日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』が教える “値踏みする社会”で自分を失わない方法
妻夫木聡が主人公・栗須栄治を演じる『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)が多くの視聴者の心を掴んでいる。本作は、北海道の広大な自然を背景に壮大なシーンが展開し、馬と過ごす中で心に変化が生じる登場人物の姿が描かれ、観る人に深い感動を与えている。今回は、本作に描かれる競馬に出走する馬と人間が共通して抱える事情に触れつつ、視聴者に感動を与える理由を探りたい。
人間も競走馬も常に評価される世の中私たちは幼い頃から常に評価の目にさらされながら生きている。入学試験では学力、性格などが見られるし、入社試験では出身校、性格、学力などが見られることもある。
さらに、祖父母や親の代から大都市圏に住み、中高一貫教育を受け、一流大学を卒業した後、有名企業に入社するルートの存在がネットの普及により広く知られるようになった。高校までの進学先や家族構成などは自分の力ではどうにもできない部分もあるため、“生まれたときから人生はほぼ決まっている”と嘆く若者も少なくない。
本作において、椎名善弘(沢村一樹)をはじめとする多くの馬主は“北陵ファームに行けば、確実に勝てる馬がいる”と考え、ホープをはじめとする日高の馬には見向きもしない。調教師の広中博(安藤政信)が善弘の馬を遠目で見ながら語ったように、競走馬の世界にも人間でいえば全寮制の一貫校があり、デビューを社会人とするならば、幼稚園から大学まで最高レベルの教育を約束されたスーパーエリートコースがあるためだ。
人や馬を出身地などでラベリングする見方は本作の4話でとりわけ鮮明に描かれていた。佐木隆二郎(高杉真宙)は競馬学校で有名ジョッキーの息子・松井(大西利空)から出身地や実家を蔑まれた出来事を振り返り、「何が違うんすか?どこで生まれたって、同じ人だし、馬は同じ馬ですよ」と素朴な疑問を口にしていた。隆二郎が言うように違いを説明できる人はそうそういないだろうに、多くの人たちは他者との差を目の当たりにし、希望をなくし、挫折を味わう。
敗北感や劣等感を抱えている筆者は、日高の馬やレースに勝てない馬を見ると感情移入し、ついこんなことを考えてしまった。
そうした中で、本作では、馬を我が子同然に信じる山王耕造(佐藤浩市)や野崎剛史(木場勝己)とその娘の加奈子(松本若菜)、馬の特性を見極めて競争させる広中を通して、生まれや育ちを超えた可能性があることを教えてくれる。
1話で描かれていたように、イザーニャが足の癖ではなく血統を考慮して出場したレースで1位になり世間の評価を覆したように、自分が活躍できる場を見極めることでキセキが起こることもあるのだ。
馬にしてみれば勝手に比較され、期待され、競走させられるのは迷惑な話かもしれないが、人間も馬も強くなければ、あるいは他者に利益を与えられなければ居場所を得にくい。
人間が築き上げた、互いを値踏みする社会はどこか哀しく、息苦しいが、常識を一瞬で塗り替えることは叶わず、現状においては希望や喜びをどこかで見出しながら、ただ従うしかないのだろう。人はそれぞれ何かを抱えながら生きている本作を観ていると、人がそれぞれの事情を抱えて生きていることを改めて感じる。
栄治は大手企業で税理士として働いていたが、仕事で挫折を味わい、田舎の父と真っ直ぐ向き合えなかった後悔に苛まれていた。
耕造は人材派遣会社・ロイヤルヒューマンの創業者であり、競馬界で著名な馬主として成功を収めている。しかし、妻・京子(黒木瞳)には競馬事業を理解されず、息子・優太郎(小泉孝太郎)からは事業廃止を迫られている。さらには、夢を追いかけているさなか、病気で倒れる事態となった。京子についても、過去のトラウマから馬と競馬を嫌っているが、夫だけでなく、娘・百合子(関水渚)が馬を愛する騎手・隆二郎(高杉真宙)との結婚を望むとは皮肉な因縁である。
そして、本作における注目人物は、耕造の隠し子の中条耕一(目黒蓮)だ。母・美紀子(中嶋朋子)は耕造から「相馬眼」があると称賛され、ロイヤルハピネスを選んだ人物でもある。耕一も父と母の血を引いてなのか馬に強い関心を持ち、大学では競馬研究会に属し、ロイヤルホープの才能を見抜く眼力を持っている。そんな彼が父・耕造との関わりを拒絶しながらも、共通の興味を持っていること、そしてロイヤルホープが父の馬だと知ったときの複雑な心境を想像すると心が痛む。しかし、原作に従えば、後に耕一は父の“夢”にもかかわる重要な決断をすることになる。
本作では、登場人物たちが悩みや不安を抱えながらも懸命に生きる姿や、馬に希望を託して生きる姿が描かれている。家族であっても理解し合うのは難しいし、生きていれば希望を見出せない時期もある。また、あと一歩のところで夢が叶わないこともある。それでも、生き続けることで状況が好転するタイミングがあったり、愛するゆえに憎い相手とも折り合いをつけられたりする瞬間があることに改めて気付かされる。
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