドラマの感想を見つけて一緒にそれを見たりしたときに、"本当にテレビで放送されているんだ”って思いました。これまではセリフがあまりないレギュラーの生徒役だったり、エキストラだったり、みなさんそうところからのスタートだとは思いますが、そういった経験を経て、今回はメインキャストとしてしっかりとした役の設定をもらって、それについて監督ともたくさん話し合う時間をいただいて。今まで以上に役についてたくさん考えて挑んだ作品だったので、すごく嬉しかったですし、自分の成長も感じられる機会になったなと思っています」
――演じている香絵については、どのような印象を抱きましたか?
「香絵ちゃんは自由人ではあるのですが、達観していて大人びていて、でも甘え上手な一面もあって、立ち回りが上手いんですよね。第8話(8月15日放送)では、香絵ちゃんが進路に悩むシーンがあって、今までの回ではリコのことをあまり姉だと思っていない感じに映っていると思うのですが、改めてお姉ちゃんだなって思う描写があるんです。そのときの香絵ちゃんの表情とかにも出ていると思うのですが、そういった思春期らしい一面も持った子なのかなと思って、監督ともたくさん話し合って香絵ちゃんを作っていきました」
――ご自身の性格と比べて、似ているところ、また似ていないなと思う部分は?
「似ているところは良く寝るところです(笑)。あと、私にも兄がいるのですが、あまり“お兄ちゃん”って思っていないところも似ているかもしれないです。なめているとかそういうことではなく、尊敬はしているのですが、すごくラフに接することができる仲という感じで。そういう部分が自分と似ているかなと思います。演じていて尊敬するなと感じたのは、好きなことに対して、嫌いになりたくないから諦めようかな…とか、何も考えてないようで、ちゃんと未来を見据えて考えたりできるところはすごいなって思いました。好きなことや興味のあることって途中で飽きちゃったりすることもあると思うんですけど、幼少期からずっと同じものを好きで追っかけられているところも尊敬できるなって思いました。わりとどの回を観ても、香絵ちゃんはスマホを持って映像を観ているというシーンがあるので、改めて客観視したときに、"この子は本当に映像が好きなんだな”って感じました」
――"家族”がテーマとなっている今作。ドラマを通して、与田さん演じるリコをはじめ、小向家の雰囲気がすごく素敵だなと感じますが、撮影現場の雰囲気はいかがですか?
「シーズン3から参加するということで、すでに出来上がっているチームに入ることに対して、最初はすごく緊張していたのですが、監督がお三方とも温かくてコミカルな方々だったり、スタッフさん同士もすごく仲良いのが伝わってきたり、現場の雰囲気はすごく温かいです。私が監督に質問しに行っても、全部受け入れてくださって『そうだね。だけど、こういう感じもやってみようか』と言ってくださったり、最初の衣裳合わせの時点から心配ないなと思うくらい、温かい現場だなと感じました。キャストの皆さんも、私が緊張しているように見えたからなのか、私の趣味について聞いてくださったり、『普段は何をしているの?』など、気さくに話しかけてくださって、皆さんすごく優しかったです。ご飯休憩のときもみんなで一緒に食べたりして、いろんな話をしたので、自然と家族っぽい感じになっていったような気がします」
――ドラマの設定通り、"末っ子”に接するような感じで接してくださったんですかね。
「そうですね。本当にたくさん話しかけてくださったり、すごく可愛がっていただきました。でも、クランクアップのときに『すごく肝っ玉あるよね』とか、『最初から大物感がすごかった』と言われて(笑)。たぶん、皆さんが優しい方々だったので、"よし、行くぞ!”と思い切っていけたのかなって思います。普段の私は、緊張でガチガチで現場でもキャストの方とはあまり話せなかったりするタイプなのですが、私からも話しかけられるくらい、本当に温かい雰囲気だったんだと思います。撮影が終わったとき、“帰りたくない!”と思ったくらい、すごく良い雰囲気の中でやれて、本当に楽しかったです」
■「幼少期からずっと頭の片隅に俳優への想いがあった」
――香絵は映像に夢中な女の子ですが、佐月さんご自身は、学生時代にどんなことに夢中になっていましたか?
「私は小学6年生のころからずっと卓球をやっていました。めっちゃショートカットでムキムキな感じで。県大会でも上位だったり、東海大会にも出場したり、男の子に交じってやっているような卓球少女でした」
――俳優への憧れは、いつぐらいから抱いていたのでしょうか。
「私が幼少期に過ごしていたところが、田舎というより本当に森みたいな場所で、周りに何もないようなところだったんです。そこに住んでいたときに、森の中にあるキレイな公園があったのですが、一人で走っている中で、"誰か私を撮ってくれないかな”と思って。こんなにキレイなところですごく良い感じの雰囲気の中、私がワーって走っている姿を撮影したものを観てみたいって思ったのですが、もちろん一人なので撮ってもらえるわけもなく…。そんな中で、金曜ロードショーとか、テレビで放映されている映画を観たときに、映画には自由な世界があるなって感じたり、いろいろと与えられたものがあって。学校でもずっと一人芝居しながら歩いたりしていて、”自分はそういうものに興味があるんだな“って思っていたけど、それは別に"夢”になるわけではなく、ずっと頭の片隅に想いとしてあっただけで、普通にそのまま小・中・高と過ごしていたんです」
――その想いが具体的な憧れや目標になっていったのは高校生の時?
「そうですね。母が私が幼少期にポロっとそういうことを言ったからなのか、『そういえば、俳優やりたいって言ってなかったけ?』って、映画に誘ってくれたんです。そのときに『きみの瞳が問いかけている』という、吉高由里子さんと横浜流星さんが出演されている作品を観て、すごく伝わってくるものがあってボロボロ泣いてしまって。私の周りの人たちも鼻をすすっていたり、ハンカチで目頭を押さえていたりするのを見て、"私もこうやって誰かの心を動かしたい”と思いましたし、自分のことをずっと嫌いだったけど、役として誰かに別の人になったときに、自分の中に新しい引き出しを見つけることができて、自分のことも好きになれるんじゃないかなという僅かな希望を抱いて。それで迷わず母と応募書類を書いて、スターダストプロモーションに応募しました」
――そういったきっかけからスタートした佐月さんの俳優人生。この仕事の魅力・楽しさはどんなところで感じていますか?
「本当に素晴らしい仕事だなと思いますし、すごく誇らしい仕事だなとも思っています。もちろん大変なこともたくさんあります。たとえばオーディションも受からなかったら落ち込みますし、でも受かったとしても嬉しい反面、”私で大丈夫かな“と不安になりますし、一言で演じることは”楽しい”とは言いたくないというか。努力が絶対に実るとは限らない世界ではありますが、いただいた役と向き合って真心込めて演じたときに、その役になれたと思う瞬間があって、そのときの感覚は他では得難いものだなと。それに、かつての私がそうであったように、私の演技や表情で誰かが涙してくれたら…というような野望もあったり、いつか叶うんじゃないかなと、どこかで希望があったり、可能性が無限大な世界だなとも思います」
――俳優としての今後の目標も教えてください。
「何を考えているのかわからないというような、空気みたいに掴めない感じの役というか、ミステリアスな役をやってみたいなと思っています。私は2年くらい前から奥田瑛二さん主催の『奥田塾』に参加させていただいているのですが、それがきっかけで出演させていただいた奥田さんの作品で、不思議ちゃんを演じたときに、すごく楽しくて。そういった少し陰のある役というのは、私自身にも共通する部分だと思うので、やってみたいなと思っています。それと、全国の映画館で上映されるような作品や、舞台作品にも出演したいと思っています。それは、もっとたくさんの方に知ってもらいたいというより、私の芝居で伝わるものがあったらいいなと思っていて。いろんな役を演じることができる、そういう実力派といわれるような俳優になりたいです」
――そういったご自身の夢や目標を叶えるために、実践していることや、大切にしていることはありますか?
「最近は、体力をつけるためにランニングをしたり、筋トレしたりしています。奥田塾で舞台発声の練習をしたりするのですが、息が続かなかったり、お腹から出しているつもりが、いつの間にか喉で出してしまっていて声を枯らしてしまったり、後半弱くなってしまったり、自分の体力の無さを実感して。これではいけないなと思ったので、体作りを意識しています。それと、台本を解釈できないとダメだと教わったので、最近は本をたくさん読んだり、映画などの作品も見るようにしています。そういった仕事のために自分を高める隙間の努力は大切なのかなと思います」
――自分の弱点を理解して、努力することは大切ですよね。
「それと一番大事なのはメンタルだなとも思います。私はお芝居した後に素に戻るときの切り替えがまだ上手くできなくて。ダメージを受けてしまうときがあるので、メンタルを整えるためにも自分が好きな音楽を聴いたり、ダンスを踊ったり、本当に楽しいと思う時間を作ることも大事なことだなと実感しています。最近は1日の時間配分をちゃんとしようと思って生活をしていて、お芝居のことを考える時間と自分の好きなことをやる時間と、それぞれバランス良くやっていきたいなと思っています」
【プロフィール】
佐月絵美(さつき・えみ)●2004年2月3日生まれ、岐阜県出身。スターダストプロモーション所属。
2021年、スターダストプロモーション主催『第2回スター☆オーディション』のファイナリストになったことがきっかけで、同事務所に所属。
主な出演作は、短編映画『ワタシって何もの』主演、映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』、映画『シンデレラガール』、Hulu U35 クリエイターズ・チャレンジ 第2回グランプリ作品『はじめてのよあそび』、映画『火だるま槐多よ』、映画『ブルーピリオド』など。9月には初の舞台作品、BOW 第15回公演 『僕にだけやさしい古書室/兄と妹』(9月19日~23日/シアター・アルファ東京)への出演が控えている。
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