「警視庁・捜査一課長」“大福”平井刑事役・斉藤由貴「いろいろな大福を味わえるのはドラマの楽しみの一つです」
2012年にテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」の一作としてスタート、2016年より連続ドラマとなり、現在第5シーズンが放送中の「警視庁・捜査一課長」(毎週木曜夜8:00-8:54、テレビ朝日系)。斉藤由貴は、警視庁捜査一課・現場資料班主任の平井真琴(ひらい・まこと)警部補役で出演する。
平井刑事は、軽口を言い合うけれど厚い信頼で結ばれている小山田大介管理官(金田明夫)とのコンビで、ヒラ刑事からはい上がったたたき上げの捜査一課長・大岩純一(内藤剛志)を支える存在だ。大岩一課長が毎回口にする「大福(平井のニックネーム)の勘は特別だ」というせりふ。これは、平井が洞察力と直感力に優れた刑事であることを物語っている。
第1作放送から10年、今回あらためて斉藤由貴に、平井真琴という役や作品への思いをインタビューした。そこでまず語られたのは、新型コロナウイルス感染拡大から受けた影響についてのことだった。
「去年、本当なら東京オリンピックが開催されていたはずで、春夏の2クールで放送するという話でしたから、出演者はみんな、とても意気込んでいたんです。だけど、新型コロナの感染拡大が起こったことで、オリンピックは延期され、ドラマの撮影も予定通りには行えないという、ものすごくイレギュラーなシーズンになりました。
お芝居をする上でも、現場ではマスクをするとか、距離を置かなきゃいけないとか、注意しなければならないことが多くなり、作品の面白さを純粋に追求することがとても難しくなりました。
今年になって、コロナについていろんなことが解明され、私たちの中でも『こういうふうにしたらいいんじゃないか』という撮影への取り組み方が構築され、気を付けるべきことには気を付けながら、芝居に集中することができるようになってきました。
内藤さん、金田さんと純粋にお芝居、ドラマの会話、やりとり、掛け合いを楽しむことができる状態に戻れたことは、すごくよかったと思います」
斉藤由貴が語るように、「警視庁・捜査一課長」の魅力の一つは、刑事ドラマでありながら、刑事役の役者陣がまるでコメディーのような軽妙な会話を繰り広げること。では、演者として、そんなドラマの台本をどのように受け止めているのだろうか?
「この作品は、他の刑事ドラマとは全然違っていると思うんですね。一話の中にたくさんの約束事というか決まり事があります。『水戸黄門』の印籠や、『遠山の金さん』の桜吹雪まではいかないですけど、細かい決まり事があり、そのことをドラマを見る方も楽しみにしているのではないでしょうか。
大福を食べるシーンや、金田さんと私のコミカルな掛け合いがその例ですが、刑事ドラマではたいてい、そうしたコミカルな掛け合いに自由が効かないものです。けど、このドラマではそこを自由に演じられるのが楽しいです。
『ここは楽しめる、遊べる、コミカルなところだな』と台本を読んでいて感じると、撮影ではハッスルしますね。そんなシーンは『芝居をしているな』と強く感じます」
コミカルな部分といえば、平井刑事が大岩一課長から“大福”というニックネームで呼ばれることが挙げられる。犯人逮捕に向け、験担ぎで縁起物の大福をよく食べることから名付けられたということだったが、season5・第4話では、大福に対する思い入れの理由が父親との過去にあったことが明かされた。初期には、大福と呼ばれることを嫌うような描写もあったが、その呼び名に平井刑事はすっかり親しみを覚えているようだ。
「私も最近そのことに気が付きました。最初のうちは一課長から『大福』と呼ばれることを否定したり、無言になったりする感じだったのに、今では喜んじゃってる。これでいいのかな?という話をプロデューサーさんとしたこともあります。
プロデューサーからは、シーズン1、2、3、4と物語が進む中で、登場人物も当然変化していくのだから、『大福』と呼ばれることに対する気持ちが変わっていくのも自然な流れなのではないか、と言われて。じゃあ大丈夫、となりました」
ちなみに「大福はお好きですか?」と尋ねてみたところこんな答えが。
「私自身、大福は好きです!(笑) というか、甘いものが大好きで、和菓子も大好きです。撮影で用意される大福は、毎回同じものではないので、それも面白いんですよ。おもちで作られたものもあれば、ふわふわした大福が出てくることもあり、特注されたずいぶんと大きい大福が用意されていたことや、イチゴ大福もありました。いろいろ出てくるのは楽しみの一つでもあります」
今シーズン第1話では平井刑事がIT技術を駆使して捜査を進めるなど、直近の作風は現代性を意識した作りも目立つ。そうした変化を斉藤由貴はどう感じているのだろうか?
「取り上げるテーマに、ITをはじめ、現代を意識したものが出てくるのはもちろんなんですけど、私が『このドラマは時代をちゃんと取り込もうとしているな』と感じるのは、カメオ出演的なゲストに、まさに今話題の人が起用されていることですね。
コスプレイヤーだったり、ユーチューバーだったり、インスタグラマーだったり、そういった方々がどんどん出てくる。彼・彼女たちは、独特な面白さがあるんですよね。ご一緒することで時代の風を感じ、刺激を受けています」
レギュラーにも新たなキャラクターが加わったseason5。最後に、最新シーズンへの思いを聞いた。
「今回、キャストが少し変わりまして、フレッシュな面々が増えたので、皆さんとのやりとりはとても楽しみです。だけど、同じくらい、内藤さんや金田さんをはじめ、ずっと一緒にいる方との関係性を深め、決まり事に縛られずにちゃんと感情を動かしてお芝居をするということを楽しみにしています。結局はそこが大事ですね。
見る方には、今週はどんな面白いことをやってくれるんだろう、どんな事件が起こるんだろう、と気に掛けてもらえるといいですね。ふざけ過ぎるのはダメだけど、フィクションとしての面白さが、このドラマシリーズの持ち味だと思うんです。純粋に楽しんで笑ってもらえたらうれしいです。そのために、私たち俳優は、きちんと真面目に、精一杯、面白いことをやろうと思います」
「警視庁・捜査一課長 season5」第5話あらすじ
警視庁捜査一課⻑・大岩純一(内藤剛志)のもとに「着物でぐるぐる巻きにされた男性の遺体が見つかった」という知らせが入る。犯人は被害者を絞殺した後、なぜか色留袖の反物を遺体に巻き付けていた。橙(だいだい)色のその反物には美しい女性の絵が描かれており、布地の一部が細⻑く切り取られていた。
被害者の多田野智也(犬塚マサオ)は和服のレンタル店を営んでいたが、前年倒産。近年、レンタル店の多くはコストを抑えるためにデジタルプリントで柄を印刷した着物を扱っているが、多田野の店では先代から手描きの和服にこだわり続け、それゆえ安価で着物をレンタルするライバル店に客を奪われてしまったらしい。
捜査で、遺体に巻かれていた反物の絵を手掛けたのは、5年前に他界した日本屈指の手書き職人・荒川祥雲(篠塚勝)だと判明する。
祥雲の死後、跡を継いだひとり娘の荒川着子(大⻄礼芳)はその美しさと腕前から、“呉服界のカリスマ”の名をほしいままにしていたが、多田野と言い争っている姿が目撃されていたことが発覚。現場資料班刑事・平井真琴(⻫藤由貴)は着子を直撃するため、彼女が出席する着物展示会に潜入する。
和服を艶やかに着こなした着子は、壇上では「伝統、命︕」「父の意志と伝統を受け継ぎたい」などとスピーチしていたが、控室で口にしていたのはアップルパイと炭酸飲料、さらにサングラス姿でアメリカ車を運転するなど、“和”や“伝統”のイメージをことごとく覆すアメリカンなライフスタイルだった。しかも、着子は手描き職人でありながら、金儲けのため、裏ではデジタルプリントを推進しているというウワサもあると分かる。
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