

マカロニえんぴつ、TVアニメ「アオのハコ」を彩る『然らば』に込めたのは“青春”

放送中のTVアニメ「アオのハコ」(毎週木曜夜11:56-深夜0:26、TBS系/Netflixほかで順次配信)。今年1月から始まった第2クールでは、オープニングをマカロニえんぴつの「然らば」が彩っている。この曲について、また同曲も収録されるメジャー5th EP『いま抱きしめる 足りないだけを』について、マカロニえんぴつのメンバーに聞いた。
「設定が良すぎる」「やっぱり恋はギルティがいい」…アオのハコで振り返るマカえんの青春
──最初に「アオのハコ」という作品の魅力や面白さを、皆さんはどのようなところに感じているのかを教えてください。
はっとり(Vo, Gt):なんといっても好きな先輩と同じ家に住むことになるという設定! 「タッチ」では幼馴染の南が隣に住んでいますよね。隣に住んでいるだけでもドキドキするのに、一緒に住むなんて……ど、どういうこと!?(笑) 設定が良過ぎます。あとは周りには内緒の関係というのもいいですよね。やっぱり恋はギルティがいいと思うんですよ。人に言えない要素があって初めて燃えるというか。そういういろいろなポイントがドキドキをブーストさせていて、よく作られているなぁと思います。それでいて、主軸はスポーツに置いているから、チャラさがなくて。なんかすごく入り込めちゃいました。
田辺由明(Gt, Cho):共学の高校に通っていた方は、見ながら多少なりとも自分の高校時代を思い出すと思うんですけど、僕は中学高校と男子校だったので、そういう高校時代は全くなくて。だから自分の経験を思い出しながら見ている人とはたぶん別のベクトルですけど、すごくキュンキュンさせてもらっています。
はっとり:男子校時代の愛読誌は「いちご100%」だもんね?
田辺:そうそう!(笑)
はっとり:やっぱり少年誌に載っているちょっとエッチなやつっていいよね。
田辺:うん、好き好き! だし、そういう生活に憧れちゃう。
はっとり:ただ、「アオのハコ」の世界も、別に共学に通っていても完璧なリアルではないよ。理想も入ってる。
田辺:そうなの!?
はっとり:うん。共学だった俺も「こんな青春、あるのかな〜」って思うもん。でもリアルに描かれているから「きっとあるはずだ」って思える。
──自分の過去を少し捏造しちゃいますよね(笑)。
はっとり:そう! しかも俺、実は高校時代に1年間だけバドミントン部だったんですよ。最初は美術部に入ったんですが、幽霊部員ばっかりで楽しくなかったからやめて。そのとき好きだった子がバドミントン部だったから、下心でバドミントン部に。
──「アオのハコ」のような青春が!
はっとり:結局バンド活動が忙しくなってやめちゃったんですけど。でも、だからこそ自分の青春の思い出の捏造のしがいがあります(笑)。
一同:あはは(笑)。
長谷川大喜(Key, Cho):僕は(猪股)大喜に対してのうらやましさしかない(笑)。モテてるし、自分も追いかけている人がいるし、でもちゃんと部活も頑張っているし、なんかもう……うらやましい! 僕は帰宅部で、家で鍵盤を弾くみたいな学生時代だったから、「部活に入っていたら、そういう、人との豊かなものも得られたのかな」って思うんですけど……でもどうやら、それを経験したはっとりくんの青春時代も違ったらしいので、理想なのかもしれないですね(笑)。とりあえず大喜がうらやましいなと思いながら読んでいます。
高野賢也(Ba, Cho):主要人物みんなの部活が違うのも良いですよね。みんな違う部活で、お互い頑張っていて。大会も違うから、自分のことに集中しながらも「今日の試合、どうだったかな」って気になって、みたいな。あとは恋愛だけじゃなくて友情も描かれているし、千夏先輩の胸の内を明かさない“ラスボス感”も魅力的だなって。
──人物設定も巧妙ですよね。
高野:はい。そもそも“年上の先輩に恋をしている男子高校生”という主人公像も、かわいくていいなと思いました。
「アオのハコ」OP主題歌ならではの工夫
──そんなアニメ「アオのハコ」のオープニング主題歌は「然らば」。この曲は「アオのハコ」のどういったところからインスピレーションを受けて作っていったのでしょうか?
はっとり:気づいている人もいると思いますが、蝶野雛ちゃんにスポットを当てて書きました。この作品のヒロインは千夏先輩だと思いますが、僕は蝶野さんの一歩引いていろんな決心をしていく姿やその健気さに共感してしまって。見ながら肩入れしてしまいました(笑)。
──雛ちゃんらしさを、どのように楽曲に落とし込んだのでしょうか?
はっとり:蝶野さんって、諦めていない思いや譲れない気持ちみたいなものが隠しきれていないじゃないですか。そういう感情の機微をメロディでも出せたらいいなと思いました。歌う際にもちょっと憂いを漂わせながら。あえて鼻もつまらせて。
田辺 あえて!?(笑)
はっとり:うん、あれは泣きじゃくったあとの声を再現しています! ……と言いたいところなんですが、実はレコーディングしている時期に夏風邪を引いてしまっていて。ツアー中だったんですが、ツアーもアンプの上にティッシュ箱を置いて、鼻をかみながらやっていたんですよ。だからレコーディングのときも、自分的にはさすがに鼻声過ぎて「これはバレるだろう」と思って、スタッフやメンバーに「これはアウトだよね?」って聞いたら、みんな「いや、意外とわかんないよ」って言うからそのまま進めたんですけど……たぶんみんな一緒にツアーを回っていたから、僕の鼻声に慣れちゃっていただけだったんだと思います。
田辺:確かに(笑)。
はっとり:実際、リリースしたらSNSでめっちゃ書かれましたもん。「鼻声ですよね」とか「いや、はっとりのことだからあえてに違いない」とか。あえてだと思ってもらえていたならいいんですけど(笑)。
──今、楽曲に落とし込んだ雛ちゃんらしさを伺いましたが、演奏時に「アオのハコ」のオープニングだからこそ入れたフレーズやこだわったこと、普段とは変えたところがあれば教えてください。
はっとり:僕は作品タイアップ曲のときは登場人物の名前を隠すというのをよくやっていて。今回は最後の<舞い切った千の夏と蒼、遮って蝶になった嘘>というフレーズに名前を隠し入れました。
田辺:僕はギターソロに感情を全部ぶつけてやりました!
──それは雛ちゃんの気持ちを代弁するような気持ちで?
田辺:いや……。さすがに僕は35歳なので、女子高生の気持ちになるのは難しいですけど……(笑)。
はっとり:でも漠然と、青春感というか、登場人物たちの“青さ”に寄り添ったところはあるよね。
田辺:そうだね。あとは「ああいう青春を過ごしてみたかったな」っていう……妬みも入っていると思います(笑)。
青春とは…必死感、「今に支配されている感じをサウンドで出したかった」
長谷川:僕は登場人物たちと同じくらいの年齢のときにバンドを始めたんですよ。だからあの頃の自分を憑依させたところがあって。当時って、鍵盤は目立てば目立つほどいいと思っていたんです。だから今回のサビでは、鍵盤でボーカルを食ってやろうくらいの気持ちで、とにかくがむしゃらにやってみました。今はバランス感を意識してしまって、あまりそういう音作りはしないので、一周回って新鮮でしたね。そういうことも大事だよなって思い出させられました。
高野:僕は高校時代、吹奏楽部だったんですが、めちゃくちゃ厳しい部活だったんですよ。だからそのときのことを思い出して。当時のがむしゃら感を出せたらいいなと思って、キレイに録るということよりも、熱量のある音を心がけました。
はっとり:ギターもあまり録り直しませんでした。思いが乗ったテイクをそのまま使いました。僕たちがこれまで作った曲で、“青春”をテーマにした曲はいくつかありますけど、やっぱり“青春とは何なのか”という問いには答えがなくて。でもわからないから面白いし、青春について考える時間さえも青春なのかなとも思ったりして。ただ、今のところは、“過ぎたことでも先のことでもなく、今のことしか考えられない”ってなっている時間が青春なのかなって、なんとなく思っているんですよ。その必死感、自分が“今”に支配されちゃっている感じを、サウンドでも歌でも出したかったというのはあります。
諦めないと決別できないリアルな想いを表現した「然らば」
──タイトルは「然らば」。「それならば」という意味と、「サラバ」を掛けているのかなと推測しましたが、このタイトルに込めた思いを教えてください。
はっとり:まさにおっしゃっていただいた通りです。「それだったら」というのは、半ば投げやりな気持ちから。それこそ蝶野さんの感情からなんですが、本当は気持ちの整理はついていないけど「じゃあ私は手を引く」っていう、その感じ。何かのせいにして、自分が引くことを正当化しているというか。「どうせ最初から実らない恋だったし」とか「恋敵がいたから」ってそうやって諦めないと決別できない思いってあると思うし、実際そういうほうがリアルですよね。本当に納得して自分から手を振ることって、実際は少ない。そういうリアルな感情が聞いた人にも伝わってほしいなと思ってこのタイトルにしました。
──「然らば」も収録されるEP『いま抱きしめる 足りないだけを』が3月12日(水)にリリースされます。EP制作時に、全体的な構想やイメージはあったのでしょうか?
はっとり:コンセプトや構想はなくて。できた順に収録が決まっていったんですが、決まっていく中でだんだん輪郭がつかめていった感じでした。1曲目「然らば」と2曲目「NOW LOADING」は原作のある映像作品への書き下ろし。どっちも恋愛が絡んだ作品だし、感情の機微で物語が転がっていくものだったので、この2曲の親和性が高かったからこそ、できた順に入れていっただけだったはずが、全体としてまとまりが出た感じがして面白かったですね。だから3曲目「前世よ、しっかり」みたいな変な曲が入ってもまとまるっていう(笑)。
新曲「NOW LOADING」「前世よ、しっかり」「ロング・グッドバイ」に込めた思い
──「然らば」と「NOW LOADING」があるからこそ、「前世よ、しっかり」で思いっきり遊べたんじゃないかなと。
はっとり:確かにその余白が生まれたというのはありますね。いつもこういうちょっとトンチキな曲は入っているので、いつものことをしただけっちゃしただけなんですけど(笑)。
──言葉をお借りすると、こういうトンチキな曲を毎回作れるってすごいと思うんですよね。音楽で遊びたい欲、実験したい欲がないとできないことなんじゃないかなって。
はっとり:確かによく懲りずに作れるよな〜(笑)。「前世よ、しっかり」と「ロング・グッドバイ」は僕以外のメンバーが作った曲なんでけど、みんないつもいろんなアプローチの曲を持って来てくれるので、みんなやりたいことが溜まっているんじゃないかなと多います。まだやれていないジャンルもあるし、やってみたいなアプローチもあるし、トンチキはまだまだ続きます(笑)。
──話が前後してしまいましたが、2曲目「NOW LOADING」についても聞かせてください。この曲は映画「山田くんとLv999の恋をする」の主題歌。先ほど「然らば」の制作のエピソードの際に、作品の要素を散りばめているとおっしゃっていましたが、この曲では「山田くんとLv999の恋をする」のどのような要素を散りばめたのか教えてください。
はっとり:歌詞の「傘を分け合う時間」というのは、作中にまさにそういうシーンが出てくるので情景は重ねやすいかなと思います。とはいえ、曲が作品を説明し直すのは違うと思っていて。それよりも自分と重ねることが大事だなと思っているので、原作に力を借りて、自分の抱えている気持ちを言葉の裏にちょっと潜ませたり、自分の青春を捏造したり(笑)、しました。
──4曲目の「ロング・グッドバイ」は壮大な1曲。この曲はどのようにできた曲なのでしょうか?
田辺:アコースティックギターを新しく買ったので、それを家で弾いていたときに、たまたま、いつもは自分でやらないようなコード進行が出てきたので「これをちょっと広げてみようかな」くらいの気持ちでデモを作り始めたんです。それをみんながアレンジで良くしてくれたという感じで。こじんまりした曲だったものを、みんなで壮大なスケール感の曲にしてくれたので、本当にみんなに感謝です。
マカロニえんぴつらしさとは?
──マカロニえんぴつの楽曲は、どんなテイストの楽曲でも“マカロニえんぴつらしさ”を感じるサウンドに仕上がっています。ご自身たちではその“マカロニえんぴつらしさ”を生み出す要因は何だと思っていますか?
はっとり:サウンドプロデューサーについてもらったこともないし。いつもセルフアレンジで、アイデア合戦で、試してはやめて……って、自分たちが持っているものを持ち寄って組み立てていっているからですかね。あとは僕たち、“わかりやすさ”と“わかりづらさ”を調和させるのが好きで。“ちょい外し”は絶対にしたいんですよ。「こういったらこういくのが普通だよね」っていうところで「でもそれじゃつまんないから、ちょっと外して、こういってみよう」みたいな。でも外しすぎると受け入れてもらえなくなったり、難解になったりするから、あくまでもわかりやすくはいたい。1枚の絵の中に違和感を散りばめて、聞いているうちにその違和感に気づく、みたいなものが僕たちの音楽なのかなという気はします。
──では最後に。6月には横浜スタジアム2DAYSワンマンも控えているマカロニえんぴつですが、2025年の活動についてお聞かせください。
はっとり:2月から3月にコロナ禍でできなかった「HOPE」ツアーのリベンジツアー「マカロックツアーvol.19 〜いざvol.10のリベンジ!持ち寄ろう、それぞれのhope篇〜」があって、それが終わったら横浜スタジアムの準備。常にお客さんの前に立てるというのは幸せなことだし、いくら準備してもライブをして気づくこともたくさんあるので、まずはツアーで自分と向き合って、バンドのアンサンブルを強固なものにして。ライブ一本一本を大切にしているうちに、とりあえず前半は過ぎていきそうだなと思っています。
取材・文/小林千絵
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