喜寿を迎える稲川淳二 今夏も全国37か所50公演の怪談ツアーを行う

驚異の32年連続公演 喜寿を迎える稲川淳二が全国怪談ツアーを続ける理由 タレント絶頂期に全てのレギュラー番組を降板し怪談に専念

2024.06.29 08:00
喜寿を迎える稲川淳二 今夏も全国37か所50公演の怪談ツアーを行う

今年も稲川淳二による恒例の怪談話全国ツアーが開催される。1993年以来、ひと夏も止まることなく、今回の「MYSTERY NIGHT TOUR 2024 稲川淳二の怪談ナイト」で32年連続公演。稲川自身も8月21日に77歳・喜寿を迎えることから、サブタイトルにも「怪談喜寿」と銘打った。7月13日(土)から11月10日(日)まで全国37か所を飛び回り、50公演を行う稲川にインタビュー。怪談の魅力や精力的に全国ツアーを続ける理由を聞いた。

――毎夏の風物詩と言える稲川さんの怪談ツアーですが、怪談を話す上で最も大切にされていることは何でしょうか。

怪談とは何かと言ったら、やはりライブ感なんですよね。よくお客様からお手紙をいただくのですが、ある時若い方から「怪談って『怪+談』ですでに『怪しい話』なのに、なぜ怪談“話”と付くんだ」と聞かれたんですよ。

確かに言われてみればそうなのですが、考えてみたら怪談話というのは、きっとその臨場感、その状況、そのライブ感のことを言うのではないかと思うんですよね。

怪談が、落語や講談とどう違うかと言うと、あちらはもう一つの形になっていますよね。古来からの形。師匠がいて、そこに行って習って。噺家さんには噺家さんの形があるのですが、怪談にはそれがないわけですよ。昔から普通の人たちが語り継いできて仕上げてきたもの。言い方を変えると、落語や講談はプロの方が作るお店に出す料理。怪談というのは庶民の料理、家庭料理みたいなものかなと思うんですね。

大体どんな人でも日本人の場合、怪談話を一つや二つ知っているんですよね。それくらい身近なものなんですよ。誰かが集まって話しているところに、みんながどんどん入ってきて「うわ怖かったな、そういえばこんな話があってね…」と続いていく。知らない人同士が集まって怪談をしている。それだけで楽しくなってくる。これ、怪談の魅力ですよね。

ですから、そんな魅力を、今年77歳を迎える私がですね、稲川淳二ではなくて、稲川淳爺(じゅんじい)として、怪談じいさんが皆さんにお話したいなと。その場が一つになるような、怪談ってこういう楽しみ方があるんだなっていうのを味わっていただきたいなと思って、私もライブ感をとても重視しています。

――ライブ感を生むためにどういった点にこだわっているのでしょうか?

話がずっと続いている中に、 怪談がポツンポツンポツンと入るんですよ。もしかするとその繋ぎの間にも怖い話が入ってるかもしれない。ですから人によっては怪談を5話聞いたと感じる人もいるでしょうし、6話聞いたなという人もいるかもしれない。そうやってみんな怖いと言いながら笑って、なにか居心地がいい、そんな怪談をご紹介しようと思っています。

――「元祖リアクション芸人」とも称されるほど、バラエティータレントとして多忙を極めていた稲川さんですが、45歳で怪談ツアーを開始後、人気絶頂の55歳の時に突如、すべてのレギュラー番組を降板して怪談に専念される道を選ばれました。なぜそこまでして怪談に取り組もうと思ったのでしょうか。

私は、元々は工業デザインの人間なんですね。それがひょんなことから芸能界に顔を出すようになったんですよ。成り行きで入ったけど、嫌いじゃないですよ、芸能の世界も。楽しくて、好きでした。

ただ、すごく忙しくテレビに出ていたのですが、自分じゃない自分もテレビに映ってしまうんですよ。それでよく「あんた変わった」とか言われましたね。私からしたら変わってはいないのですが、周りの見る目が変わっていくんですよね。それが虚しいわけではないけれど、忙しくて結構なんだけど、何か違うかなと思っていたんです。

そんな中で怪談は実は私、1番最初にやっているんですよね。マスコミの電波を通して怪談を初めて話したのが、私が20代の時のニッポン放送のオールナイトニッポンの2部なんです。毎回本番が始まるまで時間があるので、怪談を話していたんですよ。そうしたら夏が近づいた時にプロデューサーから「淳二さん、放送でも怪談やらない?」と。それが始まりでした。すごく反響が大きかったんですよ。

そこから、ツアーはしていなかったのですが、たまにお寺さんだとか、江戸資料館だとかをお借りして、怪談をやっていたんですね。そんな時に、今のプロデューサーの本田(一成)さんからツアーをやらないかと。それで始めたんですね。

そうしたら、テレビの時にはどんなに忙しくても、我々のようなバラエティー関係の人間はファンレターなんかもらえなかったのに、怪談を始めたら本当に皆さん、色々な手紙をくれて。感動したのが、ツアーが始まって間もなくのころに、北九州の84歳になるおじいちゃんが、自分の若い頃の経験をきれいに200字詰めの原稿用紙にきっちり書いて送ってくれたんですよ。おじいちゃんが鉛筆で200字詰めの原稿用紙にびっしり書くって大変なことですよね。私も日本各地に出演番組があったので、そこでおじいちゃんから話を聞いたりなんかする。楽しかったですね。なんとなく下地ができていったんですね。

そうして続けていくうち、ツアーが10年を迎えた55歳の時にこれは片手間ではできないなと。この先のことを考えたら、本気でやらないとダメだと思ったんですね。45歳から始めて、60歳までテレビをやって「ぼちぼち仕事が減ったから、じゃあ怪談やろうか」では、あまりにも来て下さるファンの方に失礼だなと思って。まだ仕事があるうち、それを全部捨てて本気になれば…体はまだ動きますからね、そこまで本気でやらないと絶対間に合わないと思ったんです。

そんな中、ちょうど同じ時期にドラマ出演のオファーが入ってきたんですよ。非常に嬉しかったんですけど、ここでもしドラマをやってしまうと、中途半端になるなと思って。じゃあこのドラマに出ないのだったら、他の出演番組も辞めよう、怪談で行ってみようと思って、周囲の反対もありましたが、レギュラー番組を全て降板したんですね。今ではその決断が良かったと思っています。

――32年間、ひと夏も休まずにツアーを続け、しかも毎回新作の怪談話にこだわり続けられています。8月で77歳、喜寿を迎えられる今もなおライブを続けられる原動力は何でしょうか。

ちょっと前の話なのですが、昨年12月から今年1月にかけて、ものすごく苦しんだんですよ。生涯こんなに苦しい思いをしたことはなかった。膀胱に直径3cmの結石ができまして。痛くて震えて、12月ひと月布団で寝られなくて、椅子にしがみついたり、布団を重ねて寄りかかったりして過ごしていました。

そして12月末だったかな…ハッと目が覚めたんです。すると部屋の中が明るくて、音も聞こえない。でも目の前に誰かいるんですよ。誰だろうと思って見たら、それ自分だったんですね。

自分が私を見ているんです。あ、自分は死んだんだなと思いましたよね。でも、自分がもう死んでいるのだったら、今のこの這いつくばっている自分は何なのだろう。それで苦しみながら洗面所まで這っていって、鏡を見たならば、自分の目が生きてるんですよ。あれ…もしかすると自分は死んでいないなと思って。それで我に返ったんですよね。

その時に思ったんですよ。自分には今しかないと。死ぬ日はいつ来るかわからない。あと何年…いや明日なのかもしれない。だから大事なのは今なんだと思った時に、そうか、自分にはまだやることがある。スタッフのみんなが30年以上、一生懸命私のために動いてくれて、稲川怪談の開催を喜んでくれている。ファンの方が楽しみに待っていてくれる。皆さんにこんなにも支えられている。ここで死んだらおしまいだと思った時に、怪談があったからこそ私は生きることができたんです。

そんな経験から、今自分ができる怪談を考えたときに今回、皆さんには怖い怪談はもちろんなんだけど、温かい怪談も届けたいと思って。昔、雪深い北国ではね、お父さんお母さんが冬になると働きに出るんですよね。残ったおじいちゃんとおばあちゃんに、孫たちが「じいちゃんあの話をして、この話をして」というんですよ。すると、じいちゃんが「おっかねぇぞ~」って。確かにおっかないんですよ話は。でも、怖い話なのに、それを思い出すとなぜか温かいんですよね。

そんな風に、怖いけど温かい、77歳になった稲川淳爺だから話せるような怪談を皆さんにご紹介したいなと思っています。今年は稲川淳二ではなくて、稲川淳爺です。この爺さんが話す怪談、皆さんに楽しんでいただけると自信を持っています。自分自身も楽しみにしています。どうかよろしくお願いします。

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