「第14回ytv漫才新人賞決定戦」の優勝者・フースーヤ

霜降り明星 粗品が見せた、審査員としての鮮やかすぎる手腕「第14回ytv漫才新人賞決定戦」

2025.03.05 21:03
提供:ENTAME next

「第14回ytv 漫才新人賞決定戦」が3月2日(日)に開催され、芸歴9年目のフースーヤが優勝を果たした。誰もやりたがらない役割に等しい「お笑い賞レースの審査員」だが、今大会ではその一員を務めた霜降り明星・粗品の鮮やかさが際立った。

そもそもお笑いに優劣をつけることは難しく、次代のスター候補から点数1つでそっぽを向かれるリスクをはらむ。もちろん、これらだけが理由ではないが、「M-1グランプリ」の審査員などは多くの芸人にとって最も腰が重く緊張感の伴う仕事となっている。

しかし、霜降り明星・粗品は賞レースの審査員について自身のYouTubeで「やってあげたい」と言った。埋もれる可能性のある芸人を拾い上げるため、そして「面白くない人が優勝しないようにするため」。いささか傲慢にも聞こえていた言葉は、2日の「第14回ytv漫才新人賞決定戦」を終えた今、彼なりの矜持だったことが容易に理解できる。

お笑い界の革命児が初の賞レース審査員で何を言い、どんな点数をつけるかは大会前から注目の的だった。そんな大舞台で粗品は全方位からの期待に完璧に応えてみせた。

まず震えたのがコンビへの審査コメントだ。今大会では7組の若手コンビが優勝をかけて戦ったが、粗品は全組についてコメントする機会が与えられた。バリバリの現役漫才師であるシャープな目線は容易に理解でき、それでいて「漫才が面白くない」や「アホの客に迎合しすぎている」という強い言葉は粗品らしい漫才への強いこだわりを感じられる。

審査コメントで新しいと感じたのは全組に明確な改善案を与えていること。これまでの賞レースの審査員で「もっと〇〇してもよかったかなあ」といった類の言葉はあっても、粗品ほど的確かつ詳細に“こうすればいい”を言語化できている審査員はいなかったのではないか。

たとえば、最終的に優勝したフースーヤに伝えた「ボケとツッコミでスパンって笑かしてからギャグに入ればもっと漫才って認められる。ちょっとウケを諦めてるくらいのテンションでツッコんでいるのが気になった」という言葉。そもそもフースーヤはギャグを連発してつないでいくような特殊な漫才。人を選ぶスタイルであることは確かで、どのように見ればいいのだろうと戸惑ってしまうこともある。

そこで、粗品はフースーヤの漫才が漫才であることを認めつつ、より多くの人に受け入れられるようなスタイルを提案した。すでにお笑いファンの間では高く評価されながら、「M-1グランプリ」決勝にはまだ進出できていないフースーヤに対し、旧知の仲である粗品からの温かなエールにも見えた。

審査のもう1つの肝心要が点数だ。7組中3組に70点台をつけ、今どき賞レース決勝ではなかなかお目にかかれない数字に多くの人が驚いた。だが、最高点と最低点の点差は「9」となっており、自身の点数が結果に大きな影響を与えないような配慮もしている。

加えて、自身のYouTubeで点数が「絶対評価」であることを明言した。7組の中での相対評価ではなく、自身の漫才の面白さという評価の中で点数をつけたわけだ。つまり粗品が今後他の賞レースでも審査員をやったときに点数をすべて横並びで見比べることができる。ytv漫才新人賞決定戦は大阪の若手賞レースだが、例えば最高峰である「M-1グランプリ」で粗品が審査員をやったときに初めて90点台が見られるかもしれない。

それに絶対評価で粗品が点数をつけたことによって、厳しい点数が連発した初期の「M-1」のように緊張感が生まれた。近年の和気あいあいとする雰囲気とは一線を画すようなピリつきは懐かしく、これも良かったと思い出させてくれる。

粗品の審査はお笑い界に大きな影響を与えた。これだけ的確な分析を自分たちにもしてもらいたい、高い点数をつけてほしいと感じた漫才師はきっといるはず。また、粗品の漫才論を聞きたい、彼だから見てみようと思った視聴者もいるだろう。

お笑い界をひた走る時代の寵児がまたひとつ新たなステップに上がった。

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