(上)『終活シェアハウス』(NHK)、(下)『終幕のロンド』(カンテレ)公式サイトより 

「ひとりで生きること」は寂しさだけじゃない “終活ドラマ”が映す新しい「老後のかたち」

2025.11.01 16:03
提供:ENTAME next

近年、死や終活をテーマにした作品が相次いで放送されている。前クールでは綾瀬はるか主演の『ひとりでしにたい』(NHK総合)が放送され、今期は草彅剛主演の『終幕のロンドーもう二度と、会えないあなたにー』(フジテレビ系)、さらには城桧吏・畑芽育がダブル主演する『終活シェアハウス』(NHK BSP4K・BS)が同時期にオンエアされている。これらは単なるトレンドではなく、家族の絆が希薄化し、未婚・単身世帯が急増する現代日本社会の鏡像ともいえよう。今回は、こうした作品群が視聴者に与える影響について考えたい。

他人に無償で迷惑はかけられない…多くの人が将来に抱く不安近年、終活という言葉を耳にする機会が増えた。ある調査によると、20代以上の年代はいずれも8割以上が老後に何かしらの不安を抱え、30代でも3割台が老後の住まいについて考えたことがあるという。

そうした中でも、『ひとりでしにたい』の鳴海(綾瀬はるか)のように、単身者の中には「ひとりで生きて、ひとりできちんと死にたい」と思っている人は多いと思う。社会的責任を日々全うしつつ、楽しく生きていても、孤独死の話を聞いて怯えたり、自活して生きているにも関わらず、ふとした瞬間にひとりで生きることがつらくなり、枕を涙で濡らしたりすることもあるだろう。老後や独り身であるゆえの不安を感じる中で、鳴海の同僚である20代の優弥(佐野勇斗)の言葉は腑に落ちた。「結婚すれば安心って 昭和の発想ですよね?」「金がなくても家族がなくても適切な場所に一言『助けて』と言えば孤独死を避けられる」といった言葉の数々に筆者も慰められた。

家族がいても孤独死を防げる保証がなく、死後の整理を親族が引き受けてくれるとは限らない。こうした現実は『終幕のロンドーもう二度と、会えないあなたにー』にも描かれている。本作は遺品整理に携わる樹(草彅剛)を中心に展開する人生の物語だ。遺品整理という商いが普及し始めたのは2000年代に入ってからであり、この業界はまだまだ歴史が浅い。本作の1話では母と息子が長年にわたって離れて暮らしていたという事情があったにせよ、孤独死した母親の遺品整理を業者に丸投げする息子(吉村界人)が登場した。子どもを産んでもさまざまな事情で独り身となり、遺品整理も他人任せにされてしまう現実がある。また、真琴(中村ゆり)の母・こはる(風吹ジュン)のように、娘に迷惑はかけたくないという思いから、生前整理を我が子ではなく、業者と行おうとする人もいる。

社会学者の上野千鶴子は「結婚していようがいまいが、誰もが最後は一人」と述べていたが、私たちは既婚か未婚、子どもの有無に関係なく、最後は一人になる。親族のつながりが希薄になっている今、その傾向が強い。さらに、近年は“独り身の親族の面倒を見たくない” “独身の叔父叔母の世話をしたくない”“遠方に住む老いた親に迷惑をかけられたくない”という声も大きく、自分の亡き後に“誰かに迷惑をかけてはいけない”という思いも強まっている。親族含めて他人に無償で迷惑をかけてはいけないという風潮、人と人との結びつきの脆さが、老後や死後についての不安を増幅させているとも思う。血縁に頼らず支え合う暮らしの選択も10月から放送が開始した、城桧吏と畑芽育がダブル主演する『終活シェアハウス』では、60年来の友人である厚子(室井滋)、瑞恵(戸田恵子)、恒子(市毛良枝)、歌子(竹下景子)が「カメ・ハウス」と名付けた家で和気あいあいと暮らす様子が描かれている。彼女たちは“一人になったら一緒に暮らそう”と約束しており、その約束は果たされ、今の暮らしがある。生活費を出し合い、家事を分担し、もともと親しい関係にあるためコミュニケーションもうまくいっている。

翔太(城桧吏)が「カメ・ハウス」の掃除された室内や新しくはないが整えられた調度品を見て「生活を楽しんでるな」と感じたように、若者が心惹かれるくらいほのぼのとした空間でのていねいな暮らしだ。高齢女性のこうした暮らしを見ていると、独り身の老後といってもさまざまあり、明るくにぎやかに暮らす方法は、自分が知らないだけで実はいろいろあると気付く。

現実世界でも高齢者向けのシェアハウスだけでなく、高齢者と若者が支え合って暮らすシェアハウスが増えている。共同生活が苦手な人にとっては不向きかもしれないが、孤独な老後を何よりも避けたい人にとっては選択肢が増えているのは確かだ。

単身者の老後のイメージが明るいものに一昔前のドラマでは、独り身の高齢者は暗く寂しい影を強調され、30代以上の未婚者も“不幸”“可哀想”というレッテルを貼られたように描かれることが多かった。フィクションと現実が別物だと頭では分かっていても、似たような境遇の登場人物がネガティブに描かれると、自分の未来に不安が募り、“私の選択は正しかったのだろうか?”と自問してしまう。

世間では“結婚しなければ老後は孤独”“高齢になれば居場所はなくなる”“独り身は寂しい”という固定観念がまだまだ根強い。実際、子どもの有無を問わず、単身高齢者の孤独は深刻な社会問題の1つだ。

それでも、迷いながらも自分の人生を謳歌するアラフォー独身女性や、和気あいあいと笑顔で暮らす高齢者たちの姿を見ると、“孤独”や“不幸”は必然ではないと気づかされる。

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