俳優デビュー10周年を迎える荒牧慶彦

荒牧慶彦、『2.5次元』業界の成長と共に歩んだ10年「メインフィールドはずっとここでいたい」

2022.12.06 18:30
俳優デビュー10周年を迎える荒牧慶彦

2022年12月で俳優デビュー10周年を迎え、明治座で記念公演として「殺陣まつり~和風三国志~」を開催する荒牧慶彦。ミュージカル『テニスの王子様』でデビューして以来、数えきれないほどの人気作品に出演し、名実ともに2.5次元俳優のトップランカーであるだけでなく、所属事務所であるPastureの代表取締役社長を務め、次世代の育成やプロデュースにも取り組んでいる。WEBザテレビジョンでは、これまでの振り返りとこれからの展望を語るスペシャルロングインタビューを前後編で実施。前編となる今回は、デビューから現在に至るまでの歩みを紐解いてもらった。

舞台『刀剣乱舞』出演までは“伏龍”の時期

──俳優デビュー10周年ということで、10年間を振り返っていただきたいのですが、出演作や演じられている役も多いので、10年間をいくつかに分けてお話を伺えればと思います。ということで、ご自身で10年間を章に分けるとしたら、どう分けますか?

章か。うーん……まずは舞台『刀剣乱舞』までが第1章で、『刀剣乱舞』から、事務所を退所してフリーになるまでが第2章。第3章が今。で、10周年を終えたこの先が第4章、ですかね。

──ありがとうございます。では第1章から順番にお話を聞かせてください。まず第1章にタイトルを付けるとしたら何と付けますか?

何だろう。『刀剣乱舞』くらいまでは、原作ものの作品の「2.5次元」という呼び方が、まだあまり認知されていなかったんですよね。だから「名前はまだない編」。

──今振り返ると、この「名前はまだない編」はご自身にとってはどのような時期でしたか?

苦しかったです。デビュー作であるミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンの稽古中に前十字靭帯を切っていたので。でもその頃から、原作ものをずっとやっていきたいと思っていたんですよ。僕の感覚でしかなかったですけど、この業界は絶対に大きくなると思ったからです。いろいろな方に「いつまで原作ものやるの?」「マッキーはオリジナル舞台をやったほうがいいよ」ってよく言われていたし、「もう原作ものは出ない」と離れていった方もいた。でも僕は「こんな素敵なものは他にないのに」と思っていました。同じ価値観の人がなかなかいなかったので、「そうだよね」ってとりあえず話をあわせながら、自分はそういう舞台に出ていく、ということをしていた時期ですね。だから、三国志で言うところの“伏龍”。龍が伏せている感じです。

──俳優として、演じることについてはどのように考えていたか覚えていますか?

がむしゃらに頑張るだけでしたね。

──追いかけていた背中や憧れている先輩などは?

今もそうですが、このジャンルの先駆者がまだいなかったから、追いかける対象がいないんです。自分自身で道を作っていくという感じで。とにかく目の前の舞台を一つ一つ乗り越えていくという作業でした。

──追いかける対象はなかったとのことですが、ご自身の中での目標はありましたか?「ここに立ちたい」とか「こういうことをやりたい」とか。

当時どう思っていたかな。でも「力をつけて人気にならなきゃ」という想いはすごくありました。若造がただ夢ばかりを語っていても仕方がないので、ちゃんと力をつけて、ファンの人にも認められて大きい作品に出ないと、と。

──そんな第1章で、ご自身に最も影響を与えた役や作品を挙げるなら?

ミュージカル『テニスの王子様』ですね。僕にとっての始まりなので、やはり一番印象に残っています。

「2.5次元」業界の盛り上がりと共に成長

──では第2章へ移ります。舞台『刀剣乱舞』から独立するまでが第2章とのことですが、それこそ「2.5次元作品」というものの認知度、そして荒牧さんの認知度が共に上がっていった時期ですね。

そうですね。『刀剣乱舞』が始まって、徐々に徐々にという感じですが。伏せていた龍が立ち上がったくらいです。

──この時期、お芝居をすることやこのお仕事をすることは楽しかったですか?

もちろん、もちろん!第1章の頃から変わらず、ファンの皆様に喜んでもらえるというのがすごく楽しかった。さらに、第1章の頃よりも自分自身に力がついたからこそ、表現方法としてもできることが増えて。そういう意味でも楽しかったですね。

──第1章と第2章の区切りを舞台『刀剣乱舞』にしたのはどうしてだったのでしょうか?

「2.5次元」という単語が広がって、この業界自体が盛り上がってきたから。それと共に自分の認知度も上がってきた感じがすごくあるので。

──では第2章にタイトルをつけるなら?

「2.5生誕」ですね。徐々にではあるんですが、ちょっとずつ業界が盛り上がっているような感じがあって、『刀剣乱舞』で完全に潮目が変わった感じがしました。周りから「『刀剣乱舞』に出てるんだ?」と言われることがすごく多くなって、「ああ、これはムーブメントになるぞ」と。

──それにしても、シーンの潮目とご自身の潮目が完全に一致しているのがすごいですよね。

運が良かったんだと思います。僕がもうちょっと早くにこの仕事を始めていたら、年齢的に真ん中にはいられなかったでしょうし、もうちょっと若かったら後輩の世代だっただろうし。本当に運に恵まれました。

──ちなみに、第2章で印象的だった作品や役は?

やはり舞台『刀剣乱舞』の山姥切国広ですね。どの作品のキャラクターもすごく好きで愛しているんですけど、山姥切国広に関しては、演じている期間がどのキャラクターよりも長くなっているので。

事務所独立後は「大人になりました」

──そして独立後の今が第3章。フリーになって、会社を立ち上げて……と、もちろん環境の変化はいろいろあると思いますが、ご自身にはどのような変化が起こりましたか?

大人になりました。ありがたいことに事務所所属のときは俳優業に専念させてもらっていたので、独立してから、いかに自分が多くの人に支えられていたかということに気づきました。もちろんわかってはいたつもりだったんですよ。でもそれ以上のことをやってもらっていたんだなということに気づけて。その気づきを役者業にも還元できるようになりました。

──とはいえ俳優としては、役者業に専念しているほうがやりやすいですよね?

もちろんやりやすいです。でもそれだと自分自身の解釈として浅い気がして。いろいろな人の想いを背負ったほうが深くなるんじゃないかなと、今は思っています。もちろん、俳優業だけに専念したいと思ったことは何十回もあります。でもいろいろな人の想いを知っているからこそ、役にも還元できるんですよね。例えば泣く芝居をするとしても、悲しさにはいろいろな種類がある。自分が持っていない種類の感情を、いろいろなスタッフさんの想いなどから補填できるというか。僕にとってはそういう感覚です。あとは仕事がどう回っているかを知れたことも大きかったです。

──第3章で印象深かった役や作品を挙げるなら?

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage シリーズの白膠木簓ですね。自分にとっては挑戦的な作品だったので。正直、最初はやるべきかめっちゃ悩んだんですよ。

──荒牧さんが出られると知ったときは驚きました。

そうですよね。ファンの方も荒牧がやるとは思っていなかったと思います。ラップも、カラオケで遊びでやってみたことはありましたけど、本格的にやったことはなかったですし、簓は関西人だし、お笑い芸人だし。それでも「荒牧に任せれば大丈夫だよ」と言ってくださる方が多かったのでうれしかったですね。実際、演じていてもすごく楽しいキャラクターなんですよ。簓はすごく自由なキャラクターなんですが、僕自身もアドリブが好きなので。そういう意味ではハマり役だなと思います。

2.5次元作品は、キャラクターの解釈を広げられる

──ちなみに、俳優を始めた頃、自分が独立して会社を立ち上げるということは想像していましたか?

そうですね……うーん。でも事務所を辞めるんだったら、そのあとはどこかに所属するんじゃなくて自分でやりたいと思っていました。

──自分でやりたいと思っていたのはどうしてですか?

すべての事務所がそうではないと思いますけど、どうしても「いつまで2.5をやるんだ」と言われてしまうことって多いと思うんです。舞台から離れて、テレビや映画などの映像へ行かせようとしたり。でも、そもそもビジネスモデルが変わってきていると思っていて。単に映像に出ればいいということでもない。一度舞台を離れて映像作品に出て、そのあと出られなくなったらどうするのか。舞台に戻ってきたときにファンの方がついてくださるのか。そういう意味でも、2.5次元舞台に特化した新しい事務所を立ち上げてしまったほうが、僕らが信じる道を突き進めると思った。それに沿ってくれる事務所さんってなかなかないので。

──なるほど。特化した事務所をつくってしまうほどの2.5次元作品の魅力を、荒牧さんはどこに感じていますか?

僕、子供の頃から「三国志」の趙雲に憧れていて、公園で棒を振り回していたんです。要は漫画やゲームのキャラクターになりたかったんですよね。ゲームの世界、アニメの世界に入りたいなとずっと思っていた。2.5次元舞台って、まさにその世界に入れているわけで。

──確かにそうですね。とはいえ、原作ファンもいるからこその難しさなどもありますよね。

なぜかはわからないですが、僕は「原作ファンの皆様の解釈と違ったらどうしよう」と思ったことがあまりないんですよ。僕自身がアニメや漫画を好きだからわかるんですけど、アニメとか漫画とかゲームって、そのキャラクターの映ってない瞬間があるじゃないですか。そのときにキャラクターが何をしているのか、どんな歩き方をするのか、どんな癖があるのか。そういう解釈を広げられるのがこの仕事。その解釈が見ている方と違ったら「すみません、違ったんですね」となりますけど、実際は「解釈が広がりました」と言ってくださることがすごく多くて。役者冥利につきます。あと、2.5次元は人が演じる分、人間くさくなって愛せる部分も増えると僕は思っていて。その余白を埋める感じが楽しいです。「荒牧くんが演じたことによって、知らなかったキャラクターの魅力がより深くなりました」と言ってもらえることが一番うれしいし、やっている中での一番の楽しみでもあります。

──では、今後も2.5次元作品にはずっと出ていきたい?

はい!原作ものじゃない作品に出ることももちろんあるとは思いますが、メインフィールドはずっとここでいたいです。

■取材・文/小林千絵

撮影/MARCO

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