1988年におこなわれたUWFの新人テストの光景。試験官を務めた前田は体格や年齢から将来性を重視。体格的に不安を感じた場合、テストの点数がいくら高くても合格にはしなかった

「今のレスラーは受け身取れていない」物議をかもす前田日明の“過激発言”が刺さる理由

2025.05.01 12:04
提供:ENTAME next

過激な闘いを展開していると、どうしても起きてしまうのがリング上での事故。それについて格闘王・前田日明がYouTubeで過激に「物申した」ことで大きな波紋を呼んでいる。その荒々しくも情熱がほとばしる言葉に隠された真意を、UWFの最新ムック本に携わった元・週刊プロレス記者の小島和宏は「単なる過激な物言いではない」と知られざるバックボーンについて考察する。

プロレス界で起きたリング禍について、前田日明が発言したことが大きな反響を呼んでいる。

要するに「受け身の重要性」の話、である。いろんな人に「どう思いますか?」と聞かれたが、どうもこうも、前田日明の言葉は大正論だと思う。言葉がキツかったり、語気が荒かったりするから誤解されがちだが、プロなんだから、受け身の鍛錬をしっかりやれ、といわれたら、もう「ごもっともです」と言うしかない。

結局、プロレスという言葉が独り歩きしてしまっていることにも問題はあると思う。あくまでも「プロフェッショナル・レスリング」の略称が「プロレス」のはずなのだが、いつしか「プロレス」だけで意味を持つようになってしまった。当たり前のように「学生プロレス」とか「アマチュアプロレス」と言った単語まで定着してしまったが、アマチュアなのにプロってなんなの?って話になる。

プロレスにおける「プロ」の定義はさまざまあるかと思うが、やはり相手を壊さない技術と、自分の身を守るための受け身を会得してこそ「プロ」である、というのが前田日明の主張。たしかにそれができていないレスラーや団体もあるかもしれないけれど、けっして、現在のプロレスがその要素を軽んじているわけではない。

ぼくがプロレスラーの取材していく中で練習生時代の話を聞くことがあるのだが、ある団体の選手は「練習のために道場に通っていたけれど、一定のレベルに達しないとリングに上げてもらえなかった。目の前にリングがあって、仲間たちが一生懸命、リング上で練習をしているのに、ずっとリング下のマットで基礎体力トレーニングだけをする日々は辛かった」と語る。

ここでいう一定レベルとは、受け身の練習に耐えられるだけの肉体と体力を指すようだ。プロレスラーになるために受け身の会得は必須だけど、受け身をとれるようになるまでには、しっかりとした体力が必要。その審査をクリアしない限り、たとえ練習であってもリングには絶対に上げない、というのは、ひとつの線引きとして正しいと思うし、こういったことすら守られていないなら、もっとリング上での事故は増えているはず。前田日明が憂いるほど、令和のプロレスはダメダメではない、ということである。

ただ、前田日明の言葉がやたらと刺さってしまったのには、ちょっとした理由がある。

5月1日に発売されたムック『UWF過剰考察』(宝島社・刊)ぼくは新生UWF時代に練習生だった海老名保さんのインタビューを担当している。特撮の取材や執筆もしているぼくにとって、海老名さんは秋田発のローカルヒーロー・超神ネイガーの産みの親としてリスペクトしまくりの存在なのだが、今回のテーマはあくまでもUWF時代の話。海老名さんは道場での練習中に頭部を打って救急搬送された。一命はとりとめたものの、プロレスラーになる夢は断念せざるを得なくなってしまった。

その練習というのが、まさに受け身だった。そのあたりの背景や当日の様子は長くなってしまうので、ぜひインタビュー記事を読んでいただきたいが、海老名さんによると、練習時に起きた事故に対して、前田日明はものすごく悔いていて(この翌年にも、ほかの練習生の死亡事故が起きている)、いまだに折に触れては「大丈夫か?」と前田日明から電話があり「いまでも申し訳なく思っている」と何度も何度も謝罪されるのだという。UWFブームの真っ只中、メディア対応に忙しく、合同練習の時間は不在になることがあった前田。そのタイミングで起きてしまった事故だけに、さらに申し訳なさが大きくなってしまっているのだろう。昭和63年に起きた事故について、令和になっても頭を下げ続けていたとは……。

そんな話を聞いた直後に巻き起こった「受け身論争」。前田日明はリングを「命をやりとりする場」と称し、怪我でリタイアすることで、その選手だけでなく家族の人生までもめちゃくちゃにしてしまう、と熱弁していた。そんなに熱くならなくても、と感じた方もいるかもしれないが、実際に若き日の前田日明が味わった苦悩と悔恨がその言葉の裏にあるのだとしたら、また受け止め方も違ってくるのではないか?

人間と人間が闘う競技だから、絶対に安全なんてことはありえない。それでも事故の危険性を限りなくゼロに近づけるのが「プロ」としての務めである。いたずらに波紋が広がりすぎてしまった嫌いはあるが、過激な警鐘に立ち止まり、いまいちどプロレスに携わる者たちが議論することは大切なことだと思う。

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