橋本環奈はなぜ実写化がうまい？『おむすび』よりハマり役『天久鷹央の推理カルテ』でみせる魅力

『天久鷹央の推理カルテ』は、現役医師で作家の知念実希人氏の同名小説が原作。テレビアニメ化もされた人気の医療推理ミステリーで、4月22日に第1話が放送された。橋本演じる主人公・天久鷹央（あめく・たかお）は、驚異の知能をほこる「診断医」。病院に運び込まれてくる患者たちの説明不能な現象を、豊富な医療の知識と天才的頭脳で解き明かしていくストーリーとなる。

鷹央は、自閉スペクトラム症で、卓越した知能と記憶力を持ちながらも人とコミュニケーションを取るのが苦手なキャラ。さらに、診断医というなじみがない医者であり、かなり変わった設定のドラマとなっている。

初の医師役でありかなり難しい役になるのだが、橋本はコミカルかつ繊細に鷹央を表現。アニメ版とは違った魅力を役に吹き込んでいる。アニメ版では、ぶっきらぼうで毒舌ながら少しクールに鷹央が描かれているが、ドラマ版で橋本はかなりオーバーリアクションも取り入れながら表現。結果、天才的な医師でありながら、どこか抜けている鷹央を視聴者にストレスなく見せることに成功している。

アニメ版が好きな人には橋本の演技は大げさに見えるかもしれないが、シニア層もふくめ幅広い世代が見るドラマでは、オーバーくらいの演技のほうがドラマは見やすくなる。橋本の演技は、鷹央を演じる上でドラマ版として成功だと言えるだろう。

また、橋本のビジュアルの強さも特筆すべきだ。アニメ版の鷹央は、かわいらしさの中に医者としての凛々しさもあり、キャラとしてファンから絶大な支持を得ている。そんなアニメキャラに負けないほど橋本のビジュアルが強く、違和感なくアニメや原作ファンでもドラマを見ることができる。サイズ感もちょうどよく、実写化で巻き起こる原作ファンからのバッシングもSNSでは少ないように思える。

鷹央を完璧に演じて称賛を受ける橋本だが、そもそも実写化に定評がある女優であり、今回の成功も当然だと言えるかもしれない。

橋本といえば、映画『キングダム』では人気キャラの河了貂を演じ、見た目がそのまんますぎると絶賛を受けることに。さらに、映画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』のヒロイン・四宮かぐやは、再現度の高さが評判を呼んだ。かぐやは文武両道の令嬢なうえに、容姿端麗で何をやっても完璧なキャラ。浮世離れした箱入り娘なのだが、不器用でどこか憎めないかぐやを魅力たっぷりに演じて映画のヒットにつなげた。

また、『斉木楠雄のΨ難』の照橋心美、『今日から俺は!!』（日本テレビ系）シリーズの早川京子、『弱虫ペダル』の寒咲幹など、どのキャラも実写化に成功している。そんな中でも、いまだにファンが多いのが映画『銀魂』シリーズで演じたヒロイン・神楽だ。神楽は、宇宙最強といわれる戦闘種族の生き残りで、チャイナ服を着て片言の日本語を話すキャラ。圧倒的なビジュアルの良さをほこりながら、暴言をはき大食いで怪力という特殊な設定となる。また、白目で鼻をほじり、大食いしたうえに豪快に吐くなど特殊な少女。

そんな神楽を、橋本は振り切った演技で披露して称賛を浴びることになった。今回の天久鷹央でもそうだが、トリッキーな設定のキャラを実写化するのが橋本は非常に上手だ。キャラの設定をうまく読み取り、原作ファンが思った以上の再現を見せてくれる。

なぜ、橋本は漫画やアニメなど原作がある作品のキャラをしっかりと再現できるのか？ 一つには、前述したようにビジュアルの強さがある。スッキリして透明感のある顔立ちなので、ヘアスタイルやメイクでキャラを作り出しやすい。ベースとなる顔が、万人が思う美女なので、アニメや漫画で描かれる美人キャラにハマるのだろう。

また、声の作り込みがうまいのも魅力だ。少し鼻にかかったハスキーボイスを持つ橋本だが、キャラによって声のテンションを作り、役にハマりこむように調整している。元アイドル出身だけあり声色を変えるのが上手なようで、違和感なくキャラに合う声を聞かせる。今回の鷹央も、アニメ版とは声の雰囲気もトーンも違うのだが、橋本が演じる実写も違和感がない。キャラの作り込みが非常に上手で、橋本環奈という女優の魅力の一つとなっている。

今回、『天久鷹央の推理カルテ』でも、実写化が上手なことを証明した橋本。どんな一流女優でも、原作のある作品でキャラ作りが完璧な訳では無い。だからこそ、橋本のひとつの武器になる。

歴代朝ドラでワーストとなる平均視聴率を記録した『おむすび』では失敗したが、『天久鷹央の推理カルテ』で橋本が大復活を遂げる可能性が高い。最終回まで、どんな魅力あるキャラを見せてくれるのか楽しみだ。