朝ドラ『風、薫る』のコレラ感染の描写に見る、コロナ禍と重なる人間模様
見上愛と上坂樹里がW主演を務めるNHK連続テレビ小説『風、薫る』が放送中だ。那須地域の山すその町で穏やかに暮らす一ノ瀬りん(見上愛)と、生後まもなく親に捨てられ東京府で独力で生きる大家直美(上坂樹里)の対照的な暮らしが第1週では鮮明に描かれた。
しかし、りんの平穏な日常は長く続かない。コレラの感染拡大により生活は一変する。本作に描かれる明治期のコレラ禍を見ていると、約5年前の新型コロナウイルス蔓延期を思い出す。危機に直面すると、人は悪意なく変化し、差別や孤立、看病の葛藤が浮き彫りになる。本稿では、こうした社会の中で、りんがどのような‟優しい風”を起こしていくのかに期待を込めて綴る。
◆コレラとコロナがあぶり出す人間の性
りんは明治維新前に家老職を辞し農家に転じた父・信右衛門(北村一輝)と母・美津(水野美紀)、妹・安(早坂美海)とともに、那須の里でつつましくも穏やかな日々を送っていた。
りんの日常を大きく変えたのは、‟コロリ”と呼ばれたコレラの流行である。感染者が少ない頃、美津は「恐ろしい…。一度かかったら7割が死ぬのでしょう?」と不安を露わにしつつも、どこか他人事のようであり、安は「お祭りはやる?」と能天気なことを口にしていたが、事態は急速に悪化した。
コレラ蔓延初期の描写は、先のコロナ禍を想起させた。私たちも「コロナって怖いよね。感染したら死ぬ危険もあるらしい」と怯えつつ、「イベントは中止にならないかな?」などとお気楽な会話をしていた。
また、感染への恐怖から他者への警戒心や敵意が高まる点も、時代を問わず共通している。りんの村では、感染者を出した家の家族が近隣住民から冷たい視線を浴び、村八分となり、謝罪せざるを得ない空気が生まれる事態にも陥った。そうした中で、りんの「どうして謝るの? 好きでコロリになったわけじゃねえのに」という言葉は重く響いた。
さらに、村を閉鎖し「東京から来た者は村には入れねえ」と通行を止める場面も描かれたが、コロナ禍でも「東京ナンバーの車が怖い」といった声がSNSなどで散見された。
コレラの猛威は一ノ瀬家にも容赦なく迫り、信右衛門が感染した。コレラ患者の看病は身内であっても忌避されるのが一般的だったが、りんは自ら看病を申し出て、父を避病院に預けることを拒んだ。しかし、信右衛門は家族への感染を恐れ、りんの優しさを拒み、一人納屋にこもって静かに息を引き取った。
疫病蔓延下では、感染対策と隔離が必要である。しかし、現代のコロナ対策を踏まえても、それが本人や家族にとって最善なのかは判断が難しい。何が正解かは答えが出ない。
平時であれば結束の強いコミュニティでも、日常が脅かされれば一変する。特に保守的な地方ではこうした傾向が強く、監視の目が厳しくなる側面が今でも少なからずあるだろう。だがそれは、自分や家族を守らなければならないという生存本能によるものだ。
5話では、りんの村が表面上は再び団結し穏やかさを取り戻したが、コレラ禍での振る舞いを知っているからこそ、複雑な思いが残った。◆りんは「優しい風」を起こせるか
りんは世の中の常識をただ受け入れるのではなく、疑問に思うこともあれば、反論を言葉にすることもある。
社会を変えられるのは、日常の‟普通”に疑問を持てる人である。大多数が当たり前だと思うことに「なぜだろう?」と問い、無批判に受け入れない姿勢が欠かせない。
こうした特徴は朝ドラヒロインの多くに共通しており、2025年の『あんぱん』の主人公・のぶ(今田美桜)も、戦時下では軍国少女になりつつも、ジェンダー規範など社会の常識に疑問を向け続けた。
『風、薫る』では、信右衛門は「私はただ、誰かが…負けた者、弱った者の側に立ち、手を差し出せる世でなければさみしい…さみしすぎる。そう思っただけだ」と、りんに武士を辞めた理由を明かしていた。
りんの村は平時には穏やかで善良な人が多いが、緊急時には保身が優先され、弱者に手を差し伸べる者は少なかった。これは人間全般に共通する点だろう。
信右衛門は「お前はきっと…優しい風を起こせる…」とりんに希望を託した。女性の自立が難しく、病気や貧困が広がっていた時代において、りんがどのような‟優しい風”を起こすのかに注目したい。
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