粗品

粗品が生姜猫に「78点」をつけた理由 『ytv漫才新人賞』で示した“面白さ優先”の漫才論

2026.03.07 17:03
提供:ENTAME next

霜降り明星・粗品は、いつだって私たちに「面白いとは何か」を真正面から突きつけてくる。

粗品は「第15回ytv漫才新人賞決定戦」に、2年連続で審査員として登場。自身にとって3度目となる審査の舞台に立った。

大会は結成6年目のぐろうが優勝を果たしたが、やはり目を引いたのは粗品の採点だった。彼の点数は80点台を中心とした厳しいもので、ぐろうのファーストラウンドですら84点と、これが粗品の最高点だった。

粗品は、自身の採点が相対評価ではなく絶対評価であることを公言している。基準は、M-1グランプリで優勝できるレベルのネタを100点としたもの。そのうえで、関西の若手漫才師たちはまだ「15~20点ほどの差がある」とも示唆している。

そんな中、あえて注目したいのが、粗品が最低点をつけた生姜猫だ。今大会で最も若手で、唯一のトリオ。コントでも実績を残し、昨年のM-1グランプリでは準決勝進出を果たすなど、まさに今勢いに乗る存在である。

彼らが披露したのは、言葉が詰まって出てこない状況を、食べ物が喉に詰まった際の対処法であるハイムリック法(腹部突き上げ法)に見立てたネタ。言葉が出ない状態を「詰まり」として処理する、いわゆる“システム漫才”だ。観客が状況を理解し、その言葉の攻撃性によって笑いが生まれる構造になっていた。

トップバッターのタチマチに対する客席の反応がやや厳しかったことを考えると、生姜猫のネタは明らかに“ウケて”いた。むしろ、この日の大会でも一、二を争うほどの笑いだった可能性すらある。だからこそ、粗品がつけた「78点」という数字が大きな注目を集めた。

講評で粗品は、ボケ数の少なさや言葉の結びつきの弱さを指摘していたが、本音はネタの“シャバさ”にあったのではないか。「面白い芸人からの評価は低い」とコメントしていたことからも、感度の高い人ほど評価しにくいネタだったことがうかがえる。

粗品はこのネタを“曲芸”とも表現していた。要するに、拍手をもらいやすい構造だったということだ。言葉が詰まる→ハイムリック法を行う→言葉が出る。この流れは非常にわかりやすく、観客が反応しやすい。いわゆる“拍手笑い”を生みやすい設計になっていたが、粗品はそこに違和感を覚えたのだろう。

実際、粗品は自身のYouTubeでも時間を割いて生姜猫のネタについて語っている。ただし、そこで語られていたのはシステム漫才そのものの否定ではない。彼が問いかけていたのは、「まず“面白い”が先に来ているかどうか」だった。

例えば、2019年のM-1グランプリで優勝したミルクボーイの漫才。あのネタも確固たるシステムを持っているが、それ以上に“面白さ”が先に立っている。テーマを変えても成立するほどの強度を持ち、結果としてシステムではなく笑いそのものに目が向く構造になっている。

粗品が若い後輩たちに伝えたかったのも、そこだったのではないか。革新的なシステムよりも、まずは笑いそのものを突き詰めること。その裏返しとして、「面白くはないんですよ」という強い言葉が出たのだろう。

面白いとは何か――その答えは人それぞれだ。だが、こと漫才において粗品は、揺るがない基準を提示し続けている。その真っ直ぐさと鋭さが、強く印象に残る「ytv漫才新人賞決定戦」だった。

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