『今夜、秘密のキッチンで』がクセになる…高杉真宙“年下シェフ”の激メロ台詞に沼落ち
毎週木曜22時放送中の『今夜、秘密のキッチンで』(フジテレビ系)。このドラマ、妙にクセになる。
主人公は元女優で専業主婦の坪倉あゆみ(木南晴夏)。夫の渉(中村俊介)は大手飲食店グループの社長、小学3年生になる前妻の娘と家族三人で暮らしている。一見すると幸せそうでも、モラハラだった夫と完璧主義の姑に挟まれて、キッチンドリンカーになっていたあゆみ。実は女優の仕事でスキャンダルが起きてしまい、疲れていたところに夫が現れた……といった背景が。幸せな家庭を夢見ていたのに、蓋を開けたらどんでん返しだった顛末。第一話から、少し韓流ドラマのような雰囲気だと思っていた。
そんなある夜、自宅のキッチンに突然現れたのはシェフユニフォームを着たKei(高杉真宙)。実は彼、登山中の事故で意識不明の昏睡状態にある、イタリアンシェフの若林慧(あきら)。体外離脱した意識体があゆみの元に現れた。おそらくその理由には、モラ夫が深く関わっている。ヒール役なのにモラ夫が大活躍。
Keiから毎晩、料理を教わり、会話をしていくうちに惹かれていくあゆみ。もちろん、Keiも同じ気持ち。ただ昏睡状態の本物の彼には、婚約者で料理研究家の小椋藤子(瀧本美織)がいる。どうやら彼女はモラ夫の愚行に気づいているようだ。そして意識を取り戻しつつあるKeiは、藤子の元へ戻ってしまう。そうなれば、せっかく娘が可愛くなってきたのに、あゆみも元の生活に戻らなくてはならない。最終的に二人の行方が物語の核だ。
◆Keiの激メロセリフが連発
第一話放送の中盤から「あ、ひょっとしてKeiはイマジナリー……?」と疑念を持ちつつ、リアタイしていた本作。私はラブストーリー、年下男子と年上女性の恋愛を並べられるとどうも弱い。平成からこのジャンルの作品は視聴網羅してきた。そんな猛者(?)でも新鮮な設定だ。なんといってもあゆみが愛したKeiは、この世に二人存在しているようなもの。ハッピーエンドの片鱗が全く見えてこない。それなのにKeiは年下男子らしく、自分を「あゆみさんの専属シェフ」と言い、ストレートに愛情表現をしてくる。ここがまたいい!
「もう心臓はないのに、恋する感情があるなんて」「あゆみさんがこれから年を取っていくのをずっと見ててあげるね。(中略)あゆみさんがシワシワになっていくのも楽しみだな〜」「ずっとこのまま、あゆみさんのために料理を作っていたいなって」
甘酸っぱすぎるセリフを放ちながら、時折、態度にワガママも交えてくる。そしてニヤリ、とさせるのがあゆみを囲む人物たち。妻のはつらつしていく様子を疑い始めたモラ夫の焦っている様子がいい。妻を食事に誘って断られると、それでも自我を崩さずに言い返す。
「俺が君のために空ける時間より、大事な用って……なに? リスケすればいいだろう!」
もうすでに妻の優先順位のなかで圏外に落ちているのも知らず、頑張ってしまう夫。ちなみに夫は、あゆみの友人・吉野舞(佐津川愛美)と不倫中。このパターンは恋愛すったもんだドラマの定番材料だ。もう一つ材料を加えておくと、実の母親に全く頭が上がらない。放送スタート前は「モラハラに耐えられなくなって年下男子に逃げ出す、不倫ドラマ?」と思っていたけれど、予想を遥かに超えたファンタジー作品になっていた。もう次週の放送が待ち遠しくなっている。
◆トレンディドラマを彷彿させる非日常空間
冷静に考えるとツッコミどころはある。毎夜、自宅のキッチンで騒いでいて家族に気づかれないのか。あゆみは体外離脱したKeiも、成仏寸前の幽霊も両方見て、感じられるのか。ただそんな瑣末な疑問はどうでもいい。なぜかといえば、これがドラマで非現実空間の醍醐味だから、存分に浸って楽しめばいいのだ。
以前、同局放送の『真夏のシンデレラ』(2023年)にも同じような感想を持った。なぜなっつん(蒼井夏海の愛称/森七菜)は、朝から晩まで働き詰めなのか。水島健人(間宮祥太朗)の神奈川から東京までの移動時間が早すぎないか。登場人物たちの距離感が一気に縮まりすぎではないか。ただ、そんな疑問を全て凌駕するほど、このドラマにもハマった。それと同じ現象を本作で味わっているような感覚……と言ったら、一部の視聴者は理解してくれるはず。思い出せば1990年代後半から2000年にかけての恋愛ドラマはこんなテイストの連発だったけれど、心躍っていた。
日々の生活で疲れている女性の五臓六腑に沁みる『今夜、秘密のキッチンで』。あのキッチンに私も行きたい。
(文/コラムニスト・小林久乃)
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