作者自らが精神科を訪れおこなった取材を元に描く…水谷緑さんの漫画『こころのナース夜野さん』が話題

【漫画】意義あるいい作品…“暴力をふるう”深層心理を描いた漫画に反響「広まってほしいしもっと知りたい」

2023.01.21 10:00
作者自らが精神科を訪れおこなった取材を元に描く…水谷緑さんの漫画『こころのナース夜野さん』が話題

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、精神科を訪れる患者の心の痛みと向き合う新人看護師・夜野さんの物語を描いた漫画『こころのナース夜野さん』(小学館)をピックアップ。

作者は7年もの間、自ら精神科を訪れ、取材を行いながら漫画を執筆しているという水谷緑さん。そんな水谷さんが、家庭内で暴力をふるう男性たちの背景や深層心理を描いた「暴力をする男たち」(コミック3巻の第17話)を2022年12月17日にTwitterに投稿したところ反響が相次ぎ、4.1万以上の「いいね」が寄せられた。あわせて、家庭内暴力の経験がある様々な年代の読者から体験談や共感の声も集まり、話題となっている。この記事では、水谷緑さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。

家庭内暴力に至る心理とは?医師や当事者への取材を元に描かれた物語に反響

精神科の新人看護師として日々奮闘する夜野さんはある日、暴力をふるう男性が家族との関わり方を見直すための「加害者プログラム」に医師とともに参加する。病院と児童相談所が連携して実施するこのプログラムには、家庭内暴力のせいで妻子と別居中の人や、妻への暴力が抑えられない人、自分が傷つきたくないため家族に暴力をふるってしまう人など、肩書きも性格も様々な男性たちが集まっていた。

その参加者の一人で教師として働く裕は、小学1年生の娘・七香が宿題を終えずにご飯を食べたことに怒ると、“しつけ”と称して暴力をふるい、それを止めようとする妻にも手をあげたことで加害者プログラムに参加することに。暴力をふるったことを悪びれるそぶりもない裕だったが、他の参加者の話を聞き心を動かされると、父親が厳しい人で自身も幼少期から殴られて育ってきたことを明かす。「本当は暴力をふるいたいわけではないけど、ほだされたくはない。緊張してないと頑張れない」と話す裕に夜野さんは、“父親らしさ”や“父親の威厳”について、暴力ではなく「子どもと一緒に遊んだり世話したりすること」に力を使うことが大切だと、自身の体験談を交えて伝える。

夫や父親である男性たちが家庭内暴力に至ってしまう背景や心理とともに、加害者たちの心の声に寄り添い、親身になって向き合う夜野さんの姿を描いた本作。6巻の第36話では男性の“育児うつ”の現状と、共働きの夫婦が抱く育児と仕事との両立の悩みをリアルに描き反響を呼んだ。

Twitter上では「とても勉強になりました」「意義あるいい作品」「このマンガを見て自戒しないといけない」「加害者プログラム、広まってほしいしもっと知りたい」などのコメントが集まり話題を集めている。

「わかりやすい正解や完治がないからこそ“希望”をゴールに」作者・水谷緑さんが創作の裏側を語る

――『こころのナース夜野さん』はどのようにして生まれた作品ですか?

前作『精神科ナースになったわけ』をご覧になった編集者さんから連絡をいただき描くことにしました。父が亡くなった後に、自分自身が心の病では?と思ったことがあり、「心の病ってなんだろう?“心”って曖昧だけどなんのことだろう?どうすれば治ったり予防になるんだろう?」と興味を持つようになったのが精神科の漫画を書くようになったきっかけです。

――本作を紹介したツイートには4.1万もの「いいね」が寄せられ、DV経験者をはじめ様々な年代の方から体験談を含めた多くの共感のコメントが寄せられています。今回の反響について水谷緑さんの率直な感想をお聞かせください。

暴力はとても身近で、程度の差はあれど、日本の家庭や会社で暴力はとても多いんだろうなと改めて思いました。また、「加害者が反省しようとも、被害者は加害者がやったことを絶対に忘れない」という感想も見て、一度やった暴力自体は人を傷つけ、絶対に消えないのだなと痛感しました。

――水谷緑さんは、実際にご自身で医師や看護師、精神科を訪れる当事者等にも直接取材をし各話を描かれているとのことですが、これまでの取材で興味深かったことや印象的だったことはありますか?

7年くらい精神科の取材していたので、自分が精神科の医療者かのような気持ちになり、考えすぎて、病気=問題と考えてしまうようになり、鬱々としていた時期もありました。でも、ある看護師さんから、「ケガをしたらかさぶたができるように、全ての人間には回復力があり、精神も同じ。病気の症状は、自然治癒の過程」という考え方を教えてもらい涙が出ました。自分は希望を感じたかったのだと実感し、また描く意欲が出ました。4巻にある「人間の回復力」(第25話)という話で詳細を描いています。

また、取材した当事者の方が、後に自殺されたこともありました。いまだに信じられない気持ちです。優しい方だったのですが、自分の気持ちをもっと言葉で表明して伝えていればよかったと思いました。出会いは貴重で、何が起きるかわからないと感じます。

――精神科をテーマにした漫画を描くにあたって特に意識していることや、気をつけていることはありますか?

症状だけ見るとひどかったり突飛な感じですが、その人がそうなった経緯や背景を大事に描くようにしていました。また、からだの病気のように、わかりやすい正解や完治がない分野なので、自分が個人的に腑に落ちたところや、希望が見えたところをゴールにして描くしかないと思って描いていました。

――本作の中で、水谷緑さんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

2巻にある「精神の寿命」(第9話)という話の最後のページが、自分の中では一番心に残っています。取材を重ねる中で、自殺する人は、他人のことを考えている優しい人が多いなと思い、なぜだろうと考えて出した答え(「身体にも寿命があるように、精神にも寿命があるのかもしれない」)を描きました。

育児うつの話は、「真面目なんじゃなく、放棄できないんだ」というのが腑に落ちました。あとは、4人くらいの方の実体験をもとに書いていますが、実際は、家事や育児を妻と同じかそれ以上にやっている男性は結構いて、男性から発信しにくいのか(発信すると叩かれるとおっしゃる方もいました)、男性側の話ってなかなか聞けないので、苦労を知れてよかったです。

暴力の話は、妊娠中に、男性の暴力について考えて、ホルモンのせいもあるのか無性に腹が立ち、産後、大阪まで行って参加させていただいた会をもとに書きました。当時の「知りたい」エネルギーが懐かしいです。官僚の方など、社会的には認められている男性も多かったですが、そういうちゃんとした方が、普通に、全く悪びれずさらっと「子どもがお金を盗んだらボコボコにする」とおっしゃっていて、本当に驚きました。いつも実際に対面でお会いしてお話しすると、それまで持っていたイメージが覆されるので、取材って本当に大事で大好きだなと思いました。

―― 最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

7年精神科を取材して様々な出会いがありました。教えてもらった事を大事に、次回作に活かしていきたいと思います。面白い漫画を届けられるよう精進しますのでよかったら読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!

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