写真家・藤里一郎氏の25周年記念企画で夏目響を起用した写真展「Intangible」を10月25日(月)~10月31日(日)に開催

「夏目響という女性の発する全てが魅力的で一緒に作品を…」写真家・藤里一郎氏の25周年記念企画で夏目響を起用した写真展を開催

2021.10.23 20:00
写真家・藤里一郎氏の25周年記念企画で夏目響を起用した写真展「Intangible」を10月25日(月)~10月31日(日)に開催

写真家の藤里一郎氏が25周年を迎え、その記念として写真展「Intangible」を10月25日(月)~10月31日(日)に東京・Nine Galleryで開催、写真集も出版する。「Intangible」は“無形”という意味で、藤里氏が写真家として写してみたいと思った、気配、匂い、温度をテーマに、モノクロで撮影した作品で構成され、写真展では40点が展示される。そのモデルに起用されたのはセクシー女優として活躍する夏目響。藤里氏の25周年への思いや夏目への印象、モデルを務めた夏目自身がこの企画に抱いていた覚悟など、2人に話を聞いた。

「ある作品の最後に出てきていたのを見て気になって」

――藤里さん、25周年おめでとうございます。昔描いていた想像と今の自分、違いはありますか?

藤里:ありがとうございます。もうちょっとちゃんとした大人になってると思ってましたね。大きくなったら自由にお金使いたいとか(笑)。

――昔撮った作品を振り返ることってありますか?

藤里:ほとんどないです。話のネタであの作品が好きです、と言われたら目にすることもありますが、自分で振り返ることはしないですね。生きてる限り、前に進みたいじゃないですか。

――お2人の最初の出会いはどんな形だったのでしょうか。

藤里:最初の出会いは別の女優さんのあるアダルト作品の最後に出てきていたのを見て気になって。メーカーの方と何か企画をしましょうという話になった時に、いろんな女優さんの宣材をいただいて見ていたら、その中に夏目さんがいて。ショートカットの感じで覚えていたんです。それで数日後にお会いすることになって。

全部見透かされそうな目、たたずまい、記憶の中のいろんな過去の女性を思い出してもこんなにスタイルの良い子はいないと思うし。柔らかそうでしょ?僕は圧倒的にお尻派なんだけど、響さんの胸はめちゃめちゃ魅力があると思って。温かさを感じたんですよね。これは絶対、自分がキレイに撮りたいと。

――夏目さんの藤里さんへの最初の印象や、写真展企画について聞いた時の気持ちは?

夏目:話がすごく豊かなアーティストさんだなって感じました。最初は簡単な自己紹介で終わったのであまりお話できていなくて。

数々の有名な方を撮られている写真家さんだし、なんで私を選んでくれたのかなという疑問はずっとあるんですけど、でもその答えは聞かなくてもいいかなと思っています、魔法が解けちゃいそうなので…。でもこの企画については、撮った本人も撮られた本人もいなくなったとしても、ずっと誰かの心に残る作品にしたいなという気持ちで臨みました。

――藤里さんが、実際に夏目さんを撮られた時に印象は?

藤里:「やっぱりそうだよね」と思いました。捉えどころがなく、でも地に足はついていて、はかなさもあり、いつか消えていなくなっちゃうんじゃないか、っていう。夏目響という女性の発する全てが魅力的で一緒に作品を作りたい、という気持ちになったんです。

「25周年を迎えて原点回帰」「色あせたくなかった」

――今回モノクロで撮られた理由はあったのでしょうか。

藤里:モノクロって写真の原点で神髄でもある。25周年を迎えて原点回帰という意味と、色あせたくなかった。それでモノクロ一択でしたね。

――撮っている時はどんなことを考えていますか?

藤里:かわいく美しくは当たり前で、それはビジネスとしての意識。100人見たら90人が「キレイだね」と思う作品はキレイだけで終わるんですけど、ごく少数が「これ、キレイ…とは言えないけどなんか引っかかる」っていう作品の方が面白いし、残していきたいなと思っています。

そういう点では、彼女との対話というよりは、自問自答の方が多いかもしれないです。

「いろんな方に見られるのが怖いです」

――撮られる側の夏目さんの思いは?

夏目:撮影の1カ月くらい前から気持ちを作り始めました。ずっと考えていたのは、藤里さんの25年間の軌跡があっての今で、それに対して私が1カ月使ったところで何にもならないかもしれないけど、2泊3日の撮影のために1カ月使おうと思って、他のお仕事を調整してもらいました。とても生意気かもしれないけど、藤里さんのこれまでの作品全部を越える作品にしないと私を選んでいただいた意味がない、と思っていて。そう考えながら荷物を持って行きました。

企画タイトルと、気配と匂いと温度の3つを出せたらいいよねって話は事前に聞いていて、特に匂いってどうすれば写るんだろうなともずっと考えていました。ただそれ以外はコンセプトみたいなものを一切聞いていなくて、たずねても「いるだけでいい」っていう言葉だけだったこともあって、撮影期間はずっと辛くて苦しくて逃げたかった気持ちがたくさんありました。

撮影中はデジタルカメラじゃないからその場で見られないですし、どう撮られているのか、私がどう写っているかが不安で。特に初日はそれで苦しくて、プレッシャーもかなりあったのでずっと葛藤していました。撮影中はご当地のおいしいお食事をいただいたんですけど、撮影後は体重も減っていたし、体力や精神力はかなり消耗しました。

――女優・夏目響というよりは、等身大の中の人が出ている、みたいなイメージでしょうか?

夏目:そうだと思います。だからいろんな方に見られるのが怖いですし、自分でもまだあんまりちゃんと全部見られていないんです。

「相手から“出てきちゃう”のを待つだけ」

――具体的なコンセプトを伝えなかった意図というのは?

藤里:夏目さんは集中して挑んでくれただろうし、葛藤しているのも分かりました。でも答えを渡したら演じちゃうだろうなと思って、だから何も伝えなかったんです。今回のロケ地は初めて行った岐阜で、「じゃあそこから覗いてみて」「そこにいて」くらいしか言わなったですね。

相手から何かを引き出そうと思ってもなかなか引き出せるものではなくて、“出てきちゃう”のを待つだけなんですよね。それにはまず、自分がオープンマインドでぶつかる、それしかないです。相手を分かるよりも、自分がこうですよっていうのを見てもらう方が早いと思うんです。

――そんな思いを込めて撮られた作品で、いろんな取り組みをされるんですよね。

藤里:今回の一連の取り組みではフィルムがメインでしたが、デジタルでも撮って「カメラマン RETURNS」というムック本で表1~表4をジャックするという40年の歴史で初めての試みも。それで写真界をザワザワさせられましたね(笑)。あとは年内に5本の写真展も企画しています。名古屋や新宿、京都でも開催予定で、ここまでの動きを作るのは25周年ということもありますが初めてです。

ここまでの動きは夏目響じゃないと出来ない、という気持ちです、僕は。撮り終わって燃え尽き感もありましたし、他の撮影をストップするくらいで…こんな気持ちで他の子を撮るのは失礼じゃないですか。1カ月くらい引きずったかもしれない。それだけ彼女が真剣に取り組んでくれたのもあるし、僕も真剣でした。夏目響さんを撮らせてもらってるけど、そこには藤里一郎しかいない、藤里一郎がどう見てるか、どう感じてるかしか写らない、写真家としての生き方を提示していると思って挑んでいます。

夏目が自撮り&イベントで意識するのは“ぷに”と“喜びの共有”

――話は変わりますが写真繋がりで少し聞かせてください。夏目さんが普段自撮りで意識されていることはありますか?

夏目:自撮りの時に意識するのは…“ぷに”ですかね(笑)。見てくれている方が朝から元気になってもらえるかなと思って。アプリはSODAをよく使っています。

――「#おはぷに」ツイートですね(笑)。他にも応援してくれている方に撮影してもらうイベントや撮影会があると思いますが、その時にはどんな気持ちで臨んでいますか?

夏目:お客様と一緒に過ごせるイベント、1対1で会える時間はすごく短いので、自分の写りよりもその時楽しかったなって気持ちだけ持ち帰ってくれるとうれしいなという気持ちですね。喜びの共有が出来ればいいなと思っています。

作品が売れないっていう難しさなどから起こした行動

――25周年を迎えられましたが、藤里さんの今後の活動への思いを聞かせてください。

藤里:僕もまだぺーぺーですよ。カメラマンって50代で若手、60代で中堅、70代はベテラン、80代は大御所、90代はレジェンド、みたいなイメージなんですけど。僕が38歳くらいの時は先輩が目の上のたんこぶでしかなくて、39歳でいろんな人に助けられてるって感謝したなって記憶もあります。今は若い人の目をつむことはしたくないし、チャンスは若手に広げたい。僕はこれからは好きなことに囲まれていたいなと思うし、レジェンドくらいまでやれたらいいですね。

ただ日本だと作品が売れないっていう難しさもある。僕は写真展の入場料を5年前くらいからもらうようにしたんですけど、実はそれってタブーとされてきたところだったんです。僕が写真展に在廊してると、「仕事大丈夫ですか?」って言われるけど、それも含めて仕事なんですよ。そのために入場料をいただきますが、しゃべりたいって人がいっぱい来てくれます。

――ちなみに、どんな話をされますか?

藤里:うーん、正直撮ったカメラの機材の話とかはどうだってよくて、好きなカメラ使いなよって思います。今は何でもキレイに撮れますし。

例えば泣いてくれてる人がいると気になりますね。ティッシュを持って近づきます(笑)。

――夏目さんも写真をよくご覧になられていますが、泣かれたことはありますか?

夏目:ある写真集を見て、1回だけ泣いたことがあります。病気になった奥様をだんな様が撮っていたんです、時系列で、言葉も添えて。切なさがあふれてて、ページをめくるたびに、ああって感情移入して泣いたことはあります。

――普段泣くことはよくありますか?

夏目:感情の起伏は激しい方なので、ちょっとした悲しみとか喜びでホロリと出ることはあります。最近だと、「カメラマン RETURNS」を見た時、「Intangible」がまだ自分の中で完結していなくて、終わってほしくないって思って、感傷的な気分になって泣きましたね。

――逆に最近笑ったことも聞いていいですか?

夏目:「SOXSOCKS」というアパレルブランドのイベントに参加させていただくのに向けて、商品情報をSNSでお伝えしたくてお店に伺ったんです。試着されたスタッフさんの写真を撮っていたら「このポーズしてみてよ」って店長さんがスタッフさんに言っていて「それはダサいです」みたいなやり取りをされているのを見て、笑いながら撮っていました。Twitterに上げさせてもらったんですけど、指差しポーズみたいな写真がそれです(笑)。

――それでは今回の写真展を楽しみにしてくれている方へメッセージをお願いします。

夏目:私が写っているとか藤里さんが撮ってくださったとかじゃなく、一つの作品を作らせていただきました。それは、写真展にいらしてくれた方、もしくは写真集を手に取ってくれた方から始まって、未来に、誰かに、届く気がするんです。見に来るのが賢明な判断だと思います。

藤里:彼女が終わってほしくないって涙してくれたのと同じで、僕はこれがスタートだなって思っています。これまで作り上げてきたものには興味なくて、生きてる限りは前に向かって全力疾走したい。半周先くらいを走っていきたいですね。

写真ってもう新しい手法というのはほとんどなくて、オリジナリティーを出すのは自分の魂でしか成り立たない。自分との闘いです。だからこそ、今回の写真展は、絶対、来てください。来てくれた方の感情を動かせるものになっていると思います。

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